【恋は双子で割り切れない 4】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

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恋の答えは、もう保留できない。――すれ違う想い、夏。

那織を部屋に泊めたことが親にバレた! しかもあいつ、下着をわざと忘れて母さんの目につく場所に仕込みやがったっ!! いや、落ち着け。考えるんだ白崎純。明らかに疑われているが、実際そういうことはしていないんだから。

だがこの一件を知った琉実は言う。
「あの日できなかった続き、しよ?」

そして日増しに積極的になる那織。
「我慢出来なくなったって良いよ」

もう引き返せない場所へと踏み入ってしまった実感がある。だが僕はまだ、どう向き合うべきか答えを出せていない。
そんな中途半端な態度のせいで、那織と衝突して喧嘩に発展してしまう。琉実が仲裁に入ろうとしてくれるが、さらなる一波乱があり……?


いや、これは純くん苦しいよ。どちらを選んでも角が立つってどころじゃないもの。
どちらか片方を選ぶということは、もう片方を選ばないということ。以前、琉実と付き合ったときは決して那織に否を突きつけるわけじゃなかったですもんね。しかし、今回は双子の両方から好意を伝えられている以上、どちらかを拒絶しなくてはならない。
これは純だけでなく、那織も琉実も三人ともがなんだけど、この3人の関係をとても尊く大切に思っている。性格が正反対の双子だけれど、いつも喧嘩しているけれど、仲の良さはとびっきりだ。純にとって、この二人の仲の良い様子を見ている事は幸せの象徴だったんじゃないだろうか。それを、自分の選択によって決定的に壊してしまうかもしれない。
この好きという気持ちを押し通すことで、自分にとっての三人にとっての、2つの家庭における幸せを壊してしまうかもしれない。それを恐れるのは、当たり前なんだよ。
それはとても怖いことなのだ。

どちらかを選べ、なんて言うのは簡単だ。でも、どちらかを選んで、はい終わり。めでたしめでたし、じゃないんですよね。選ばれなかったほうが諦めて祝福してくれて、みんな幸せになりました、なんて事はないんだよ。無いんだよ。
本作は、そのあたりの選ばれなかった場合の痛みに対して、とても丁寧にアプローチしている作品だと思う。ハッピーエンドで蔑ろにせず、雑に片付けず、目をそらさずに常に直視してそこに焦点をアテて描いているんじゃないだろうか。
そもそも、それを怖れたからこそ琉実は、先制攻撃による奇襲の成果である純との交際を、自ら幕引く選択をし、那織もまたそれを受けて据え膳食うことなく、ちゃぶ台をひっくり返して三人の関係を一旦リセットしたんだから。

でも、好きな人を自分だけのものにしたいという独占欲がなくなっているわけじゃない。好きという気持ちを抑えられているわけでもない。三人でいつまでも仲良くしていたいという気持ちと、好きな人に自分だけを見てほしいという気持ち。その綱引きを自らの中でしながらも、この双子は勇気を出して踏み出してきているのだ。
そういう意味では、純はたしかに受け身ではありますよね。
見ている限りでは、琉実の方が若干恋愛感情よりも三人の仲が壊れないようにしたい、という想いの方が強いようにも見えるんですよね。弱気、とも取れるけれど、もし那織と純が付き合いだしても二人に対して今と変わりない距離感で居られるんじゃないか、と期待している。
それは、常から及び腰だった彼女の気質によるものだろうか。同類である那織と純の一体感に対して少なからず疎外感を感じ続けていた経験からくるものなのかもしれません。
能動的に関係性をコントロールしてきた経験のある那織は、その辺あんまり不安感は感じていないっぽいんですよね。まず自分という存在を純の最優先にすることを目標としていて、その結果起こる関係の変化については、琉実との仲が姉妹としてどうなるのか、純と姉がどうなるのか、についてはどうとでもするつもりなんじゃないだろうか、という節がうかがえるんですよね。
でも、那織って肝心な所でメンタル脆そうなんだよなあ。純に拒絶されたと思ってしまった時のダメージを見ると、わりとガラスハートでちょっとした事で打たれ弱さが垣間見えるんですよね。
なので、大丈夫か?と不安に思うところはある。これまでの実績があるとはいえ、はたして付き合いだした際に負けてしまった琉実をフォローしきれるのか。
コントロールしてきたのは那織かもしれないけれど、一番根底の所でそういう那織を受け入れてくれていたのは、琉実の器なんですよね。那織だから、仕方ないなあ、と色々と飲み込んできてくれたのは姉である琉実なんですよね……。
でも、その「姉」としての強さに頼られたことにこそ、今回傷ついているところがあったのがまた気になるんだよなあ。

どっちかを選ぶって、割り切るってことですよね……うん、その行為自体は割り切れた結果と言えるでしょうけれど、果たしてそれで収まるんだろうか。それで、本当に三人とも気持ち割り切れるの?
選択したことで、三人が抱いていた気持ちが消えちゃうわけじゃないんだよ? 関係を示す題目が変わったとしても、三人の内なる気持ちが変わったわけではないのだから。
理性で納得しても、頭でわかったつもりになっても、琉実だけじゃない。そんな琉実を間近で見続けることになる那織も、純も、周りの友人たちも果たして割り切ることが出来るだろうか。純も那織も、琉実を見ないようにするなんて絶対出来ないんだから。純だって那織だって、姉妹の仲の良さ、純と琉実の気のおけない睦まじさは、傍から見ていて好きだったはずなのだから。
三人で過ごす時間を、大切に思っていたのは一緒なんだから。
こりゃあ、まだまだ揉めるという形ではないかもしれないけれど、大波で揺れまくりそう。