【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 6 ~ヘンダーソン氏の福音を~】  Schuld/ランサネ オーバーラップ文庫

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門出の先に、理不尽な試練(クソシナリオ)が待ち受ける!?

栄達させられたアグリッピナに巻き込まれ、側仕えとして激務の日々を送っていたデータマンチ転生者エーリヒ。
数々の修羅場を乗り越えた彼は、ついに丁稚の立場から解放されることに!
エリザやミカ、ツェツィーリア達としばしの別れを惜しみながら、エーリヒは冒険者となるべく帝都を旅立つのだった。
ひとまず故郷を目指す中、ひょんなことから知り合った馬肢人の少女ディードリヒ。
高い戦闘能力を持ちながらも戦士としての心構えが未熟な彼女をもったいなく思ったエーリヒは、しばらく彼女と同道することを決めるが……?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、ドタバタ珍道中な第6幕!


いや、なんで帝都から故郷に帰るまでのただの移動でそんなにトラブルばっかり見舞われるんだよ!?
いくらなんでも頻度が酷すぎるw
というか、これウェブ版では単発クソイベばっかりだったわー、とかで済まされて特に描写もなく軽く概要だけ言及されて流されてましたけれど、そんなもんじゃ済まんでしょ、これ!?
最終的に一個正規騎士団とガチにぶち当たった挙げ句に、これ壊滅させちゃってるじゃないですかー!?
普通に単騎で騎士団壊滅させるなし! もはや冒険者はじまる前に意味不明レベルの単体戦力として完成してるんだよなあ、エーリヒって。問題は完成して終わりではなく、ここから延々と完成度をあげていく上に拡張していくわけで。
それでアグリッピナの課題として、冒険者として活動する際は魔術師であるという事は隠すという縛りを課されることで、初見殺しとしての必殺性まで研ぎ澄ませていくわけで。
単にめちゃくちゃ強いってだけなら、ソレ以上に強いのとぶち当たったら容易にやられちゃっても不思議じゃないんだけど、どうやったら死ぬのコイツ? というタイプってたとえどんな格上と当たっても何やっても倒せないし対応してくるし、でほんとどうしようもないんですよね。こういうタイプのキャラクターってなかなか描写が難しくて(どうしてもシンプルに強い方へとベクトルが傾いていってしまうので)あまり見たことがないだけに、エーリヒのそれは見てて本当に面白いです。

さて、今回はもう9割書き下ろし、と明言されているほどに片っ端から見たこと無いシーンばっかりで、いやはや。前回の巻の記事でも書きましたけど、ウェブ版の方がダイジェストなんじゃと思えてくるほどに、新編ばっかりなんですけどー。上記もしましたけど、今回はウェブ版では色々あったな、でサラッと流されてしまった帝都から故郷に帰るまでの旅路を一巻丸々使って描かれた話でした。
ソレ以前の帝都からの旅立ち編。丁稚を卒業して帝都で友誼を結んだ人たちと別れを告げて、3年間のうちに馴染んだ生活を終わりにして、夢でもあった冒険者になるためにまずは故郷に帰り、家族に会い、待っているマルギットを迎えに行こうという……その旅立ちの描写もだいぶ再編集されて、感慨深いものになっていました。個別に会って別れを告げていたミカやエリザ、ツェツィーリアとのそれも、書籍版では他の三人同士も仲良くなっていて、四人でお別れと卒業祝いの宴をすることでそれぞれの別れを惜しむ感情が相乗して、凄く情緒的なシーンに仕上がっていましたしねえ。
このときばかりは、エーリヒもまだ15歳の子供に思える感極まるシーンでしたねえ。
また、エーリヒの現地母だった灰の乙女との別れは特にもう住まいだった下宿には二度と戻らぬとわかっているだけに、より旅立ちを意識させてくれる胸にくるシーンでした。

しかし、やっぱりというべきか、これだけ出来る人物を手放す、それもアグリッピナほどの傑物が既に懐刀としてあらゆる方面に知れ渡ってしまっているエーリヒに暇を出す、というのはそりゃ裏を疑われても仕方ないよなあ。あり得ないもん。アグリッピナが、エーリヒほどの誰が見ても逸材でしかない人材を、見損なって放逐するなんてあり得ないし。これから幾らでも出世できる事間違いなしの立ち場をエーリヒがむざむざ捨てるわけが常識的にあり得ないし、そもそもそんなワガママを許してくれるようなアグリッピナではない(と思われて当然のムーヴかましてるわけですし)。
というわけで、当人たちの知らぬ所でなんか魔導宮廷伯アグリッピナの隠密頭として更に裏に潜り、自由に出来る立ち位置を与えた上で野に放たれた、と思われてしまったエーリヒ。
まあ、帝都から姿を消して速攻で、与えられた身分証明書である指輪使いまくって、あっちこっちで貴族のトラブルを可能な限り穏便に解決してまわった上で、アグリッピナ師に益が回る形で収めてたら、そりゃそう思われても仕方ないわなー。エーリヒが悪いw
実際、アグリッピナ師の紐付きなのは間違いないですしねえ。

