【望まぬ不死の冒険者 6】 丘野優/ じゃいあん オーバーラップノベルス

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不死者、自身のルーツを語る

故郷ハトハラーの村に辿り着いた、『不死者』であり冒険者のレントと、学者で魔術師のロレーヌ。
久しく顔を見せていなかったレントの帰省を受け、村を挙げて歓迎の宴が催されることに。
準備のため留守番を任されたロレーヌの元へ、昔のレントを知る者たちが訪れる。冒険者としてのレントの様子を聞かれたロレーヌは、骨巨人やタラスクとの戦闘を魔術で再現し……!?
その後、始まった宴の最中、レントの姿が見当たらないことに気づいたロレーヌ。探し当てた墓所には、レントの姿があった。
そして『不死者』は自身のルーツを語り出す――
「ああ、そうだ。あれは村の特産品を売りに隣町に行くときのことだったな……」
かつての幼馴染との交流と、神銀級を目指す契機となった事件を。
強大な魔物と戦い、多くの謎を解き、そして強くなる。
死してもなお遙かなる神銀級を目指す、不死者レントの『冒険』、第6弾――!

うわぁ、レントってば神銀級冒険者に絶対になる、という夢。夢なんてふわふわしたもんじゃないじゃないですか。

ロレーヌを連れて故郷ハトハラーの村へと帰郷したレント。もう完全に都会に出た男が嫁連れて帰ってきた状態である。
いやこれ、あながちハトハラーの人達が勝手に誤解した、とは言えないですよ。よくある勘違いシチュエーションですけれど、ただの仲間とかパーティーメンバーとか友人とかではなかなか出せない雰囲気で、ロレーヌとレント、二人して帰ってきてますもん。そりゃ嫁入りの挨拶に来た、と勘違いされても仕方ないよなあ、という感じで。
まあ誤解はすぐに解けたのですけれど、その割には村人たちの目線、何も変わっていなかったような……。だいたい、レントは何にも考えてないとしても、ロレーヌはちょっと自分でもそんな雰囲気出してたでしょう。満更でもないというか。わざわざ嫁です、とは言わないまでも、あっちではレントと親しくさせてもらってます、的な挨拶とか面通しをしてまわってた感じですし。
だいたいレントの方も特に意識してということじゃないんだろうけれど、故郷に連れて帰ってきた事でロレーヌに対して今まで明かしてこなかったような自分の身の上とかルーツについて、わざわざ時間作って打ち明け語るというのは、ロレーヌを心理的なパーソナルスペースへ招き入れるような行為ですもんね。ある意味、身内とか家族に招き入れる、と同意義のような儀式なんじゃないだろうか、これ。
特にタイミング。故郷に連れて帰ってきて、というタイミングがまた、ただの打ち明け話という感じじゃないんですよね。このニュアンス、わかるだろうかw
だいたい、その過去話でかつて許嫁だった少女との死に別れた話を盛り込むとか、なんかもう嫁にするにあたって言っておかないといけない事を吐露するようなシチュエーションじゃないですか。

それにしても、レントの神銀級冒険者になるという夢はもっとこう漠然としたふわふわした憧れがもとになってると思ってたのに、全然想像していた以上に重たい! 理由が重たい!!
レントというキャラクターは思いの外軽い感じがして、堅実な仕事っぷりと比べて人生設計の方はどこかノリと勢い!みたいな所がうかがえていたので、神銀級になるという夢もそこまでちゃんとした理由があると思ってはいませんでした。
けど、これ話を聞いてみたらもう夢とかじゃなくて……レントの生きる上での果たすべき誓約みたいなもんじゃないですか。
少なくとも、神銀級冒険者に助けられたからその強さ、姿に憧れて自分もそうなりたいと目指すようになった、というのなら正しく夢と言えたのかもしれないけれど。
もし、幼なじみと両親の死に囚われているのなら、呪いと言えたのかもしれないけれど。
どちらでもない気がするんですよね。夢というほど前向きでもなく、呪いというほど後ろ向きでもない。
ただレントという男が許嫁だった少女の夢を代わって叶え、またあの魔獣を打ち倒せる力を得ることで、ようやく次に進めるような。存在意義でもあり、果たすべき誓約であり、今のレントを構成する根源だ。そりゃ、諦めるという選択肢は存在し難いよなあ。諦めた途端、心の中で何かが切れてしまうかもしれない。
そして、このレントという人間を、人格を形成する根源をロレーヌに語って聞かせた、というのはやっぱり特別な事なんじゃないだろうか。

さて、こうしてレントのルーツとも言うべき過去を、ロレーヌともども知る事ができたのだけれど、話はそれだけでは済まなかった。
そもそも、レントの故郷を訪ねたのは彼に力を授けた名も知れぬ神霊の秘密を調べにきたわけで、どうしてそんな神の祠が村の近隣に眠っていたのか。出身のレントは気づいていないみたいだけれど、彼の故郷であるハトハラー村それ自体にも不自然さがあって、普通の村ではないんじゃないか、という様子がうかがえたのですけれど……。
そうかー、平家の落人村みたいなもんだったのかー……という当初の理解を上回って、とんでもねーもん抱えてたじゃないですか、この村っ!
死んだ幼なじみは時と場合によってはお姫様だったのか。レント自体は全然血筋とか関係ない、事はハルハトー村出身ならないことはないのでしょうけれど、まあそこまで特別なものではなく。
それでも、村長のところに養子に入っているのだから、後継者候補ではあるんですね。
この秘密、ロレーヌにも一緒に明かしてしまっているのは、そろそろ秘密の本体自体が村の中だけで守っていられない世情になってきている、というのもあったんだろうけれど、やっぱり嫁扱いされてるからじゃないでしょうかね!?
それにしても、これめちゃくちゃ便利なんじゃないだろうか。レントって地元密着型冒険者でまあ今回は帰郷という形で旅に出ましたけれど、基本一つの街に留まって仕事をこなしてるんですよね。
不死者になってしまった事で、いざとなったらマルトの街を出て、とも考えてたみたいですけれど、その必要もなくなりましたし、弟子が出来たりと知り合いも多くてなかなか街を出て世界を旅して回る、みたいなわけにもいかなくなっていました。
でも、この施設を利用したらマルトを拠点としながらもあっちこっち短期間で行って帰ってできるわけで、行動範囲めちゃくちゃ広がるんじゃないだろうか。色々と各地で起こる事件にもクビ突っ込めるようになるし、なかなかおもしろいことになってきた。