【はたらく魔王さま! おかわり!!】 和ヶ原 聡司/ 029 電撃文庫

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あのフリーター魔王さまが"小説でも"帰ってくる!

「カレーってどうやって食べる?」
きっかけはクラスメイトとの些細な会話だった。
ごはんの上にかける、混ぜる、バラバラに食べる。世の中には色々あるらしい。
そんな日に訪れた、いつもと変わらない賑やかな魔王城。
その日の献立は奇しくもカレーで……!? そして明らかになる芦屋がカレーを作りたがらない理由とは――!

TVアニメ第2期放送を記念して『電撃ノベコミ』アプリ上で連載していた7つの短編に、書き下ろしを加えた特別編が登場!
『はたらく魔王さま!』本編時系列の裏話をちょこっとひとつまみ。
あのフリーター魔王さまたちが贈るいつもの日常をもう一度、おかわり!


【はたらく魔王さま!】の驚きの第二期アニメ開始に合わせて、これまでアプリでのみ掲載していた短編と書き下ろしをあわせての、短編集が刊行となりました。
ってか書籍化されてない話がまだこれだけあったの!? という驚きもあるんですが。
しかしこれ、読んでみたらあれじゃないですか? 前に出された短編集の【はたらく魔王さまのメシ!】の続編と呼んでも過言じゃないんじゃないだろうか。何しろ、全編メシの話だったですぞ!?
むしろ、食事という行為そのものに対しての哲学や考察、様々なアプローチを試みていた【〜のメシ】よりもシンプルに美味しいご飯を食べる話に終始していた本作の方がメシ!と言える本だったんじゃないかと思えるほど、でした。
いずれにしても、ご飯をおいしく食べるお話ってのはそれだけで楽しいものですよ。ごくごく日常に溢れていて、普通の人が追求しやすい最も大事でシンプルな欲求のお話。生活とは起きて飯食って働いて飯食って遊んで飯食って風呂入って寝るのが基本とすれば、1日3回前後も繰り返している生活の基盤ともいうべき行為ですからねえ。生活感にこそ面白さの根源を担わせている本作としては、メシについてのこそが真髄と言えるのではないでしょうか。

【魔王軍、卓上の封印を解く】
これは作中の関係者も意外さに驚いていたけれど、魔王城ではカレーが食卓に並ぶことはそんなに少なかったのか。
いや、確かにわかるよ。すでに若いもんがいないうちの食卓でも、カレーの際は普段よりもだいぶ多めにご飯炊かないと足りないもの。
カレーばっかりはどうしたっておかわりしちゃいますもんねえ。
カレーの食べ方について千穂の学校で論争が巻き起こる様子には微笑ましくもついついうなずいてしまうものがありました。
カレーの食べ方って、みんなそれぞれ一家言ありますよねえ。自分の場合もちょっと拘りがありまして、家カレーは全掛けでまず半分食べて、それからご飯とカレーを追加で足してから今度は卵入れるんです。自分、卵入れたい派なので。でも最初から入れて混ぜてしまうと元のカレーとはまた全然別物になっちゃいますからね。まず普通のカレーを楽しんでから、卵を混ぜたカレーを食べるという楽しみ方をしています。昔は二杯くらいペロッと食べられたので、一杯目を完全に食べきってからもういっぱいおかわりしてたもんですけれど、さすがにそれだけ食べられなくなったなあ。
ちなみに、付け合せは福神漬け一択。らっきょうとかはノーセンキューです。

しかし、これ以降の作品通して見ても、一番食事に対して拘りがあるというか通なのって絶対鈴乃ですよね。グレービーボートとか名前はじめて知ったぞ。


【堕天使、家庭の味わいに震える】

そんなに漆原にご飯美味しいおいしいと感謝されながら食べられるの嫌なの?w
入院していた際の病院食の味の薄さに脳をやられてしまった漆原。幸いにして自分、入院した事ないので病院食って知らないんですよねえ。こればっかりは病院にもよるんでしょうけれど、栄養とかカロリーを突き詰めていくとどうしても薄味になってしまうのか。
真奥がひたすら「俺たちももう歳だしなあ」と言ってるのが妙につぼにハマって笑ってしまった。真奥はそもそも自分たち何歳の人間という設定のつもりなんだろうw