…………こいつ、冒険者デビューする前に積立がエラいことになりすぎてやしないだろうかw
単に実力云々だけの話じゃなくて、アグリッピナ師を筆頭にした貴族や魔導師への人脈や宮廷関連の知識、情報。政治的な立ち回りのスキルといい、これが冒険者としてルーキーデビューして、最下級から頑張ります、ってのたちの悪い冗談にしか見えないんですけどw

今回の新キャラとなる馬娘……馬肢人のディードリヒは旅路の途中でエーリヒが拾うことになったいわゆる脳筋武人キャラなのですが。
振り返ってみると、今まで出てきた登場人物というのはみんな自分の生き方というものに、確固とした方向性と信念を持った人たちばかりでした。横からあれこれと口出ししなくても、自分でしっかりとどう生きていくかを決めている、自立した人たちばかりだったわけです。幼いエリザだとて、あれは兄の為、というチェンジリング特有の普通の人間からはハズれてしまった性質ではありつつも、揺るぎのない指針を持って自分の人生を歩んでいます。
ミカやツェツィーリアも、どのような道を辿っていくかについては迷ったり悩んだりはしているものの、往くべき方向性については彼女たちなりに既に決め込んでいる。アグリッピナ師は言うに及ばず、あのムカデ少女にしても与えられた役割を誇りを以て全うしようとしている。
エーリヒとしては、彼女らのゆくみちを助ける、扶ける、援ける、佐けることは友人として家族として、惜しむことはなかったけれど、彼女らの道そのものを先導する必要は一切なかったわけです。
常に対等に、或いは兄として庇護者として、振る舞ってきた。
でも、今回出会ったディードリヒは武勇こそ優れているものの、その武勇をどのように使うべきかの指針を一切持っていない、ただ一番になりたい、という何のために一番になりたいのかの方向性も見失っている、往くべき道を持たない子だったんですよね。
いや、年齢は子というものじゃなくて、15歳なエーリヒよりも年上なんだろうけどさ。でも、その美しいとすら言える武勇にもったいなさを感じたエーリヒは、彼女を旅の道連れにして彼女のゆくべき道を見出すための教えを、導きを促すことになるのです。
教導者としてのエーリヒは、エリザに対してのお兄ちゃんな彼とも違って、これ初めてみせる側面だよなあ。未熟なもの、考えの足りていないものに対して、教えを施していく。格好良さとはなにかの指針を与えていく、そんなエーリヒの姿は……いや、こいつ絶対15歳じゃねえだろw
むしろ、凄く似合っているというか貫禄に年季が感じられて、前世から重ねた精神年齢50代とか自分でのたまってますけど、ほんとそんぐらいのベテランのおっさんのような重厚さを、ディードリヒを叱り飛ばしたり丁寧に教え込んだり、稚気を交えて一例を見せたりする姿に、垣間見るんですよねえ。
いやほんとに15歳じゃねえだろ、こいつ。
でも、不思議と教導者としてのエーリヒって物言いが似合っているというか、こうやってあれこれと教えて導いてやる、教師とか師匠役がピッタリなんですよね。ヘンダーソンスケールのいろんなIFルートで大体イケイケの渋くも活発なジジイになるの、なんかよくわかりましたわ。

今回のヘンダーソンスケール1.0は、噂に実態が伴ってしまった、冒険者やりながらアグリッピナ師の密偵として働くことになってしまったルート。そうかー、辺境地ではなく帝都近辺を拠点にして冒険者はじめてしまうと、こうなってしまうのかー。このパターンだとマルギットも一緒にアンダーグラウンドに根を張ることになるのね。
ムカデ娘なナイケイシャさんとのガチルートも、このルートになるのかー。マルギットとナイケイシャのクモとムカデによる虫系人種特有のある種の異質さをまぶした修羅場は、なんかもう背筋がゾクゾクするものがありましたわー。こわっ、ほんまこわっ。