【処刑少女の生きる道(バージンロード) 7.ロスト】  佐藤真登/ニリツ GA文庫

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「だから、この【時】を懸けて、あの子を取り戻すのよ」

導師『陽炎』との激戦から半年。
第一身分に追われるメノウたちは、北の大地にいた。
マヤの持つ1000年前の記憶によれば、北の空に浮かぶ四大人災・星骸の白濁液内に眠る“情報"がアカリを取り戻すための鍵になるという。
10年に一度の“孵化"のタイミングを狙い、第一身分の追っ手をかわしながら星骸に接近するメノウ一行。
しかしその前に、最強の神官にして【白】の代行者・異端審問官ミシェルが立ちはだかり――。

新章突入! 吹雪のなか、“星落とし"の幕が開く。
彼女が彼女を殺すための物語、廻天の第7巻!!

サハラさん、イイキャラになったなあ。
いやあ、元々メノウへの妬み嫉みを生きがいにしてるかのような根性ひん曲がった小物ムーヴをかましてくれるキャラだったわけですけれど、ある意味真っ先に拗らせをある程度解消してしまった人でもあるんですよね。
メノウからモモからアカリからマヤも、果ては敵であるハクヤやミシェルまで、みんな各々自分の中の想いを拗らせに拗らせた挙げ句に命も魂も賭けて突っ走っている中で、サハラさんだけそういうシガラミから解き放たれて、気楽と言えば気楽な立場に立っている。
身軽なんですよ、心が何にも縛られていない。おまけに責任感も使命感も何もなく、自分ファーストである事に開けっ広げに開き直ってすらいるので、今作中で一番の自由人なのかもしれない。
まあ自由というには、拗らせた連中に片っ端から捕まって引きずり回されて涙目になっている人なので、全然自由ではないかもしれないけれど。責任感かけらもないのに、やたらと責任押し付けられるタイミングの持ち主だしw その押し付けられたものを、無責任に放り出す胆力の持ち主でもあるのだが。
いや、何というかもう雑念を捨てて小物らしさに磨きをかけだしているかのような風格すらあるんですよね。小物ですけれど文句あるかこらぁ!というような、威風堂々とした小物っぷりは、まさに小物界の大物といった風情すら感じさせる。
それでいて、マヤの事捨てておけなくて愚痴りながら身を挺して助けてしまったり、周り突き放して見ているようで何だかんだと義理堅くやることやってサポートしてくれているあたり、憎めないキャラしてるんですよね。いや、カラー口絵で不義の修道女とか書かれてるダメ人間なのに。
なんでこんな無責任を公言しているのに、頼れるキャラになってしまってるんだろう、サハラさんw
みんながどこか危ういちょっとしたことで壊れそうな雰囲気を抱えている中で、サハラさんだけ何しても壊れなさそうな図太い安定感があって、そこに信頼感を感じてしまうんですよねえ。
彼女が最後、アビィの良からぬ企みを聞いちゃってたあたりも何気に重要だったのかもしれない。思いっきり聞かなかった振りしようとしているけれど、無駄だろうなあw

さても拗らせ筆頭のメノウと言えば……いやいやいや、あなたそれを忘れちゃあいかんでしょう! というところから率先して忘れちゃってるじゃありませんか! この作品において純粋概念を使用するということは記憶を消費する事であるわけで、先のアカリも今のマヤも自分の中にあるどの記憶から消えていっているか、ジリジリと一つ一つ確かめながら使っていたものでした。
慎重にペットボトルの蓋を開けて計量カップで計りながら消費している、という風情でしょうか。まあアカリなんぞは、ろくに計りもせずにジャブジャブと使っていたような気もしますけど。
でもメノウの場合、そんなちまちました消費じゃなくて、底抜けてんじゃないのかってくらい、お盆ごとジャバーーっとひっくり返すような使い方してやがるんですよね。
潔さにも程があるだろう!?
無駄遣いしているわけじゃないんだけれど、色んな意味で思い切りが良すぎる!!
アカリのため、とガンギマリになってるメノウは、処刑人の頃と正反対に方向転換してもその生き急ぎ方は欠片も変わっていないんだよなあ。
それでいて、周りに目を配る余裕が無いか、というとちゃんと人間として再誕して、だからこそどうすればいいのかわからなくて迷走する元万魔殿の小指であるマヤの事を気にして、彼女と向き合うことをしてるんですよね。いや、途中までどう扱ったらいいかわからなくてほったらかしにしてた向きもありますけれどもさ。
マヤはこうしてみると、本当にただの子供になったんだなあ。万魔殿のあのヤバさが欠片も残さず失せきっている。同時にあの悍ましい手のつけられなかった恐ろしい力もほとんど使えなくなっているわけで、戦力としては確かにただの子供になってしまっているし、精神的にもヒューマンエラーの頃の発狂して超越したものは消滅してしまってる。でも精神も子供、というには辛くてしんどい経験を経すぎて、大人になってる……とは言えないなあ。でも、子供ながらに痛みを噛み締め、怒りを踏まえ、諦めを押し殺して、抗おうという意志がある。乗り越えようという意地がある。立ち向かおうという勇気がある。
そういう意味では、庇護していればいい子供じゃないんですよね。マヤはそれはもう1000年前に置いてきた。同じ人として、同じ仲間としてメノウの一行に加わるための、マヤが独りで立ち上がり仲間と一緒にあるき出せるための、大事な話だったように思います、今回の話は。
ああ確かに、今のマヤはきっとマノンの崇拝の対象とは違うんだろうなあ。

さて、アビィの企みもどうやら順調に進んでいるようで、白の方もなんかミシェルがやべえ気付きに至っていて「あれ?」となってきているし、ここからはモモが一番重要な役割を担いそう。
モモってあれだけヤンデレ拗らせてるにも関わらず、いつもメノウに振り回されて一番苦労背負うはめになるよなあ、この娘。