【魔術師クノンは見えている 2】  南野 海風/Laruha カドカワBOOKS

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偉大な魔術師と最先端の研究環境が集まる魔術都市でも盲目の天才が大暴れ!

魔道具「鏡眼」を開発し、視界を獲得した盲目の天才・クノンは、さらなる水魔術の研鑽のため魔術学校へと旅立つ。

最先端の研究環境と最高の魔術師が揃ったそこは、彼にとって絶好の遊び場。聖教国の聖女や、雷光の異名を取る魔術師だって研究対象。教師や先輩、偉大なる不死の魔女までもが、そんな魔術一筋なクノンの言動に振り回されつつも注目する中、クノンは早速聖女に共同研究を持ちかけ……?

クノンの才能が世界にバレる、発明ファンタジー第二弾!



クノンは儂が育てた! な、専属メイドのイコさんがついに退職と相成りました。
目が見えないことで気持ちの塞いだ日々を送っていたクノンの人生を、明るく楽しいものに転換させてくれた恩人であり、姉のような存在であり、共犯者でもあり……犯人はコイツです、な人だったイコ。
まさにクノンの運命を変えた人だったのでしょう。そんな人との別れは、思ったよりもあっさりでしたけれど、でもこの二人らしいグッバイアデューでありました。
しかし、イコさんそろそろ結婚したいからメイド辞めます! って、相手になってくれるような人、奇特な人、居るんだろうか。
その点、今度新しくクノンの専属侍女になってくれるイコの妹リンコはちゃんと婚約者が居るらしい。妹に先越されてませんか、イコさん!?
ともあれ、イコの代わりなんて誰も出来ないだろうと思ったら、わりと似たりよったりな妹さんが現れましたよ。大丈夫か、この一族。だから堂々とお金のためと明言するのやめなはれ。稼がせてもらいますよグヘヘヘみたいな態度とらないw
いやでも真面目な話、幾ら紳士なクノンとはいえ、年頃の女性と二人きりというのは大丈夫なんだろうか。なんか結局、寮じゃなくて自分で借りた家に住む事になったわけですけれど、ひとつ屋根の下に男女二人暮らしですからねえ。クノンにはなんだかんだと介添えが必要とは言え。
評判的にはクノンは女の人と見れば口説かずにはいられない、というか女の人と会ったら口説くのが紳士としての振る舞い、というのを某メイドから仕込まれてしまっているので、それが通常運転になっているのですけれど、世間から見たら女に見境のないチャラ男と言わざるを得ませんからねえ。そんなのと二人暮らしですよ。リンコの評判とか大丈夫なんだろうか。

なにはともあれ、ついに実家を出て魔術学校に入学したクノン。それも試験の結果、特級……授業を免除されて自由に好き勝手に研究し放題、というクラスに入れたわけですけれど……いや、凄いな。この魔術学校、入学直後から生徒の自主性に任せるだけの度量があるのか。勿論、入学時にわざわざ義務として授業を受ける必要がない、と判断されたからだろうけど。
これ、いきなり自由にしていいよ、と言われて学校というシステム自体にもなれていないような子は面食らうでしょうね。自由というのは何をしろと指示も示唆もないってことだから、何をしたらいいかわからない、研究ってどうするの? という方法論以前に考え方捉え方からわからないという人も珍しくないだろう。クノンと同窓となったクラスメイトたちも最初そんな感じでしたし。
クノンって、そういう人たち無視して放っておいてもいいだろうに、わりと積極的に面倒見てるんですよねえ。わざわざ手をつないでいちいち引っ張っていってあげるみたいな真似はしないのですけれど、自分の手伝いをしてもらうことで研究って何? どういう風に考えればいいの? という最初の筋道を自然と身につくように教えてあげるの、何気に指導力もあるんじゃないでしょうか。
というか、別に女の子にだけ声かけて親切にしてるわけじゃないんですよねえ……誤解されて当然の言動ばっかりしてますけど!
男から声かけられても梨の礫なそっけない態度取って、逆に女の子には声かけまくり、逆に声かけられてら全部にOKOKと許諾受諾承りましたー、な態度とってたらそりゃ女たらしみたいに思われるわなあ。男にはきつい、と思われても仕方ないよなあ。
ただあれは本当にズレてるだけなんでしょう。別に本気で女の子に粉かけてるわけじゃないんだよなあ。恋愛的には婚約者のミリカに一途なのは間違いないはず。何しろ、ミリカ本人に女の子たちとたくさん友達になりましたー、仲良くなりましたー、と手紙で報告してるくらいだからなあ。
……大惨事じゃねえかw イコさんの教育のほどが伺えますw

