【後宮妃の管理人 ~寵臣夫婦は試される~】 しきみ 彰/ Izumi 富士見L文庫

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後宮を守る相棒は、美しき(女装)夫――? 商家の娘、後宮の闇に挑む!

勅旨により急遽結婚と後宮仕えが決定した大手商家の娘・優蘭。お相手は年下の右丞相で美丈夫とくれば、嫁き遅れとしては申し訳なさしかない。しかし後宮で待ち受けていた美女が一言――「あなたの夫です」って!?


主人公の玉優蘭、28歳ってこれくらいの時代背景からするとガチの嫁き遅れだったのか。
さすがに後宮モノでも最上級の年齢の主人公なんじゃないだろうか。
しかし、皇帝陛下からの勅旨によって、 右丞相・珀皎月といきなり結婚させられるはめになったわけだけれど、皇帝陛下はどこで彼女のことを知ったのだろう。玉体にまで評判が届くほど、優蘭の女商人としての辣腕っぷりは鳴り響いてたんだろうか。
宮廷内で改革派として保守派との激しい政治闘争を繰り広げている皇帝陛下にとって、右丞相は股肱の臣ともいうべき人物であり、紛うことなき右腕であり裏切ることのない忠臣である。その彼に嫁入りさせようというのだから、よほど見込んだ相手でないといけないはずだったんだが。
その旦那となった珀皎月は26歳。優蘭よりは年下だけれど、右丞相として見たらめちゃくちゃ若い!
右丞相っていったら殆ど宰相と言っていい役職。官吏の頂点ですからね。それがまだ26歳となったら、名家の出身だとしてもよほどの抜擢でしょう。おまけに超美形。
そりゃ、優蘭も引け目を感じるというか、平民で嫁き遅れの自分なんかを押し付けられてしまって申し訳ない、と思っちゃうのも仕方ないところがあるよなあ。
ってか、女性運がなかったにしても右丞相の妻となったらいくらでも政略結婚で押し付けてきそうなものだろうけど。どう考えても皎月くんは悪くなくて、今まで婚約した相手が悪すぎたり仕方ない事情だったりなので、そこまで皎月くん自信なくさなくても良かろうに。
お互い相手に引け目を感じての結婚、自分なんかと結婚させられて申し訳ない、と思いながらのお付き合いなので気まずいっちゃ気まずいのですけれど、その分お互いに気配りや思いやりが行き届いた関係でもあったので、一旦打ち解けると相手に寄り添おうとしあう間柄になってて、何気に夫婦関係としては仲睦まじいものになってるんですよね。
それでも、職場が違っていて二人が顔を合わせるのは帰宅したあと、ってだけなら関係の進展もお互いの事情に踏み込もうという意思が生まれるのも遠かったのかもしれないけれど、なぜかこの男、右丞相としての仕事をとっとと片付けたら女装して優蘭を手伝いにくるのである、皇帝陛下の命令で。
この青年、皇帝に対して従順すぎて理不尽とか疑問を感じないのは危ういよなあ。と、思ってたら皎月くんの代わりに優蘭が陛下に怒ってくれていて、一安心。
明らかに便利使いしてるもんなあ。皎月くんの自己の希薄さも原因なんだろうけれど、明らかにこの皇帝も悪ノリがすぎる。
ただ、最終的に皎月くんにとって優蘭の存在が主君よりも上になっちゃったんじゃないだろうか、というところが見受けられて、それはそれで危ういんですけど!
傍から見て女癖が悪い、としか言えないこの皇帝である。冗談で優蘭を召し上げてみようか、なんて言っても冗談とは捉えられないぞ。
古来、臣下の妻に手を出してえらいことになった王様は数知れず。いや、皎月くんちょっとガチ目に優蘭命になりかけてるので、離間策が覿面に効果ありそうなんだけど。
皇帝に優蘭に手を出させるよう誘導したり、まあそれは無理としても皇帝が優蘭をガチで狙ってると視野が狭くなってる皎月に信じさせたら、それだけでこの国盛大に吹っ飛びそう。皎月くん、めちゃくちゃ優秀そうな上に一番皇帝陛下に信頼されている臣下だもんな。それがガチギレで裏切ったら、凄いぞ!
と、ちょっと連想してしまうくらい、皇帝が冗談を言ったときの皎月くんの反応がヤバかったので、少しワクワクしてしまった。

さて、肝心の優蘭のお仕事であるが、后妃たちの管理人というのは健康管理と美容についての職務なのか。どこまで権限があるのか、まだ新任でもあるし新設の役職だろうから手探りなんだろうけれど、これって最終的には生活管理、生活スケジュールから食生活、住居環境や衣服、化粧にいたるまでやろうと思えばいけるはずなんですよね、健康管理と美容関係となると。
最終的には大奥総取締役、みたいな後宮の元締めみたいな立場まで狙えるんじゃないだろうか。表の政治を旦那が担い、奥の管理を宰相の妻が担う。これもう国を牛耳れるんじゃなかろうかw
まあ、まだ全然そんな権限もなにもないのですけれど。でも、こういうポディションってよくある後宮モノ、后として後宮にあがってくる女性が主人公だったりすると……そうでなくても、下女でも何でも後宮で働く女性が主人公なら同じか。後宮を管理する女主人って、物語におけるキーパーソンだったりすることが多いんですよね。主人公の邪魔をしてくる黒幕だったり、逆になにくれとなく助けてくれる後援者だったり、国を揺るがす後宮の秘密を、真実を握っている重要人物だったり。
そういう要となる事の多い役職を、主人公が担うというのは何とも面白くもある。優蘭が28歳というかなり高めの年齢の主人公なのも、立場を考えると妥当なのかもしれない。
よく考えれば后となる夫人たちの年齢って、みんな優蘭よりも下になるんですもんね。位としては后たちの方が上位としても、やっぱり年上の女性に対しては心理的に后妃たちも頼りにしたいと思うところですもんね。
早速、優蘭も二人の夫人から、新任以上の信頼を、親愛を、頼れるお姉さん的な立ち位置を確保してましたもんね。
賢く聡明な女性が、バリバリと働いて目の前に積み上がっていく問題を、問答無用で押し寄せてくるトラブルを、片っ端から捌いて叩き潰していくのは、やっぱり痛快です。
とはいえ、全体的に展開も登場人物のキャラクターも抱えている事情なんかもオーソドックスで無難といえば無難。まだこの作品ならでは、というストロングポイントが見えてきていない気がするので、これからどんなものを投げ入れてきてくれるのか、楽しみにしたいと思います。