【その着せ替え人形は恋をする 2】  福田 晋一 ヤングガンガンコミックス

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ギャルと初めてのコスプレ撮影…☆

雛人形の頭師を目指す主人公、五条新菜は、クラスのギャル、喜多川海夢のコスプレ衣装を作る事に。
しかし…タイムリミットはたったの2週間!?
乗り越えた先に、海夢の笑顔があると信じて――
新菜、試練の刻!!
コスプレ活動本格始動でドキドキも大増量の第2巻!!

衣装作成の締切を勝手に勘違いして、おまけに祖父の怪我による入院と仕事場の見学などが重なり、完全にキャパシティがオーバーしてしまい限界に達してしまう五条くん。
こういう時って頭の中ネガティブに染め上げられちゃうんですよね。出来ない自分を責めてしまう、未熟な自分が許せなくなる。周りに責任をおしつけるのではなく、ひたすら内省的になるのは五条くんらしいなあ、と。
でもそこで心折れることなく、泣きながら歯を食いしばって衣装の制作を続ける五条くんの姿が本当に尊い。あの顔を歪めて涙をこぼしながら道具を手繰り寄せて生地に立ち向かう彼の姿は、これをこそカッコいいというのだろう。
その原動力は衣装を作る事への好きという感情。そして、これを待っている人への喜んでほしいという想い。彼にとってコスプレ衣装の制作というのは頼まれたから、という受動的なものだったはずなのだけど、この時にはもうコスプレ衣装の制作は五条くんにとっても彼自身のやりたいことになっていたのだろう。
そして、彼の仕事への向かい方のブレイクスルーとなる出来事でもあったんじゃないだろうか。

本人の意図しない五条くんの方の勘違いからとはいえ、彼に多大な無理を押し付けてしまった事にマリンが申し訳無さのあまり泣いちゃうのも、また彼女の人となりが伝わってくる良いシーンでした。
五条くんを振り回して引っ張り回すことが多いマリンですけれど、決して相手の事を何も考えない自分本位の娘ではない、というのがよくわかるんですよね。むしろ、思いやりがあり丁寧に慮れる娘だというのが伝わってくる。あっけらかんとしていつも前向きで物事を悪い方に捉えない、堪える姿を見せない彼女がこんな風に泣くのは珍しいだけに、彼女の優しさがわかるんだよなあ。
でも、ちゃんと完成した衣装にテンション目一杯あげて、はしゃぎまわることでこれ以上無く嬉しさを、喜びを五条くんにダイレクトに浴びせにかかるの、この娘の素敵なところですよ。
作った甲斐があるってもんだ。製作者としては、これ以上無いくらい嬉しい反応ですよ。五条くんとしては、こうして喜んで欲しいからこそ頑張ったわけですから。
この件は、お互いの心の距離感の最後の隔たりを埋める結果になったんじゃないでしょうか。隔たりというほどのものがあったかはわからないけれど、少なくともマリンにとっては五条くんは無上の信頼を寄せるに足る相手だというのを、今までまだ見えなかった彼の奥深い所を見ることになった一件だったように思う。

まあ、まさにそのタイミングで致命の一打を五条くん側から打ち込んできたわけですが。
はじめてのコスプレイベント。ふたりとも初体験の連続の中で目一杯楽しみながら、慣れない故の問題に行き当たりながらも、一日を堪能しきったその帰りがけに掛けられた五条くんの一言。
彼の人となりを知って、彼の芯とも言える部分に触れて、彼がどれだけ自分の中に置く基準を大切にしているかを理解したその矢先で、あの一言ですからねえ。
うははは、バチっとスイッチ入っちゃったなあ。五条くんも自分の衣装を来たマリンの、イベントでのあの笑顔に思いっきりやられてましたし。うん、お互いの琴線への触れ方が実に素晴らしい。