使える魔術の数こそ少ないものの、一つの魔術に対する応用の幅広さがずば抜けているを通り越してなんかもう別の魔術系統へと発展してるんじゃないかという卓抜っぷりに、学園中が色んな意味でどよめいているのですけれど、それ以上にクノンのものすごいとしか言いようがないキャラクター、性格、その言動に学園全体が震撼させられる第二巻でありました。
これ、クノンの魔術の突拍子のなさがなくても、あのキャラクターだけで伝説になってたんじゃないだろうか。学園全体が振り回されてますよ、あの天を飛翔するがごとき軽薄さにw

その最初の被害者だったはずの同じ特級クラスの聖女レイエス。
特級クラスって面白いですね。自主性を重んじるかわりに、ただ放ったらかし放置するのではなく、実家や支援団体からの仕送りなんかを封鎖して、生活費など自分で稼げ、というルールはなるほど、と非常に面白く思わせてくれるものでした。
ただ衣食の費用稼ぐだけだったら魔術関係なくても何とでもバイトでもしてなるんでしょうけれど、貴族階級なんかだと使用人なんかも連れてきているから、彼らの分の給料も実家とかじゃなくて生徒自身が払わないといけない、というのはこれかなりハードですよ。大人のそれも貴族の使用人クラスの給料ですからね。これが稼げないと、特級クラスから自主的に降格して下のクラスに入れば仕送り解禁になる、という制度はかなり厳しいとこついてます。
クノンなんか、もう色々と師匠の薫陶によって発想の百貨店みたいな少年になってしまってますから、あれこれと稼ぐネタは抱え込んでいたのですけれど。
聖女として俗世から隔離されていたと言っていいくらい縁なく教団の庇護下で生きていたレイエスにとっては、初めて直面する俗世の世知辛さ、生きるにはお金が必要、御飯食べるにもお金が必要、という事態だったわけである。聖女、生きるを知る、というやつである。
幸いにしてクノンの協力によって資金稼ぎの目処は立ったものの、実績を挙げないと先払い前払いはどうしたって無理なので、どんどんと貧しさに追い詰められていき透明感のある他人と交わらないどこか非人間的な冷たさを帯びていた聖女が、腹ペコのあまり学友のベーコンづくりの失敗作で食いつなぐ赤貧聖女になっていくさまは、なんというか聖女様も大変ですねえ、という心地でありました。
最初はあれだけ、クノンの軽さに拒否反応示していたのに。プライドでは腹は膨れない、というのを痛感して、色々とクノンのアレに妥協していく様子は、聖女様も大変ですねえ、と言わざるを得ませんでしたw
人間、大抵のことには慣れるものです。
学園全体がまだまだクノンのキャラクターに振り回され、大混乱に陥っている中で、真っ先にアレはああいう生き物だから気にしても仕方ない、と妥協し慣れてしまって平然と流せるようになったレイエス様は、わりと適応力ありまくりな人なのかもしれません。

さて、こうして魔術師たちの卵がわんさと詰め込まれている魔術学園に入学し、また際立った魔術の師たちにもめぐり逢い、自分が獲得した【鏡眼】についての考察も深まってきたクノン。
この鏡眼って常時発動できるわけじゃなかったのか。あの、普通の視覚とは違う、人が変な風に見えてしまう傾向も、ちゃんと法則があるらしいのねえ。ああいう世界に見えるというのも、なにか明確な理由や理屈があるってことなのか。

なんかもう入ってすぐに学園がしっちゃかめっちゃかになってその中心にクノンが居るという感じになっていますけれど、さてこれからどんな混乱が学園を見舞うのか、すでに相当やらかしているもののまだまだ序の口な余裕すら伺えるクノンくんの楽しい学園生活、存分に堪能できそうです。

そしてクノンと別れて騎士学校に通う婚約者のミリカ様はというと、こちらはこちらで独自路線に進み、なんか不良姫とか呼ばれだしてえらいことになっているようにも見えるんですけど。クノンはクノンでいいとして、婚約者さまの方も濃ゆいなあw
あんまり今回はミリカさまの出番もなかったので、彼女の活躍と言うか動向というか大暴れの方も是非に見守ってあげたいものです。出番増えろー(熱望