【霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない 2】  綾里 けいし/生川 ガガガ文庫

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未来視の先に綴られた、美しき地獄ーー。
「かみさま」を失った藤咲からの逃亡生活を続ける、藤花と朔。
自らを「不良品」と称す少女を守りながら、朔は今後の行く末に頭を悩ます。

そんな二人のもとに、未来視の異能をもつ「永瀬」の遣いーー未知留が訪れる。

永瀬の擁する「ほんもの」が視た藤花と朔にまつわる幾つかの光景。


雪の降る永瀬の邸にて繰り広げられる、未来視を巡った狂気の発露。

それは『少女たるもの』になれなかった誰かの、在りし日の恋の残滓。
これは、過去に自分を求める少女と現在に自分を認める女の、

「想い」が生んだ美しき地獄の物語。


人を愛するということは時として破滅そのものとなり得る。だが、その破滅はかくも美しい。


それは一人の女が、一人の男を想ったが故にはじまった破滅であり、呪わしい一族の終焉でありました。

神様になるために生み出され、しかし「かみさまになれなかった」藤咲藤花は、アイデンティティを失い存在意義を失って、それでも朔への想いを拠り所に生きていくことを決意した。
彼女は最初から最後までただの少女であり続けた。一人の男を思う「少女たるもの」であったからこそ、彼女は神様にはならず、なれず、しかし生きる縁を得たと言っていいのだろう。

でも、そんな彼女に照らし合わせるように、少女であることを望みながら、願いながら、少女たるものになれなかった、そんな女性も居たのだ。
これはそんな「少女たるもの」になれなかった女の物語。同じ、一人の男をひたすらに想う生き方しか出来なかったのに、無垢なる少女ではなく望むものを手に入れるためにあらゆる手段を尽くす事を躊躇わない欲深き「女」でしか在れなかった女の話である。
手に入ることのない愛に、溺れることしか出来なかった女の話だ。だから、その結末はどうしたって惨劇になる他なかったのだ。最初から最後まで、はじまりから結末まで、その美しい破滅は決まりきっていた事だったのだろう。
その人の運命を、「少女たるもの」として最初から奪い去っていた藤花にとっては、決して嗤うことの出来ない「惨劇」であった。

でも、思うのだ。果たして、彼女はその人、朔の心を奪い取れると思っていたのだろうか。相応しい代償を捧げることで、引き換えに彼が振り向いてくれると本気で思いこんでいたのだろうか。あれだけ壮大で容赦呵責なく大胆巧緻な仕掛けを考え、準備し、たったひとりで成し遂げてみせた彼女が、そんなことにも気づいていなかったのだろうか。愛は盲目という。彼女は確かに、一心不乱に盲目だったのだろう。でも、朔という男性の心の在り様についてまで盲目だったとは思えない。
最初から、わかっていたんじゃないだろうか、彼女は。
永瀬未知留という女は。

なぜ……未知留という名前だったんでしょうね。未だ知らずを留める。それは彼女自身の懇願のようにも見える。そして、きっと彼女は知っていたのだろう。最初から、この残酷な結末を。地獄の終わり方を。そう、思えて仕方ないのだ。
それでも、彼女は自分の想いに殉じた。たとえ叶わなくても、無意味だとわかっていても、届けとばかりに手を伸ばし、ただ彼と藤花の立つ舞台に上がることを望んだ。二人の目に、自分の姿が留まるように。

未知留の仕掛けた最後の罠。最後のからくり。二人の身代わりの生贄を代償に、二人の身柄のしがらみを解き放つ、自分と朔が結ばれる未来を夢見たその仕掛けは、果たして本当に自分のために企てたものだったのだろうか。
それは、その仕掛けは未知留自身でなくても当てはまるんですよね。それは、自身が生贄であっても、変わらず効果を発揮するんじゃないだろうか。
もし本当に最初からわかっていたのだとしたら……。
少女たるもの、になれなかった女は、まさに自身と一族のすべてを捧げて、与える愛に殉じたのかもしれない。すべての地獄は、すべての惨劇は、恋する人の幸せを願って……。


恋する姿も、恋破れる姿も、すべてが美しい。ここの挿絵は、イラストの生川さんの渾身の一作であったと思われる。素晴らしかった。そして、そんな光景を彩る表現描写。破滅の美しさ、滅びの美しさ。儚く散りゆく想いの美しさ。
地獄の美が、ここに極まっている。




とまあ、妖しくも儚く悍ましく美しく陰惨で、と淡く幽玄な雰囲気で描かれる本作だけれど、一方で前巻で想い通じ合って恋人となった朔と藤花が……完全にバカップルと化してるんですけど!?
隙あらば愛をささやきあい、暇あれば結婚しようとプロポーズが飛び交い、ハートマークが乱舞する。
なんぞこれww
朔くんが、朔くんが壊れとる。この子、こんな子だったか?
なんかもう綾里けいし史上でもっともラブラブなカップルなんじゃないか!? と、思ったんだが、よく考えて見ると、というか御作を振り返ってみるとわりとどの作品でも偏執的なほど情熱的なカップルには事欠かないぞ!? ラブラブカップル珍しくないぞ!? あれ!?
いやでも、ラブラブカップルは少なくなくても、ここまでバカップルなバカップルは流石に珍しかったはず。そうだよね!? ……わりとバカップルも多かったような〜(オイ