【その着せ替え人形は恋をする 1】  福田 晋一 ヤングガンガンコミックス

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クラスのギャルと秘密の関係…?

いつも友人の輪の中心にいるギャル系美少女、喜多川海夢。
クラスメートの五条新菜は、彼女を“別世界の人間"だと思っていた。
雛人形の頭師を目指す新菜が、放課後被服実習室で作業していると、そこに現れたのは…
まさかの…!?
二人のドキドキ山盛り☆コスプレ・スクールライフが始まる!!


アニメから。うん、アニメは文句なしの傑作でしたけれど、マンガもなるほど面白い!
にしても、漫画見てもこの喜多川海夢という娘の人物造形は何とも凄い。いやあこの特異な娘をよくまあああも見事に演じてみせたなあ、中の人。難しかったと思うよ、絶対。それをあれだけの唯一無二の喜多川海夢を演じて創り出してみせたんだから。大したもんである。

この娘はなんだろう……無敵?
後々見ても前向きさが尋常じゃないんですよね。自分の道というものを完全に確立していて、外部から何言われてもブレないし動じないようなぶっとい芯が通ってる。周りの目を気にしないし、何言われても関係ない、みたいな。
いやもう、なんでこの娘、ギャルになったんでしょうね。どういう経緯があってギャルに至ったんだろう。これだけどっぷりとオタクロードに沼っていると、一心不乱にそっち方向に首まで浸かっててもおかしくないんだけれど、併存してギャルとして自分を磨きファッションに通暁し同じギャルの友人たちと世界観を同じくしている。
……時間なんぼあっても足りないんじゃないの? 勉強してる!?
どうやらギャル友の中にはオタク友達はいないっぽい。それどころか、趣味を同じくする友人自体がいなかったんじゃないだろうか。ギャル友達はマリンの趣味にとやかく言わないイイ娘たちみたいだけど、だからと言ってその趣味に付き合ってくれてるわけじゃないみたいなんですよね。
ずっと一人で趣味の世界に邁進してきたんだろうか。ギャルの世界だって色々忙しいはずだし、友人たちのお誘いも事欠かなかっただろう。趣味の時間を確保しながら、それらを捌くのは大変だったはず。そして趣味を共有してくれる友達が居ない以上、それは自分ひとりで没頭しなくてはいけない。
まあ好きならね。独りというのは気にならないかもしれない。彼女から孤独感や疎外感みたいな後ろ向きな感情を垣間見たことは一切ないし、その残滓を纏わりつかせている様子も伺えない。真っ直ぐに前を向いて、好きという気持ちに全身全霊を捧げて一心不乱に突き進んでいる。
でも、何も感じてないわけじゃないと思うんですよね。でなかったら、五条くんがコスプレ衣装を作る手伝いをしてくれることになっただけじゃなく、自分の勧めた作品を見てくれて受容してくれただけであれほど喜ばなかっただろう。
わりとちゃんと礼節心得てるマリンが、矢も盾もたまらずアポも取らずに五条くんの家に押しかけてしまったのは、衣装を作ってくれるという嬉しさだけじゃなかったはずだ。独りだった趣味の世界の事を一緒に話せる、一緒に共有できる、この喜びの抑えられなさが彼女の弾け飛びそうなテンションの高さからもうかがえる。
この時のマリンのテンションってなかなかついていきづらいくらいの勢いがあったはずなんですけれど、ひたすら真面目に対応する五条くんなんですよね。この男の子は男の子で、マリンの事他と比べたりとかしないんだよなあ。自信を持てず友達もおらず彼は彼で自分の世界に引きこもって内向きに過ごしてきた子だけど、一方でマリンとはまた別の形だけど自分の世界を確立している子なんだな、というのが彼女との一連のやり取りで伝わってくるんですよね。
マリンの事、自分と比べることはあっても、他人とか世間一般とかと比べることはない。彼女と自分が関係している事自体に引け目を感じてしまって臆することはあっても、マリンの性格や趣味やギャルとしてのあれこれや、そういう彼女に対して一切ごちゃごちゃ言ったり考えたりはしないんですよね。
こういう所、彼は彼で一本芯が通ってるなあ、と思うんですよ。
決してマリンがひたすらグイグイ押して、五条くんが押されるがままになっている、という合致の仕方ではないようにみえるんだよなあ。お互いのブレないところ同士が噛み合って、奇跡のマリアージュになっている気がする。勿論それだけじゃなく、お互いの一番大事にしている所を肯定しあい、お互いの中に尊敬を見出している部分がわりと最初の方から垣間見えるんですよね。
面白い。
とはいえ、五条くんの人と付き合うことへの慣れなさがトラブルをもたらす、というか背負い込むことになっていくわけですが、それは次巻以降に。