【主人公じゃない! 03】  ウスバー/天野 英  エンターブレイン

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レクスの運命を握るダブルヒロイン登場!?
ギルドで新たな仲間を探すレクスの前に現れたのは「男性の理想を具現化したような女性」のリリー!
しかし、一見完全無欠に見える彼女は、実はゲーム時代に俺(レクス)にトラウマを植え付けた最凶最悪の「悪女」で!?
一方、街外れの館では〈死の定め〉を背負った少女と出会い……。
ゲームにはない結末を求め、レクスが未来を変える!
さらには外伝「猫と猟犬」も収録!!

各巻にあるんだけれど、本作のゲームプレイ時の回想、挿入のタイミングというか挟み込み方が自然で絶妙なんですよね。
毎回、いつの間にか回想に突入している事に気づかないんですもん。あれ?おかしいな、という違和感を全然感じないまま不穏な展開になっていくのをハラハラしながら見守ってたら、実はゲームの時の回想なんですよ、と明らかにされた時のやられた感はなかなか悔しいものがありますw
ってか冒頭もまったく気づかんかったよ! これは単に自分が鈍いだけかもしれませんがっ。

さて、このシリーズも3巻まで進み、レクスが起こした冒険者の育成強化革命によって、冒険者全体の底上げが成立しはじめているわけですが、ゲームにおけるメインストーリーとなるワールドシナリオがいつまで経っても始まらない。
周辺をどれだけ強化しても、肝心のワールドシナリオがスタートしないとお話は進んでいかないのである。ストーリーが進まないだけなら、別に何の問題はないかもしれないけれど、その中で悪神の復活というボスキャラ登場は2年後、と定まっているんですね。
だもんだから、世界を救う勇者の物語はまったく進展していかないにも関わらず、ラスボスの復活までのタイムリミットだけは着々と減り続けていくのである。
なぜワールドシナリオが進まないのか。
主人公がいないのです!
本作の主人公であるレクスは、ゲームにおいてはNPCだったキャラクター。こればっかりはどうあがいても彼が主人公に成り変わることは出来ない仕様になってるっぽいんですね。主人公が居ないと、フラグは立たないしイベントは起動しない。
一巻のゴブリンの魔王の討伐戦のように、主人公がいない場合でも状況が似ていればシナリオ発生条件がクリア扱いになるのか、起こるイベントはあるのだけれど、世界全体を動かすことになるワールドシナリオに関しては、主人公がいないと動かないっぽいんですね。
そんな中で、主人公がいない。本当にいない。影も形も存在しない。いや、チラッとでもそれらしいキャラ出ててもおかしくないよね? と思うんだけれど、本当にいないんだよなあ。
レクスが最初から目をかけて面倒を見て成長を手助けしているパーティーのリーダーであるラッドがそうなんじゃないの? と疑った時期もあるのだけれど、勇者がいたら発動するはずのキーイベントが起こらないってことはそうじゃないんだろうなあ。

ラスボスである悪神の復活だけならまだしも、ワールドシナリオが進まないながらも時間経過によって起こってしまう時限爆弾のようなイベントが、この世界にはいくつも眠っているらしい。
今回、起こってしまった吸血鬼戦もまたその一つだ。放置していたら刻々と導火線に火がついているように状況が悪化していき、最後に爆弾に着火するようにして破裂してしまう。
本来ならゲーム内容をすべて把握しているレクスは、先回りして火がつく前に水をぶっかけて回ることが可能なはずなんですが、主人公が見当たらないというその一点が尾を引く形でイベントが顕在化せず、対処が出来ないまま後手後手に回る羽目になってるんですね。
薔薇の館編は、それでもレクスが何とか抜け道を探して探して、裏技使いまくってなんとか最悪の結末を防ぐことが出来たファインセーブとなるイベントになりましたけれど、それでも後手に回されてしまったことは確かなんだよなあ。
すでに3巻である。にも関わらず、ここまで本当に影も形も主人公の存在が見えないとなると……もしかしてガチに存在しない可能性もあるのか?
その場合、通常なら詰み、どうあがいてもクリア方法が存在しない形になってしまうのだけれど、果たしてそこからさらなる抜け穴を見つけるのか、それとも主人公の存在をなんとかするのか。
いずれにしても、主人公じゃないっ、と言ってるだけではすまない自体に追い込まれつつあるのは確か。
かといって、自分が主人公だ! と言っても、自称じゃ意味ないんだよなあ。今の所全然打開策が見えてこないんだけれど、これどうするんだろう。
あくまでゲームと見做して徹底して冷徹合理的にやれば出来ることは多いのかもしれませんが、何だかんだともうこの世界の人間たちにレクス、入れ込んじゃってますもんねえ。
ロゼのことを見捨てられないから、これほど苦労するはめになったんだし。万が一の危険性を飲み込んでも、レシリアたちにやらせずに自分が身代わり要員になったり、身体張っちゃってまあ。
攻略法など様々な手練手管を備えているにも関わらず、まったく楽をさせてもらえないレクス。構成としても面白いですよねえ、これは。

しかし、レクスの周りに女性も増えてきて、妹のレシリアが順調に病ん病んしはじめましたけれど……レシリアこの娘どうするんだろう。唯一レクスが世界の外から来た人だと知っている彼女ですけれど、レクスの中の人の事を意識しちゃっているのはいいんですけれど、その身体は実の兄のものである、というのは色んな意味でハードル高えんじゃないだろうか。あくまで妹です、ブラコンです、で押すのならそれでもいいんだろうけれど、なまじ兄と今のレクスが別人とこの娘強く意識してるしなあ。

描き下ろし短編は、レクスが革命を起こす前から街を出ていて、今冒険者界隈に巻き起こっている革新を知らずに戻ってきたA級冒険者パーティーのおっさんたち三人組と、そんな彼らと組んで行動することになった新米だけど今の新しいシステムに適応しているメスガキ三人組によるドタバタ劇。
……いや、なんかおっさんとメスガキ双方に新たな性癖が目覚めそうなんですけど!?
一応ちゃんと、新しいシステムに驚き戸惑い軽く反発を覚えながらも貪欲に取り込もうとするおっさんたちと、そんな遅れたおっさんたちをからかいおちょくりながらも、本来の彼らの実力にちゃんと敬意を持っていて何だかんだと親身になって教えてくれるメスガキたち。お互いに分からせ合う、というなんだか倒錯してる気にもなってくる妙に面白い短編でした。ちょうど三人三人の組み合わせだったので、もしかして今後6人パーティー結成するのか、こいつらw