【君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業】  筏田かつら/U35 宝島社文庫

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女優・歌手 上白石萌音も感動!
「最後の一行のその後も、ずっと物語の中に居たいと思った」

累計13万部突破のムズキュン青春ラブストーリー
最底辺眼鏡男子と派手系美少女の恋物語、完結!

普通に過ごしていれば、接点なんてなかったはずの飯島靖貴と北岡恵麻。
徐々に仲良くなり、「好き」という気持ちも芽生え始めていたところで、恵麻が友達に放った陰口を靖貴は耳にしてしまう。
すれ違ったまま向かえた一月、大学受験を控えた靖貴は「遠くの大学を受ける」という選択肢を考え始めて……。
不器用すぎる二人の恋は、どう卒業を向かえるのか。二人のその後を描く「春休み編」も収録。

たまたま部屋をひっくり返してたらこの本が出てきて、そう言えば前巻読んだ後続きのこの本は読んでなかったなあ、とペラペラとめくっているうちに読み終わってしまいました。
雑誌以外の実態のある本を読んだの久々だったかもしれない。
ちなみに一巻は2017年に読んだので、5年跨ぎである。こういう途中で積んだままの本がまだまだあるんだよなあ。

それはさておき、この作品である。前巻のラストが衝撃的というか、結構主人公の靖貴にはキツいものだったのでよく覚えてはいたんですよね。
そりゃさ、いい雰囲気になって好きだなあ、と思い始めていた女の子が、影で自分の悪口に同調している場面に遭遇してしまったら、ショックだよねえ。身に覚えのない噂を立てられて、それを否定してくれなかった。あれはちょっとぐらいは人間不信になっても仕方ないシチュエーションでしたよ。
これに関しては、恵麻が安易だったというか不用意だったというか、友達との間の空気を壊したくなかったにしても、本心ではなかったにいても言っちゃいけない事を言ってしまったわけだから、彼女が悪いわなあ。

この一件以降、恵麻から距離を置き始める靖貴であったが、恵麻は自分の発言を聞かれていたと知らないから、なぜ彼が自分を避けるようになってしまったかわからずに狼狽えるわけだが、自業自得ではあるんだよなあ。

結局、ふとした事から恵麻は自分の言葉を靖貴が聞いていた事を知って、原因が自分にあることを知ってへこみまくり。靖貴の方も友人などからさり気なく諭されて、恵麻が決して悪気があってあんな事を言ったんじゃないことを察して、自分の態度に恵麻が本気で傷ついている事も理解するのだけれど……。
気まずくなってしまった関係を、恵麻も靖貴も今更自分から打開するための勇気が出てこなかったのである。

思えば……この二人が仲良くなったのって本当にただの偶然なんですよね。偶々、お互いの趣味で意気投合して一緒に過ごす時間が心地よくなって行った。いろんなイベントや出来事が起こって、その潮流に一緒に乗ることで心の距離が縮まっていった。
それはとても自然体で無理のない恋のはじまりであり、育みであったのでしょう。でも敢えていうなら、それは流れに乗っていただけ。流れに流されていただけ。彼ら自身の意思で、二人の間の関係に決定的な変化をもたらそうという一歩は、踏み出されることはなかったわけである。
自分たちの意思で、自分たちの関係を変えようという何かは、彼らの間にはまだなかったのです。

今まで流されるままここまで来てしまった二人は、いざ関係が壊れてしまったときにそれを何とかしようと流れに逆らう一歩を踏み出す、勇気の引き出し方を知らなかった。自分から勇気を振り絞ることを終ぞ出来なかったのである。
そりゃあね、人間関係を決定的に変えてしまうのって、勇気がいりますよ。とてつもない意志力を振り絞らないといけない。ビビってヘタレてしないで済む言い訳をいくつもひねり出してしまって、楽な方に進んでしまおうとする。臆病なんだ、人間は。
そういう意味では、彼らの勇気のなさは共感をいだいてしまうものでした。
たとえ、結局卒業まで二人してヘタレまくって、ちゃんとした話し合いすら出来ずに顔を合わすことも避けあい、行きあっても当たり障りのない会話だけで逃げ出して、貴重な青春の時間を放り捨ててしまったのだとしても。
周りの人の多大なお節介やお膳立てを全部うっちゃって、知らん顔してしまったのだとしても。
いや、正直靖貴の周りの友人たちはちょっとイイやつばっかりすぎないですかね? そもそも、これまで殆ど交流なかったやつまでが、色々と助けてくれたのは本気で感謝するべきだと思うぞ。本来なら、そんな手間隙かけてやる義理も何もないんだから。
まあそんな連中の気遣いすら、台無しにしそうだったんですけどね、彼。でも、ヘタレにはそんな勇気はないんだよ。勇気出すくらいなら、辛くて精神的に死にそうな方がマシなのである。
挙句の果てに、地元からも逃げ出して遠くの大学に行こうとするあたりは、なかなかの根性の持ち主だと思うが。

結局……お互いに仲直りしたかったのに最後の最後までズブズブにすれ違ってしまったのは、ヒドい話だと思うんですよね。ただ、これに関しては靖貴も恵麻も同類というか同罪というかお互い様なので、どちらが悪いと言うんじゃなく……どちらも悪いよね?
結局の結局、仲直り出来たのはほんとに偶然に近い遭遇があったからなので、ある意味最後まで流れに逆らわなかった、というべきなのかもしれない。もう運命というかシナリオがしつこいくらい復縁しなさい、と一生懸命流れをそっちの方に向けていたのに、ようやく乗っかってくれたというべきか。ここまでウジウジやられてしまうと、流れを作る方の運命さんも大変だなあ、と思ってしまったりw
最後の最後に勇気を出したのは、あれを出したカウントに入れるべきなのか非常に悩むところであります。クイズのラストの問題、配点1万点! みたいな?
ともあれ、散々うじうじした挙げ句が遠方の地に逃亡を図ってしまって、結果として遠距離恋愛に、となかなか大変なことになってしまったので、その点はざまあかんかん、とちょっとだけ言いたくなってしまいました。まあ、一人暮らしになった靖貴のもとに乗り込んで、恵麻も大いに邪魔されない空間というのを堪能していたので、それはそれで風情があるのかもしれませんけれど、遠距離恋愛は行くも帰るもお金掛かるから学生の身の上では大変だぞお。
しかし、あれはあれで恵麻の方も勇気を出したってことなのかな。