【パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。2】  持崎湯葉/れい亜 ガガガ文庫

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日菜子さん、実はヤバいJKだったんです!

お疲れサラリーマンである梶野の家に入り浸る、ギャルなJK香月乃亜。お隣さんでもある彼女は、毎日梶野の匂いを嗅ぐことに夢中だ。
彼女が慕っている大人はもうひとり。花野日菜子――梶野の会社の後輩で、24歳の美人OL。仕事のデキる優秀なデザイナーで、人望も厚い。そして乃亜の恋のライバルでもある。
一見完璧に見える彼女だが、決して他人には明かさない、黒歴史を抱えていた。
彼女の過去のあだ名は「ヒナミチ」。赤く染めた髪を振り回し、毎日アロハシャツで学校に登校する不良だったのである!!



うははははっ、あはははははっ、いやっいやっ、これはもう、やばいよ。確かにヤバイよ!
日菜子さん、キャラ強度が強すぎっ! もうなに? これなに? この……なに?
あんまりと言えばあんまりにも凄すぎるJK時代の黒歴史に、ってかもうこれ黒歴史ってレベルじゃないだろう。歴然とした伝説だよ! 半世紀くらい地元で語り継がれるんじゃないの!? ってくらいにとんでもないんですけど!?
元々、一巻では仄かに想いを寄せる職場の先輩に、JKの影ありきということで首をツッコんだら逆にそのJK乃亜と仲良くなってしまい、というか思いっきり慕われてしまい、ついつい彼女と先輩である梶野の関係に手を貸してしまい、敵に塩を贈ってしまう人の良さを見せてしまう、どうにも報われなさそうな面倒見のよい後輩キャラって感じだったんですよね。
いや確かに面白い人ではあったけれど、この作品に出てくる女どもは総じておもしろオカシイ連中ばかりなので、むしろそれらの中では常識人、であるからこそ面倒背負ってしまう苦労人、という印象だったんですけどねえ。
……とんでもねえ。こいつが一番ヤベえよ! ヤバかったよ!
ほんと、彼女の過去エピソードに話が飛んだ途端に、初っ端から大ホームランかっ飛ばしてきましたからね。なんで初手、王手飛車取りレベルの強度の爆弾放り込んでくるんだよw
ちょっと意味分からないレベルのエピソードが連なってて、この娘の高校時代いったい何がどうなってたんだろう。単純に頭おかしいよね!?
ってか、なんで女子高生のあだ名に【SLAM DUNK】の桜木花道の名前がもじられるようになるんだか。いや、意味はわかるんですけどね。花道もじってヒナミチになる意味は。オマエが意味わかんないんだよ、ヒナミチぃぃ! このあだな考えたやつ、天才だわ。
不良とかグレてるとかのレベルじゃねーですわ。「反逆」が起源だったりするんですかね!?
作中でも当時の彼女のことをアヴァンギャルドなんて評されてますけれど、アヴァンギャルドがこれほど似合うJKはヒナミチ以外いないんじゃないですか!?
あー、でも「世界が日菜子を見つけた日」ってサブタイトルは好きだなあ。抑えきれないエネルギーを差し向ける対象に、彼女が巡り合った日。彼女のほとばしる生気を、世界がついに見逃せなくなった日。でも、世界に見つかるってことは世界の中で生きなきゃいけないということだ。人の築く社会の中でその一員として生きなければいけなくなる。そこでようやく、人は「何者になるか」の勝負に挑む挑戦権を得るのだろう。揉まれ削られ踏みにじられて、それでもなお自分を貫きそれを他者に、改めて世界に認めさせてようやく、その人は唯一無二の何者かになるのだ。
ヒナミチをして、それは叶わなかった。才能を認められて田舎を出て、しかし美大で壁にぶち当たったヒナミチ。それはきっと才能の壁なんかじゃなく、妥協であり順応であり適応であり……ハリネズミが自分の針を抜いていくものだったのだろう。自分の鋭角を削って削って丸くしていく作業だったのだろう。
人の中で、人の間で生きることとは、そういう事でもあるのだから。そうして、今の花野日菜子が出来上がった。
人に歴史ありだわなあ。それはまあ、敗北と言って良い顛末だったのかもしれない。でも、日菜子はそれを自分で選択し、その上で努力したのだ。頑張ったのだ。今の自分に成ろうとして成ったのだ。
その努力を認められ、頑張りを褒められて、キュンとしてしまったのは……うん、仕方ないよ。チョロくていいじゃない。人間、そういうチョロさは健全だ。
その相手が梶野さんとなれば、なおさらに人を見る目があるじゃないか、って話になる。いや、マジでお買得物件というべきか、そのへんに転がってていいような野良物件じゃないんだよなあ。
元カノとなんで別れたんだろう。思わぬところから危険球が飛んできて、元カノが発覚してしまったわけですけれど、熱こそ失せたものの今なお関係は良好っぽいですよねえ。

でもこのラブコメ。梶野さんにキュンキュンしてしまう乙女心をほとばしらせ持て余してアホになってる頭のおかしい女性陣のラブコメではあるんだけれど、主人公はむしろヒロイン陣の方なんですよねえ。梶野さんがヒロインだろう、これ。
同時に、OLの日菜子にJKの乃亜。イケメン女子の神楽坂に、マセてる姪っ子小学生えみりと、この四人の年齢も性格も違う四人の女性の友情物語にもなってるんですよねえ。
なんだかんだと、身近にちゃんとした友達がいなかった乃亜が、恋敵だけどそれ以上に尊敬して信頼して親愛している日菜子との年の差親友関係に浮かれはしゃいで、梶野さん相手に匹敵するくらい心揺らしているわけですよ。梶野さんに夢中であるのと同じくらいに、新しく出来たこの3人の友だちと過ごす時間に夢中になっている。それがなんとも微笑ましい。
肝心の恋もねえ、真っ向勝負というか。乃亜も日菜子も男前すぎるでしょう。気合入りすぎてるでしょう。なんか心意気がカッコいいですわ。恋する乙女の侠気炸裂ですわ。
イイ女に恵まれて、梶野さんてばもう……って、この男が一番いい男だわ。少なくとも、変態でもアタマオカシイヤバい奴でもないですし。そう考えるとヒドいなっ、このイイ女ども!?

なんかもう挙句の果てに日菜子さん出てくるだけで、というか彼女が地の文の語り手になってる場面、全部とにかく笑えてくるくらい日菜子さん劇場だったわけですけれど、ほんとに笑った笑った面白かった。よくぞまあ、ここまでキャラ立てまくりますよね、って感心してしまうくらいキャラの濃さが濃厚で、語り口がキレキレの楽しい作品でした。
なんかラブコメとしては決着していないものの、お話としてはこれで終わってもいいような綺麗な纏め方されてしまっていて、もしかしてこれで完結なんですかね? それはあまりにも勿体ない、めちゃくちゃおもしろい愉快痛快大爆笑のラブコメ作品でした。ってか、ヒロイン陣がメインの語り手になった2巻からのはっちゃけ方がパなかったです。続きでないのかなあ、これはほんとに続き見たいですよ。