【この△ラブコメは幸せになる義務がある。2】  榛名千紘 /てつぶた 電撃文庫

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「邪魔なんかじゃない。だって、私も麗良も、あなたのことが……」

幼馴染同士の凛華と麗良。その二人ともから好意を向けられているとも知らず、仲を取り持とうとする天馬。
そんな奇妙な三角関係が日常になっていた矢先、麗良が生徒会長選挙に出ることに。これは二人を近づけるチャンスだと、凛華を応援演説に推薦するが……。
「麗良の家、矢代と一緒にお邪魔するわ!」
「はぁん!?」
やっぱりポンコツ美少女・凛華は天馬を巻き込んで……!? そこで天馬は麗良にも、とある『秘密』があることを知り……。
ラノベ史上もっとも幸せなトライアングルラブコメ、早くも波乱の第2弾!

「……紳士協定、破っちゃったかもしれませんね」


今回は麗良にスポットを当てたお話でした。一巻で彼女ともう一度仲良くなりたいと奮闘する凛華の傍から天馬が見ていた麗良はいつも余裕があって色々とお見通しな安心安定の優しくも頼もしいくらいの女性に見えたのですが、いざ麗良の側に踏み入ってみるとどうしてどうして。
当たり前のように頑張り屋で責任感が強くて一生懸命な彼女は、とても余裕なんてなくて切羽詰まったギリギリをそのスペックで綱渡りしているような不器用な子でした。いつも誰かに手を差し伸べる彼女は、誰かから手を差し伸べられることに慣れていない、ついつい一人で全部やってしまおうとする決して人との接し方がうまいわけではない娘でした。
そうですよね、本当にコミュニケーションの鬼なら、凛華とあんな風にすれ違って疎遠になりそうになってないわなあ。凛華も大概人付き合いが下手くそな娘でしたけれど、ある意味素直な娘でもありました。取り繕うのがうまい分、麗良は誰にも気づかれずにどんどん勝手に追い込まれちゃう娘だったんだなあ。
そんな彼女にとって、いつもスルスルと無理なく傍に寄り添ってくれて、さり気なく助けてくれる天馬の存在にはやくから惹かれていたのも、これならよくわかります。
今回は凛華と麗良の仲を取り持つためという動機もあり、また麗良の生徒会選挙の手伝いをするため、と積極的に天馬としても自覚的に麗良をサポートし助けていくことになるので、余計に麗良にとっては天馬の存在を意識してしまう契機には十分だったのでしょう。

とはいえ、天馬は麗良からの好意も、凛華に芽生えた想いもまったく眼中にないんだよなあ。
まず可能性として示されても否定から入るから、選択肢が生まれないのである。彼にとっては、自分が二人の女性からトライアングルの一角に据えられていると、認識もしていない。自覚もしていない。想像すらしていない。これでは、現状トライアングルは存在していないと言って良い。
今のところ、天馬って麗良の事も凛華のことも異性として好意を抱いているような気持ちは全然見当たらないんですよね。彼女らの事は尊敬しているし憧れている。その人格、人間性に好感をいだき、敬意をいだき、眩しいものとして崇めてすらいるかもしれない。そんな彼女たちの手助けを少しでも出来ることに喜びすら抱いているだろう。でも、彼女らの気持ちについては本当の意味では見ていないんですよね。見ようとしていない。それを無視している、なんて言ってしまうのは流石に言葉が強すぎるかもしれないけれど。
そういう意味では、麗良の最後の行動は強烈でしたが、強烈だからこそ最高に効果的だったんじゃないでしょうか。あそこまでされたら、もう絶対に無視できない。意識すらしてもらっていない相手に対して、これ以上なく意識を植え付ける事のできる好意でしょう。お前はもう、トライアングルの舞台の上に立っているんだ、という自覚を促すことになる。
彼に自覚してもらわなくては、そもそもこの三角関係をどのように育てていくのか、どう決着をつけるのか、それを決めるために揉めることすら出来ないですからね。
凛華さんもしきりにアピールはしていましたけれど、あんな曖昧な態度ではこの朴念仁にはなんにも伝わらないですから。
麗良にしても、凛華にしても、まず天馬に自分たちを好きになって貰わなければ話が始まらないのである。

個人的にはこうなる前に、この3人ならではの関係というのを構築してほしくはあったんですけどね。三人で一緒にいるのが自然で当たり前で、必然であるような不可分の三角関係。でも、そんな三人ならではのエピソードは乏しい侭、主人公↔ヒロインというラインばかりが強化が図られてしまったわけです。三角形の一角である麗良を掘り下げて、主人公の天馬との関係を深めていって、というのはラブコメとしては常道なんですけれど、でもそれって普通のラブコメの話の流れ以上の何者でもない、とも言えるんですよね。凛華は裏方に回って目立つことなかったですし。麗良と凛華のラインも強烈なインパクトはなかったですしねえ。
そういう意味では、本作ならではの特色というのが一巻よりも薄れていた印象もあります。
ラストで大きく麗良が物語を動かしにきたことで、ようやく△な関係もはじまりの号砲を鳴らせたとも言えるので、次からこそ本番だと期待したいところですね。

あと、辰巳くんはあれいい趣味だと思います。一途だけど素がチャラいあのキャラクターって、結構年上の女性からするとハマるタイプの男の子なんじゃないかな。やたら、先生が彼のことを毛嫌いというか過剰反応してたのも、ハマるとヤバいという感覚をどこかで感じていたんじゃないかなあ、なんて思ったり。あれは、早晩墜ちますよ!