【サイレント・ウィッチ IV 沈黙の魔女の隠しごと】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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学園祭で最大のピンチ到来!? 協力者たちも総動員で第二王子を守りきれ!

チェス大会での侵入者騒ぎをよそに、第二王子のお披露目のため学園祭は強行……そんな状況を不審に思いつつ、モニカは悪役令嬢や〈結界の魔術師〉と護衛計画を詰めていく。
しかし準備は万端かに思われた当日の朝、七賢人〈深淵の呪術師〉から学園に呪具が紛れ込んだと報せが舞い込む!
殿下の護衛、呪具の回収、正体の秘匿――モニカにとって最初で最後の学園祭を無事に乗り切ることはできるのか!?
魔女最大の危機に協力者が集結する、極秘任務・第四幕!





今回はシリル先輩の魅力満載だったなあ……。
この人ねえ……かわいい人ですよねえ。冷たい氷の生徒会副会長。いや、第二王子への忠誠心こそ高いものの、いつもカリカリしていて余裕のない気難しい堅物の青年という印象でそれは間違っていないんだろうけれど。
彼のどこか窮屈な生き方はそれだけ一生懸命とも言えるんですよね。彼の生い立ちを知ってしまうと、その一生懸命さは健気さだとわかってくる。彼の厳しさは一番自分に向けられていて、わかりにくいけれどむしろ周囲に対してはとても気配りしていて、シリル先輩の優しさが滲み出てるのが伝わってくるんですよね。
義妹のクローディアにはシリルはもっと色々と思う所あると思うのだけれど、学園祭で忙しいニールと逢瀬できるように手配りしたり、自分を拒絶した実の母に対しても恨みに思わず一心にその安らぎを願っている。そうした献身的な振る舞いの一方で、母に手紙を送っているようにどこか愛されたいという本心を押し殺せずにいる。でもそんな弱さを見せまいと一心不乱に邁進する姿はとても頑張り屋で……。
ポンコツなモニカに対してはもう口うるさく叱責しながらも、甲斐甲斐しいくらいで。それだけなら不出来な後輩を心配する面倒見の良い先輩で済むんだろうけれど、そこに垣間見える不器用な、触ったことのない壊れそうなものをでも手に取らずにはいられないという、怖れと覚束なさおっかなびっくりの臆病さすら感じさせる様子で、でもモニカに手を差し伸べる姿はシリル自身が自分の気持ちに気づいていない、わかっていない無自覚さも相まって、なんか無性にかわいいんですよね。
青年に対してかわいいというのはアレな感想かもしれないけれど、何とも母性本能を擽られるといいますか。繊細で脆くて、でもきっと靭り強いだろうと想像させられるその人柄。
幼い頃に傷ついた心をかばいながら生きる姿は、どこかモニカにも重なる所もあるんですよね。
今、この学園ではじめて自分の意志で立ち、頑張るモニカにとってはシリルは先達としてどこか親近感と自分の先を行く人としての憧憬、尊敬みたいなものを感じているのかもしれない。シリルもまた、最近の頑張るモニカに対して過保護なくらい心配して、見守らずにいられないのはやっぱり自分に似たものを感じたからなのかもしれない。そして惹かれていく気持ちにも……。
今、モニカにとって一番心の距離感が近いのはシリル先輩なんじゃないかなあ。
これを見て、気づいてしまったフェリクス王子の複雑な心境には、明らかに嫉妬が混じりつつも、やっぱり何かぐちゃぐちゃに入り組んでて、彼の闇の深さを想像させられます。
段々と明らかになってきた第二王子にまつわる真相、ようやく幾つかの仮定が導き出されるくらいの情報が集まってきたけれど、これは相当にヤバい案件だよなあ。
前回のフェリクスが垣間見えた素顔というのは、本当は絶対に見せてはいけないものをモニカには見せてくれたんじゃないだろうか。それだけ王子にとってモニカという存在が特別になりつつある、というのが今後、どれだけ影響出てくるのだろう。
モニカからのラインが王子だけならばまだ穏当というか、真っ当に進んだ気もするのだけれど、ここでシリル先輩とのどこか深い所で繋がった関係が生まれつつあるのを見ると、なんか混沌を極めそうなんですよねえ。粘度が深まりつつある?

しかし、今回明らかになったシリル先輩の過去も重いものでありましたけれど、モニカのそれは想像していた以上にヘヴィでした。いや、父が処刑されたあとに引き取られた叔父の所で虐待を受けて精神的外傷を負っているらしきことはわかっていたのだけれど、実際の様子を見るとこれ殆ど精神崩壊レベルまで壊れちゃってるじゃないですか、一度。
そう考えると、ミネルヴァ校で仮にも友達が出来るまでに人間に戻れていた、というのは叔父から見受けしてくれたエヴァレット夫人たちの献身的な努力がうかがえる。よほど愛情深くモニカのことを育ててくれたんだろうなあ。
そう考えると、今のモニカを温かく見守ってくれている人が思いの外多いことに気付かされる。恩師たちもわかって黙っていてくれているみたいだし。イザベルたちケルベック伯ノートン家の人達の困ったときにはサッと現れて行き届いたサポートをしてくれるあの支援っぷりはお見事というほかなく。いや、なんであんな悪役に拘りがあるのかわからないけど。イザベルだけが悪役令嬢にノリノリなのかと思ったら、一家揃って悪役にハマってるのはなんともはやw でも、尋常じゃなく頼もしいんだよなあ。
ついに同僚のルイスにもモニカが変わりつつある事が発覚してしまいましたけど、モニカの事を人でなしと見做していた彼も、さすがに人らしくなりつつあるモニカをもとに戻そうとか考えるような外道ではなくて、ちょっとホッとした。別にどっちでも良い、という突き放したスタンスはなんかもう好きですらある。あの性格の悪さはなんか清々しいすらあるなあw
今まで生徒会のメンバーの中で唯一不気味な沈黙を続けていたブリジット嬢が、ついにその目的らしきものを見せ始めたことで、不穏な空気が加速していってますけれど、いやはやこれは面白くなってきた、と言ってしまっていいんだろうか。なんか今からハラハラしてきたんですが。