【勇者、辞めます 2~次の職場は魔王城~】 クオンタム/天野 英 富士見ファンタジア文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
最強勇者は仕事も万能――!! ボロボロ魔王城再建ファンタジー第二弾!

勇者を辞め、魔王軍の一員となったレオは、その知識を活かしエキドナの夢である魔界再生に乗り出す。
だが、ボロボロ魔王軍は準備だけでも大慌て!
ダンジョン化した城を攻略し、お肉がなくなったリリが駄々をこね、更には近隣諸国に暴走した竜が攻撃を開始!?
やっと手に入れた平穏を守るため、勇者歴三千年の技能を使って次々に解決していくレオ。
だが、一連の事件(リリ除く)には元凶が存在しており―引退勇者は、かつて憧れた『勇者』と対峙する!

呪術師カナンって、これシュティーナと同じサキュバスだったの!? いや、見た目見た目。
このビジュアルはあくまで呪術師としてのスタンダードらしくて本人の趣味ではない、との事だけれど、シュティーナのために本来のサキュバスとしての在り方を捨てて才能あった呪術師の道を歩みだした、というだけでもまあ気合入ってはいるんだけれど、それにしても普通のサキュバス全然いないですよね、魔王軍!!

さて、正式に魔王軍に就職し、自分が壊滅させた魔王軍の再建に乗り出したレオだけれど、やっぱり僻地に孤立してるというのは、求められる供給が得られないという意味で軍隊としても厳しいですわねえ。後背地である魔界とは自由に行き来できないし、そもそも魔界がまともに生活できないような状態だからこそ、人間界に侵攻してきたんだから魔界からの補給はいずれにしても求められないし。
さりといて、今更人類国家群の土地を侵略するわけにもいかないし。
打開策としては、現状で自活の道を見つけるか、それとも人類サイドと国交を結んで交易を開始するか。密貿易という方法もあるけれど、それだと大々的には出来なくて供給を満たせるかどうかは怪しいですからね。
そうなると、カナンとヴァルゴによる黒化ワイバーン群の氾濫によって滅亡しかけたイリース王国を魔王軍が救援した件は、魔王軍はもう侵略者じゃないとアピールするには絶好の機会だったわけだ。……若干、マッチポンプだった気もするけれど。だって、カナン魔王軍所属だしw
まあ原因については黙っているとしてw
それでも、ワイバーンやドラゴンの大群によって王都が滅ぼされる寸前だったとはいえ、エキドナと四天王の救援をああやって諸手を挙げて歓迎するのを見ると、前巻でレオがエキドナに魔族と人間は和解できる、と断言したのは嘘じゃなかったんだな、というのがよくわかる。
エキドナ軍が侵略を起こしながらも人死を出さないように気をつけていたのは人類側もわかっていただろうし、それ以前にもう人間界では魔族と人間が共存して、当たり前に魔族が社会に受け入れられている、というのが大きいのだろう。魔族というだけで忌避の対象になることはない世界なのだ。だからこそ、今回の一件で四天王たちが英雄としてあっさり受け入れられたんですよね。
これは、おとぎ話にもなっているインプのエイブラッドの偉大なる功績だよなあ。

そんなエイブラッドがレオに残した至言。兵器としてあったレオを人間にした言葉、自分のために好きに生きろ、という言葉は結果としてレオの魂を救うことになったわけだけれど、今新たにエキドナたちもエイブラッドは救うことになったんだな、と思うと感慨深い。
そして、そんなレオたちが、さらに復活したヴァルゴを受け止める形になったわけだ。
蘇ったヴァルゴが、いつ壊れてもおかしくない今を、好きに生きようとして、その証をレオと戦うことに求めようとしたのは、こうして考えてみると兄弟ゆえ、とも言えるんですよね。
本来ならヴァルゴには、レオと戦う理由も争う理由も存在しない。でも、何の関係もない他人なら、そもそも自分の生きた証をレオに求めることもなかったでしょう。不器用ながら兄弟ゆえの親愛がそこには垣間見えるのである。

ほんと、デモンハートシリーズを想像した旧時代の科学者たちは、浪漫主義者だなあと思うんですよね。魔王ベリアルの侵略によって滅亡の危機に立たされていた人類を救済するために人類の技術の粋を集めて作られた決戦兵器たるデモンハートシリーズ。それらに、これだけ人間味あふれる心を持たせたのですから。ただ強いだけの冷たい兵器じゃなく、人の心を持った人型兵器たちに人類の命運を託そうとした科学者たち。彼らは本気で、兵器じゃない人類の希望を創り上げるつもりだったんだろうなあ。絶滅の瀬戸際に立たされながら、そうやって愛とか希望を忘れずに信念を貫き通したその姿勢は、なんか痺れるものがあります。
そんな彼らの心意気を、今なおレオは証明し続けてくれている。それがなんとも嬉しいじゃないですか。

しかし、四天王たちレオにボコボコにやられた印象しかなかったけれど、普通に戦ったらこれ人類太刀打ちできなかったんじゃないだろうか、ってくらいにめちゃくちゃ強かったんですけど!?
これ、レオじゃなかったら絶対勝てないでしょう。特にシュティーナは都市全体に行き届くほどの規模でバフかけられるって、とんでもねーなホント!! 下手したら魔王城決戦では魔王城に詰めた戦力全部にバフかけて迎撃される展開も在り得たわけだ。負ける要素どこにもないんですけど!?