【転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件 5】  雲雀湯/シソ 角川スニーカー文庫

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手を伸ばせば、すぐにあなたに届く。大好評ラブコメディ、波乱の第5巻

夏休み明け、転校してきたもう一人の幼馴染と新たな生活がスタート!

隼人が転校してきてから、春希の日常は大きく変わった。クラスでの良い子の“擬態”は少しずつ解き始めて、バイトに挑戦してみたり、園芸部に入ったり、みなもに一輝、伊織、恵麻……友達と呼べる人も出来た。
それは幼いころと何も変わらない穏やかな空気でいつも隣にいてくれる「相棒」の隼人がいるからこそ。

夏休み明け、また春希の日常が変わり始めていた――月野瀬から転校してきた、沙紀の存在によって。
春希の大切な友達で、そして隼人が妹でもトモダチでもなく「女の子」として扱うひと。
「隼人ってさ、ボクのこと女の子として見てないでしょ?」
変わらない関係と、変わりたい心。
「相棒」と「女の子」の間で揺れ始めた2人の天秤は――青春ラブコメディ、第5弾!


前巻から引き続き、2巻連続で春希と沙紀ちゃんの二人が表紙を飾ることに。
今回、田舎から隼人たちのいる都会に沙紀が出てきて本筋に本格合流してきたというのもあるんだけれど、思いの外予想外にこの娘重要なポディションであることの証左でもあるのでしょう、この作品にとって。
前回を通じて、沙紀がどれだけ引っ込み思案で自分を表に出すことに勇気を出さないといけないか、というのがよくわかっているだけに、彼女が勇気を振り絞って都会に出てきた、のみならず戸惑うばかりで慣れない都会の中、今までの自分の中の時間の流れと違う忙しないくらいの人との関係、騒がしいぐらいの多くの人達との関わり合い方に、臆して縮こまってしまったもおかしくないのに。
この娘はただ一度の勇気を出して、というのじゃなくて、ずっと一歩前に出て自分を隠さない事に頑張ってるんですよね。肝心の姫子は同じクラスになったけど庇ってくれたりフォローしてくれたりさり気なく支援してくれたり……なんて気の利いた事が出来るはずもなく、相変わらずの天然ムーヴでわが道を行くがまま、なんだけど、そのいつも通りの姿に沙紀も勇気づけられているのは、なんともほんわかした気持ちにさせてもらえます。この二人の親友関係って、ちょっとおもしろいですよね。
とはいえ沙紀の一生懸命さ、健気なくらいの頑張り方はきっと周囲にも伝わってると思うんですよね。
これは好感度あがるよなあ。
と、本人の頑張りによって学校での都会デビューはなんとか無事に終わり、中学と高校と通う学校そのものが違うものの、隼人や春希の生活のなかに無事沙紀も加わってくることに。
でも、そんな彼女の存在が波乱をもたらすことになるんですねえ。ただ沙紀と言う子が、家族でも分かち難い相棒でもなく、一人の女の子、大切な友人であるけれど異性であるという事実のみをもってして。
元々、前回の帰郷で沙紀と再会したときも、沙紀の「女の子」という立ち位置は隼人の親友であり相棒であるという立ち位置にしがみつこうとしている春希の「女の子」の部分を刺激し揺さぶることで、春希のアンデンティティをぐらつかせて不安定にさせる要因となっていました。
そのふらつきを補正して、春希を支えたのもまた沙紀だったというのが凄いところでもあったのですけれど。
でも、いずれにしても沙紀の存在は、都会に出てきて春希たちの日常に加わったことで、より刺激的に春希の女性としての意識を刺激する触媒になるんじゃないか、とは思っていたんですよね。
沙紀自身が隼人への恋心を自覚しながらも、それほど積極的にその恋心を成就させようとは思っていない、いわば見守る側のポディションに立とうとしていることからも、あくまでこれは隼人と春希の気持ちと関係の推移を主軸としていくラブコメだと認識していたんですが……。

