【星詠みの魔法使い 3.運命仕掛けのアルケミスト】  六海刻羽/ゆさの オーバーラップ文庫

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運命を代償に、望みを顕せ。

ヨヨはエヴァとの仲を深め、無事に定期試験を乗り越えた。
ソラナカルタ魔法学校は冬休みに突入し、ヨヨはルナとエヴァとともに工房迷宮へと潜る。
そこで出会ったのは、セレスティティと名乗る3年生の魔法使い。
彼女の額に埋め込まれた水晶は錬金術師の一族であるドワーフの証だった。
セレスの案内で、3人は工房迷宮に隔離結界で隠されたドワーフの里を訪れる。
そこでヨヨたちが知らされたのは、ドワーフ族に伝わる“巫女"と“運命"の話。
運命に縛られたセレスの枷を解き、諦めた夢を取り戻すため、“星詠みの魔法使い"は星を落とす――!
ヨヨとルナってお互いもう好き過ぎじゃないですかー!?
地の文ですけれど、ヨヨはルナが大好きである。とかルナはヨヨが大好きである、と明言されちゃってますもんね。
ところが、その好きってLOVEなんでしょうか? というささやかな疑問が。
うん、ほんと好きなんですよ。感情は目いっぱいに溢れていて、想いはキラキラ輝いている。でもそれって限界振り切ってしまったLIKEにも見えるんですよね。
不思議なほど二人の好きには、艶とか欲を感じない。いや、ヨヨとかルナの水着姿に理性吹っ飛んだりもしてるし、ルナもドキドキが限界突破しちゃってたりするのですけれど。
不思議と、彼らの関係というのは先輩後輩として完成しきっていて、それ以上に作家としてのルナと彼女の描き出す物語の主人公ヨヨという形で完璧になっちゃってるんですよね。
なんでか、恋人とか彼氏彼女という関係がこの二人にはうまいこと連想できない。
一方で、ヨヨが限界点を超えてしまい魔導に堕ちてしまいそうになった時、ルナは迷わず運命をともにする事を選んだんですよね。その彼女の覚悟を目の当たりにしたとき、ヨヨもまた彼女と共に魔界に堕ちる事を選んだ。死すらも分かつことの能わない比翼としての結びつきが彼らにはある。
二人がじっと抱き合うシーンは、どの場面でも犯し難い神聖さすら感じさせる不可侵のものなんですよね。そういう意味でも、彼らの関係は恋人とかでは片付けたくないのかもしれない。
まあ、その不可侵に何の憚りもなくヌルヌルと入って行けてしまうのが黒水晶の少女なのですが。むしろこの魔術剣士の女の子は恋塗れの欲塗れなんですよね。そのベクトルは片方だけじゃなく、ルナにもヨヨにも両方に向いているお陰で、この犯し難いカップルをまとめて捕食する気満々なのですが。
まあそれもこれも、ルナがヨヨ相手の時に負けないくらい、このエヴァという娘の魂をしゃぶりつくしてしまったが故なんですが。エヴァこそ魔性の少女に見えるけれど、むしろルナの方が魅了し尽くしているし、ヨヨはヨヨでエヴァに対してもうそれプロポーズじゃない? というような一生面倒見る宣言しちゃってるし。エヴァが欲張りってわけでもないんですよね。むしろ二人がかりで落とされた被害者じゃね?
というわけで、実はあの魔導に堕ちかけたシーンはエヴァだけその場にいなかったとはいえ、放ったらかしでヨヨとルナだけで逝ってしまいそうだっただけに、あとでエヴァが怒ったのも仕方ないですよ。あれは怒るべきだ。

さて、学院も冬休み、ということで学校を離れてのバカンス……って、これ迷宮ですよね。偶然知り合ったドワーフの錬金術師の三年生ステラの導きで、迷宮内にあるドワーフの集落を訪れることになったヨヨたち三人。迷宮内というけれど、これもう海辺の街ですよね。水着回でもあります。
ドワーフと言っても定番のヒゲモジャではなく、妖精色の強い独自のドワーフ族なのですが鉱山とか関係なくこれ漁師じゃね。
とはいえ、ある悲劇的な運命に囚われたステラ。そのなけなしの時間を、ステラはヨヨとルナを救うために消費しつくしてしまう。それは悲劇で終わる物語なのか。
それを許さぬ、ハッピーエンドを紡ぎ出す魔導作家がここにいる。魔に溺れ、魔に沈むことをむしろ祝福とし賛辞とするような、魔を極めることに在り方のすべてを費やしている魔法使いたち。
そんな中で純粋に善性のままに、想うがままに夢を描き、理想を目指し、素敵な結末を導き出そうとするある少女作家の想いに答えようとする一人の先輩男の子と親友の女の子。
そのあまりにも真っ直ぐな想いは、残酷な現実と断熱圧縮を起こして熱く熱く燃えさかる。これはハッピーエンドを目指すために燃え上がる、太陽の熱量を解き放つ熱い熱い物語だ。
キャラは脚本に縛られた人形じゃない。作者の想うとおりに動くロボットじゃない。もう一人現れた魔導作家の抱く思想は、とても窮屈だ。面白い物語には、登場人物に羽が生えている。自由に、どこまでもとんでいく大きく羽ばたく翼だ。ルナ・アンジェリークの物語を描く筆は、いつだって踊るように舞っている。そんな彼女の描く物語の真髄を、ぜひあの男に知らしめて欲しい。
輝く星の魔法使いの物語を。