【璃寛皇国ひきこもり瑞兆妃伝 2 日々後宮を抜け出し、有能官吏やってます。】  しののめすぴこ/ toi8 カドカワBOOKS

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貴色とされる黒髪を隠し、後宮の妃と官吏の二面生活を送っていた紗耶(さや)。所属する戸部――財務を管理する部署に、事故が原因で減俸や降格処分になる兵の報告が相次いで届き、調査を開始する。

一方後宮では、よく当たると噂の花茶占いが大流行。占いに傾倒する妃たちの話から、兵の減俸急増と占いに関係があるのではないかと気づいた紗耶は、占い師に直接会って真相を暴くため祭事に出席……皇帝・暁雅(ぎょうが)の隣に妃有力候補として侍ることに!?



一縷くん、この子ほんとイイ子だなあ。
こういうヒロインに侍る守護獣的な子ってヒロインにべったりで、そんな彼女とカップルになる相方の男性に対してはなかなか厳しい態度を取る子が多いのですけれど、一縷くんは暁雅陛下に対してめっちゃ優しいんですよね。むしろ当人たちよりも周囲の誰よりも紗耶のパートナーは暁雅だと認めている節がある。認めてるっていうか、めっちゃ応援してくれてないですかね、一縷くん。ヘタレな暁雅くんを気遣いながらも後押ししてくれている節すらある。優しい、めっちゃ優しいよ!
陛下の紗耶への気持ちを知りつつ、じれったいのを見守って娯楽として楽しんじゃってる側近の戸部尚書の性格の悪さと比べると、染み入る優しさじゃないですか。
てか戸部尚書、幼馴染な上司で遊んでる場合かw

にしても、暁雅陛下、ヘタレである。敢えていおう。ヘタレであるw
いや、わかるんですよ。自分が日輪の君として国の瑞兆とされる以上、正妃には月輪の君と呼ばれる存在を迎え入れないといけないのだから、幾ら自分が好きだからといって何の後ろ盾もない下級妃の紗耶を正妃にするのは難しいというのは。難しい難しい、と思いながら5年間も未練がましく保留しつつ戸部侍郎として働く紗耶の元に昼間時間があったら通い詰めて、雑談するのを唯一の楽しみとしつつ、ソレ以上はどうにも踏み込めなくて、ずっとぐだぐだしてるの。ほんともうなんというか焦れったい。未練がましいのか諦めが悪いのか。
結局、今年の納涼祭についても自分からはちゃんと誘えず、そのわりにいつも官吏としても妃としても参加しない彼女に対して、今年は出ろよなあ、と敢えてどっちの立ち場で参加しろとは言わずに未練がましく促しつつ、でも結局皇帝という立ち場からはちゃんとアプローチ出来ずにぐだぐだしているの、ここまでくるとなんかもう可愛らしくすらなってきます。
うん、そう。この男の人ヘタレなところが凄く母性本能擽られる的な可愛さがあるんですよね。皇帝としてはとんでもなく文武に有能だし、男性としても気遣い上手で紗耶に対しても気を使わせずお互い素でダベリあえる関係を構築しながら、一方で妃としても官吏としても紗耶が好きなように自由に出来るように手配りしていたり、と公私にわたって行き届いてるんですよ。ああ、本気でめっちゃ紗耶の事好きで好きでたまらんのだなあ、というのが伝わってくるのに、かなり漏らして溢れさしちゃっているのに、イマイチ思いきれずに不器用に持て余しちゃってるちょっと情けない姿が、偶に頑張ってアプローチしてみても見事にから回る姿が、何ともかわいくて仕方ないんだよなあ。
一縷じゃないけど、陛下がんばれー、がんばれー、と応援したくなってしまいます。
しかし、結局自分から誘えなかったのに、色々な事情から紗耶が自分から納涼祭に参加した挙げ句に一番近しいパートナーとして皇帝の傍らに侍るポディションで正装して着飾った紗耶が現れたのを目の当たりにした時の、彼の内心の動揺っぷりには苦笑してしまいました。
しかし紗耶さん、官吏としてもフットワーク軽いわ視点が俯瞰的に国家的なマクロなところから、身近なミクロな点まで柔軟かつ縦横にわたって見られ、対処できるのはほんとに出来る女性なんだなあ、と感心させられます。戸部という省庁だけの観点にとどまらずに、いろんな立ち場から物事を捉えて発想を巡らせることができるのは、官僚としての範疇に留まらない才覚の持ち主と言えるのかも知れません。それこそ、天下国家を論ずることが出来るのは、政治家……言うなれば皇帝と同じ視野と視点の高さで語り合えるということなんだよなあ。
紗耶は今以上に、暁雅のこと手助けしてあげたいなあ、と漠然と考えているようだけれど、今以上に彼のことを支えてあげられるとするならば、公にしても私にしても相応しいポディションというのは自ずと定まってくるんですよねえ。
そして、今までは官吏としての才覚を見てきましたけれど、今度の納涼祭で紗耶は本人意図してなかっただろうけれど、見事に妃としての圧倒的な存在感を周囲に示してみせてくれたわけです。
これまで引き籠もりで殆ど表に出てこず、陰口を叩かれるばかりだった紗耶がその美貌と風格を見事に見せつけてくれたんですなあ。威風堂々とした皇帝陛下の隣に座る正妃に相応しいだけの存在感を。
思いの外、上位の妃たちが紗耶に対して好意的だったんですよね。これも意外でした。まあ5年も保留されてたら、陛下にはお目当ての相手がいるんだろうな、とわかるでしょうし。
特に一番上位の蘭月さまという人は、どうやら暁雅くんの時間稼ぎにわざわざ付き合ってくれて相手役してくれたみたいですし。って、暁雅くんこれは本気で感謝せなあかんぞ。なんか蘭月さまって恋愛感情は完全に皆無で、思いっきり暁雅のお姉ちゃん枠みたいなんですよねえ。
今回、紗耶に納涼祭での皇帝陛下の隣の席を用意して、色々と後押ししてくれたのもこの人だったみたいですし。そう考えると、わりと外堀は順調に埋まってっているんだよなあ。

そして、ラストについに発覚した、というか暁雅が知ってしまった紗耶の地毛が実は黒という事実。ってか、知らんかったんか、暁雅くん! あ、そうかー、知らんかったんかー。
まー、紗耶もこれいつまで隠せるつもりだったのか。元々、日本で金髪に染めてた髪が伸びてきて頭頂部から段々とプリンになっていき、今となっては黒髪の部分だいぶ伸びてきて、いい加減そろそろ帽子と織り込みでも隠しきれなくなっていたはずなんですが。どう考えても、あと数年もすればいやもう無理だろうって所まで黒髪伸びちゃってただろうし。このあたり、紗耶って思考停止してたんじゃなかろうか。考えても仕方ないっちゃ仕方ないのだが。
ともあれ、これで事実上、月輪の君として紗耶を選ぶのに何の問題もなくなっちゃったわけで、ヘタレの暁雅がどうしても踏み切れなかった、思いきれなかったハードルがこれで取っ払われちゃったのですから、さて暁雅くんとしてはどうするんでしょうねえ。これで、堂々とアプローチできる……んなら、こんな焦れったい事にもなっていなかったと思うのですが。