【聖職者、再利用の方法を検討する】

どうしてもエンテ・イスラでの政治的な立場の違いから、気安くなれないエメラダと鈴乃の関係。ついつい、相手の思惑や低意なんかを伺ってしまうことに嫌気を感じつつも、どうしてもそうせざるをえないってのはありますよねえ。
でも、相手のために色々と考え工夫してもてなしの食事を作るというのは、相手のことを思ってのことで政治的な駆け引きだけじゃないんですよね。そういう心情を拾うの千穂ちゃんが一番うまいんだよなあ。
そしてキャンプ用具でキャンプスイーツを作る鈴乃、やっぱりこだわり派ですよねえ。


【勇者、健康管理意識を高める】

ダイエットをしたことがない、というのはまあフィクション、ノンリアル、幻想領域の話とは言えまあまあそう言い放つ美人キャラがいるのはよく聞きますけれど、体重計すら持っていないというのはさすがになかなかないぞ、恵美ってば。わりと健啖家な勇者なんだけど、エネルギー燃焼効率ほんとにいいんだろうなあ。それはそれとして、健康意識に目覚めるのが自分のためじゃなくて娘のアラス・ラムスのため、というのはほんとにお母さんしてますよねえ、恵美は。


【魔王、人と囲む食卓の温かさを改めて思い出す】

考えてみると、アシエスに起こった爆食発作は【はたらく魔王さま!】の作風からすると異常事態も異常事態なんですよねえ。ご飯を食べる、というのを完全にエネルギー摂取、とにかくアエシスが満足するまで餌みたいに食べさせる、事に終始していて、食事するという生活のいちばん大事な行為をないがしろにしている状態でありましたしねえ。食卓を囲む、という事自体が出来ていなかった。
まあアシエスの状態を考えると仕方ないことなのですが、この短編で改めてその件で蔑ろにされてしまっていたことについてスポットをアテて見つめ直しているのは、感心させられました。
ってか、大食いチャレンジって意外とあるんだなあ。


【勇者、失ったものを探して迷走する】

なんか美味しんぼみたいな話になったぞw
これ、自分味音痴なところもあるのだけれど、昔食べた料理の味とかそんなにしっかり違いがわかるくらい覚えてるもんなんですかねえ、とほんの僅かな違いでも区別できる人はちょっと尊敬を覚えてしまいます。
しかし、恵美さん完全にOL満喫してるよなあ。お昼に社屋出て外で食べてくるとか、都市部で働いてるサラリーマンの特権でしょう。特にいろんなお店を開発していくとか。ちょい羨ましい。
自分で色々と作ってみて試してみる恵美も料理スキル凄いけど、ついに研究考察の末に恵美が求めていた店の味にたどり着いてみせた千穂ちゃん、ちょっと凄すぎないだろうか。答えはわりとシンプルだったかもしれないけど、実際作ってみて「これだ!」と言わせるの大したもんだと思うぞ。



【悪魔元帥、禁断の誘惑に敗北する】

これが何気に今回の中で一番好きな話だったりします。芦屋さん、ジャンクフードの沼にハマるw
いや、普段から節制節制、と栄養管理にしてもエンゲル係数にしても厳しく管理している芦屋が、一番真逆だろうカップ麺にハマってしまう、それも禁断症状を起こしてしまうくらいに沼に浸かってしまうのはなんともはや、彼の人間味みたいなものを感じさせてくれるもので、好きですわー。
言わばそれは常にキッチリと考えを固めている芦屋という「人間」の隙なんですよね。そんな隙に最初に気づくのが梨香で、そんな芦屋の隙をあれこれ言うでもつけ込むでもなく、一緒に楽しめる趣味として、一緒に笑って共有できる嗜好として寄り添えているあたり、この二人まだまだチャンスあるんじゃないかと感じるんですよねえ。なんだろう、そういう部分って一緒に過ごしていく上で一番大事なところだと思うんだよなあ。


【女子高生、名物を調査する】

これはなるほどなあ、という話でした。名物って、大きな範囲で捉えるとこれってものが見えてこないんですよねえ。海外に旅行に行くという親戚や兄弟にお土産なに欲しいと聞かれても、国単位だと案外と思いつかなかったんですよねえ。でも、改めてこの話読んでから考えると、訪れる国の中の都市単位で調べたら色々と名物あったんじゃないだろうか、なんて思ったり。
自分の地元でも、県単位だとなんか焦点が合わないんだけれど、本当の地元も地元だと色々とあるもんです。
とはいえ、東京はねー、あれ駅とかの土産物屋いったらいろんな美味しそうなもの売ってるから、片っ端から買って帰りたくなるんですよねえ。まあ東京に限らんだろうけど。大阪とか神戸の近場では土産物屋入らんもんなあ。


和ヶ原聡司・作品感想