【英雄と賢者の転生婚 1 ~かつての好敵手と婚約して最強夫婦になりました~】  藤木わしろ/へいろー HJ文庫

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物理最強×魔法最強による夫婦無双ファンタジー!!

物理最強の青年英雄レイドと魔法最強の美少女賢者エルリア。
敵対国の好敵手として戦い続けた二人だったが、エルリアの突然の死によりその関係は幕を閉じた……そして、千年後。 魔法至上世界で魔法は使えないが前世の物理最強能力を保持して転生したレイドは、同じく転生していたエルリアと再会し――

「ねぇ、レイド――わたしと結婚して欲しい」「…………は?」

千年の時を超えて無自覚イチャイチャ最強夫婦となった二人は、どちらが強いか決着をつけるべく王立魔法学院へ通うことに!?
ライバル時代が長いーー!?
片や魔法の粋を極めた賢者。片や物理最強の大将軍。お互いの国を代表する英雄として常に戦場で決闘し続けたエルリアとレイド。
立場上国を担う敵同士で戦場での好敵手同士の間に恋が芽生え、という展開は相容れぬ者同士の恋物語としての王道の一つですけれど、それでも早々長い間戦争しているもんじゃないんですよね。せいぜい数年程度か。
その王道路線のストーリーは往々にして敵同士の道ならぬ恋そのものにスポットをあてて、その叶わぬ恋が果たしてどう燃え上がっていくのか、という話になっていくので当然ですけれど、そんな長い間戦争やってないんですよね。ふたりとも若い内にどんな形であれ決着がつく。
ところが、本作はこのライバル関係ってのは前世の話であって、お互いに相手に対して想うところはあっても恋も戦争も決着がつかなかった話なのである。恋に至っては始まりすらしなかったというべきなのかもしれない。
でも、その分戦場でぶつかっていた期間は桁外れに長いんですよね。
半世紀。50年である。エルリアが病によって帰らぬ人になるまで、二人は50年に渡って戦場で刃金散らしていたのである。
長いよ!!
いや、この場合50年間も戦争やってた両国を責めるべきかもしれないけど。いい加減どっかで矛収めなさいよ!! レイドもエルリアもお互いに戦場以外のプライベートについては全然知らなかったみたいなので、講和や停戦も一度もなかったみたいで、どんだけダラダラ戦争やってたんだか。
原因の一旦は、自分たち同士が戦うことで全体の被害を軽減するように働きかけてたレイドとエルリアにもあるような気もするけれど。
とはいえ50年である。どれだけの頻度で戦場で見えてたかはわからないけれど、それでも半世紀ひっきりなしに戯れてたんですよね。エルリアはエルフだったから歳は取らなかったみたいだけれど、レイドは普通に爺さんになるまで頑張ってたわけですしね。それにお互い私生活では家族を持たず、生涯でもっとも近くに居続けたのはお互いだったと言って過言ではなく。
これはもう、一生を添い遂げたと言ってもいいんじゃあなかろうか。エルリアの死を知ったレイドの死に様がまたドラマティックでねえ。そりゃあ、エルフの口伝にも伝説のラブストーリーとして残りますわな。

というわけで、前世でも実質夫婦! というのは流石に無理はあるけれど、誰よりも心結びついた二人であったのです。しかも50年もの。
そりゃ、生まれ変わっても今更思春期はねえわなあ。レイドの方は爺にまでなってたわけですし。
面白いことにこういう男女の敵同士のライバル関係って、女性の方も英雄格だけあって強気で自己主張が強いキャラクターが多いのですけれど、エルリアはなんでか天然不思議ちゃんでわりと人見知りもするポケポケ少女。むしろマスコット系じゃね? というような小動物系ヒロインなんですよね。
対してレイドの方はカラカラとサッパリしてる兄貴系主人公。先の細さは全然なくて、竹を割ったような性格でありグダグダしたところのない好漢なのである。
お互い、グジグジと拗らせて言いたいことも言えないようなタイプじゃない、ってことですね。何事もストレートで自分の想いに対して素直である。それでいて年輪重ねてるんで青臭さもなく、物事の道理というのをわきまえているので(天然なエルリアは除く)、最初から大人な関係なんですよね。
でも、前世では道ならぬ表に出せぬ想いを抱えていた、ということもあり、あけっぴろげじゃなくて胸に想いをグッと秘める奥ゆかしさもある(天然なエルリア除く)。
ちうか、レイドが大人なんですよ。不思議ちゃんでポケポケしてるが故に真っ直ぐなエルリアをうまいこと抱きとめるこの包容力。あっけらかんとしているのに、懐が広くてもう兄貴ぃって感じなんですよね。
まあこれだけ片方でも大人だと、恋人同士でイチャイチャという工程を通り越してもう婚約して結婚してます夫婦です、と言われた方がむしろしっくりくるかもしれない。エルリアの方は元エルフということもあり前世から情緒が育ちきっていなかったのか、ひたすらに初々しいのですけれど。
二人を取り巻くお互いの家族や、学園で友人となる面々も非常にノリが良いというか状況に対してノリノリというか、愉快な人たちなんですよね。
二人の破天荒っぷりに対して、ボケもツッコミもワッショイワッショイとお神輿かつぐような賑やかさで、実に楽しい。どんちゃん騒ぎみたいな華やかなテンションがあって、非常に面白かった。

しかし、エルリアの魔法の果てしなさはまだ世界観の論理の範疇なのかもしれないけれど(頂点突破しているとしても)、レイドの方の物理最強はもはや意味わかんないですよね。魔法じゃないなら何なの!? 腕力です、じゃすまないハチャメチャさなんですが、そういうものと割り切ってぶっ飛んでいるのがまた愉快。

一方で、レイドの前世で所属していた国に関する事やそれにまつわる情報が歴史上から不自然に抹消されていたり、そもそもかつてエルリアが死んだ病の原因が不穏だったり、エルリアとレイドがこの時代に転生した事自体も単なる偶然とか運命じゃなく、何らかの意図が介在しているような気配が漂ってきて、謎が謎を呼んでいるんですよね。当面の二人の目的も出来て、物語としての筋立てにもしっかりと方向性が与えられているのは読み応えの一つになっています。
一方で、もはや敵同士じゃなくはばかる事無く婚約者同士として寄り添っていける現実に、遠慮なくベタベタする二人。だからそれもう婚約者という距離感じゃないですよね?
ラブコメとしても非常に楽しく、ハチャメチャさが痛快な良作のスタートでありました。