【ルーン帝国中興記 2 ~平民の商人が皇帝になり、皇帝は将軍に、将軍は商人に入れ替わりて天下を回す】  あわむら赤光/ Noy GA文庫

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ハ・ルーン皇帝ユーリフェルトは「奇跡の一夜」を経て将軍と入れ替わり、帝室秘伝の幻影魔法を戦場へ持ち込むことで、連勝を重ねていた。
対する敵国トルワブラウは、この事態を重く見て同じく王家秘伝の火炎魔法を以って大反攻を実行する!
さしものユーリフェルトも渋面、
「恐るべきは"薊姫"の火炎魔法か。手妻に等しい余の魔法とは大違いだ」
魔法対魔法! 戦場の勝者となるのはユーリフェルトか、"薊姫"か。
燎原の火に呑まれんとする帝国に、果たして時代の風は吹くか――
皇帝となったセイも暗躍し、商人グレンが活躍す、三英雄共鳴のシャッフル戦記、待望の第2弾!!

皇帝、ちょっとヤバすぎない!? いや、そこまでやるか!? と最後の行動には愕然としてしまった。しかも、自分の行ったことに精神的負担を感じている素振りがさっぱりない。本気で平気なのだ、あれだけの事をしておいて。
うわぁ。ユーリフェルト、この人はマジモンの冷血皇帝だ。言い訳でもなんでもなく本気で必要な犠牲だ、と言ってのける人だ。そして本当に必要ならどんなものでも犠牲にしてしまえる人だ。
少なくとも、この人は徹頭徹尾将軍なんかではないですわ。戦場に出ようと、ユーリの在り方というのは徹底して皇帝だ。その価値観で物事を動かしている。あくまで秤と物差しは彼の思想に基づいた皇帝としての在り方にもとづいている。
グレンに化けている自分に頼ってくる無能な司令官も、嫉妬で敵対してくる同輩も、彼の戦果を評価し的確な発現をする有能な指揮官も、皇帝である彼にとっては同じ駒でしかないのだ。そして駒である以上、平然と切り捨てる事ができる。そこに情や思い入れなど一欠片も存在しない。
人の心がわからない、などと言われるユーリだけれど、それどころじゃなく人を人とも思っていなかった事を本当の意味で突きつけられたこの2巻だった。

……これ、現状協力関係にあるとはいえ、セイとユーリじゃ相容れないんじゃないの!?
国家や民草に対する考え方があまりにも違いすぎる。お互いに立場を入れ替えることで、ある種のすり合わせ、考え方や価値観の変化があるんじゃないかとも思ったけれど、基本的にセイもユーリも価値観というか思想みたいなものはもう完成していて、変化する余地が見えないんですよね。
グレンさんなんかは、ある意味武人として一心不乱だったからそれ以外に対してまっさらで、だからこそいろんな世界の側面を今までにない立場から経験し学ぶことでどんどんと吸収していっているのがうかがえるのですが。
そして、あくまで皇帝で在り続けているユーリに対して、セイが皇帝の位についても中身は商人か、というと商人としての手法や思考法を取り入れているとはいえ、国と富ませ民を幸せにするという目的を持って働いている以上、彼は皇帝として働いているんですよね。
今、この帝国には二人の皇帝がいることになる。
はたして、至高の冠は二天を戴くことが出来るんだろうか?
瞬く間に国内をまとめて、国政を自在に動かしだし、魑魅魍魎の大貴族たちを手玉にとって利用するセイの手腕を、ユーリはついに認めたわけですけれど……果たして、自分に代わって皇帝をやれるセイの存在をユーリは認めるんだろうか。ゆくゆくは自分のブレーンか宰相に、なんて穏当なタイプじゃないのは今回の一件で思い知らされたような気がしている。
とはいえ、セイが今皇帝をやれているのは、ユーリの幻影魔法でセイがユーリフェルトに見えているから、であってユーリが居なくなればどうやってもセイがユーリに成り代われる事はないんですよね。
ユーリが将軍職肌にあって、自分は戦場で生きる方が性に合ってる、みたいな考えになる人だったら、入れ替わりも穏当に片付いたかもしれないけれど、それは絶対にないだろうしなあ。
しかし、あの幻影魔法ってどこまでやれるんだ? 手妻みたいなものだ、とユーリは自嘲してるけれど、それどころじゃないでしょう!? 目に見える幻覚だけじゃなく、熱さや痛みも幻覚で感じさせなく出来るって、もう何でも出来るじゃないですか。射程距離とか制限とかどうなってるのやら。
それがわからないと、本当になんでもできるように見えちゃいますよ!?

とまあ、入れ替わった先で自分の立場を使って目的のために大いに揮っているユーリとセイに対して、商人として大成したい、なんて思っているわけでもなく市井で疲れた心身を癒やしたい、と休養しているはずのグレンであるけれど、何かと便利に使われて軍人、というよりも一人の際立った武芸者として、密かに世直ししたり、セイの代わりに商会を取り回すナーニャを護衛したり、とあくまで個人で活動しているわけだけれど……なんか、実直な性格とは裏腹にハーレム主人公一直線だな、この人w
お人好しで生真面目で天然入った超絶武人の世直し旅、となると必然的に女の子を助けたり女の人を助けたり、と周りに女性が増えていってしまうのか。ヒーローと言えばそうなんだろうけれど、今となっては彼が一番民草に寄り添う側の人間になってるんだよなあ。
そんな彼が、今回の一件の拾い物によってどうしようもなく政治的な案件に脚を突っ込む羽目になるわけで。さて、どんな立ち回りを要求されるのか。色々と都合よく使ってしまっていることにグレンさんに対して負い目や罪悪感を感じているセイはいいんだけど、ユーリがなあ。
これ、ほんといつまで穏当に入れ替わりやってられるんだろう。なんか思ったよりも早く破綻、というよりも決裂が訪れそうでなんだか怖くなってきた。
エファちゃん、報われるんだろうかこれ。すでに全然報われてない気もするけれどw