……この分かち難い連理比翼のような相棒、無二の親友という関係について冷静でいられなかったのは、決して春希だけじゃなかったんだよなあ。
春希が見違えるような美少女へと育っていた、変化していたからこそ、隼人の中でもはるきの存在というのはどこか分裂してるんですよね。刹那的に「はるき」と「春希」を分けて考えて捉えてしまう瞬間がある。果たして、自分にとって彼女はなんなのか。
隼人にとっても、はるきという親友は本当に掛け替えのない存在なんですよね。不可侵神聖なる関係と言っていいかもしれない。それだけ大切にしているからこそ、彼女の事を女性として意識してしまう事に無意識にセーブをかけているような節がある。大切だからこそ必死に目を反らし、相棒という関係にこだわる。
でも、そのために春希のように他に解釈のしようがない、妹の友達で自分たちとも友だちになった後輩の「女の子」。そう、疑いようもないくらい「女の子」な沙紀を、隼人が女の子として意識しだしてしまうのは、考えてみると不思議ではないんですよね。
そして、隼人の側に沙紀を女の子として見ることを否定する理由も避ける理由もないわけで。
もやもやしている春希を飛び越して、隼人が一足飛びに沙紀のことを気になる女性という認識を持ってしまうとは思わんかった。
これは波乱としか言いようがない。春希としては自分の気持ちとばかり向き合っているわけにはいかなくなったし、隼人の方は逆に自分の中の思いについて後回しにしてはいられなくなった。いや、そこで後回しにしてしまってもおかしくないんだけど。背を向け続けるのなら。

さても怒涛のうねりを見せてきた幼馴染組の方の恋愛模様だけれど、それに負けず劣らず仮面のイケメン一輝くんの方も混沌としてきましたよね。
元から一輝のことを好きで、彼の内なる気持ちや素の顔を知っている最大の理解者でもある高倉柚朱先輩。そしてふとしたことから交流がはじまり、誰にも見せようとしない一輝の本音をあっさりと引き出してしまった三岳みなも。
なんか変な勘違いから、春希と一輝の関係を誤解している人もいるけれど、概ねここに姫子が当人の知らぬ間に加わらされて、一輝周りでも恋愛模様が混沌としはじめてるんですよね。
一輝くん、姫子に惹かれちゃってるのかー。
恋愛に対してトラウマに近いものを抱いている一輝だけど……姫子のそれは単なる無関心なんですよね。でも、そういう自分に関心ない態度にキュンキュンきてしまう一輝くんってば……。いや、自分に対しての態度だけじゃなく、姫子が垣間見せた憂い顔にズドンされてしまった、というのもあるんだけれど……姫子のダレも知らない失恋は当人にとっては地味にダメージ大きいけれど決して引きずるものでもないんですよね。でも、それを一輝はどこまで大仰に捉えているのか。
一輝と姫子は殆ど噛み合っているものはない。姫子にいたっては一輝のことを意識もしていない。でも、一輝が恋をしはじめているのは間違いないし、決して理解者だからといって恋人になるってもんでもないんだよなあ。でも、不思議と彼の最大の理解者はあの先輩だし、傷つきやすいこの少年の心に無自覚に寄り添っているのは、みなもちゃんなんですよね。
こっちも色々と錯綜してるなあ。
いやでも、なんか面白いぞ、こっちの方も!
お互い恋愛面では全く関係ない春希と一輝だけど、似た者同士、同じような他人との距離感の取り方をしている同族として、意識しないではいられない関係ではありますしね。ここの繋がりも案外と無視できない。一輝の隼人への沙紀に関する忠告は、的確なんてものではなくて隼人周りの関係が果たして一番何がどうなってどう危うくなっているのか、感覚的に一番把握してるの一輝なんじゃないか、と思えるほどでしたし。意外と一輝の周囲関係を近くで垣間見る機会がありそうなの春希なんですよね。ここの春希・一輝ライン、将来的に無視できない作用を起こすんじゃないかと思えてきます。