【ロード・エルメロイII世の冒険 4.錬金術師の遺産(上)】  三田誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「ファラオの密室殺人事件、というわけか」

 日本での事件の後、エジプトへと誘われたII世たち。
 彼らを待っていたのは、遥か昔に失われたはずの、もうひとつのアレクサンドリア大図書館。そして、その大図書館を探索せんとする、時計塔とアトラス院の合同発掘調査団であった。
 大図書館で起きた奇妙な事件を解き明かすべく、エルメロイII世とグレイは探索に加わることを決意するのだが――。一方、エルゴたちの前にもアトラス院の年若い錬金術師シオンが現れていた。

 海と砂漠、神代と現代とが交錯する『ロード・エルメロイII世の冒険』第四巻!

年若いって……若いどころじゃないじゃない! これは幼いって言うんだよ!
TYPE-MOON作品ではおなじみ、シオン・エルトナム、ここではソカリスを名乗ってますな。アトラスの錬金術師シオンの登場である。
が! 今までのシオンと最も異なっているのはその年齢! エルゴの目から見ても10歳に満たないじゃないか、という少女以前の幼女の姿で登場。いや、これまでシオンはどの作品でも大体10代後半から20前後あたりのまあ少女と呼んで然るべき容姿で登場してきましたからね。
さすがに子供先生での登場は予想外でした。既にこの年でエーテライトを縦横無尽に使いこなして他人の脳をハックしているので、実力に関しては遜色ないのですが……って、改めて読んでみるとエーテライトめちゃくちゃヤバいな! 脳ハックってなんだよ!? 動きを完全に乗っ取るわ、考えている事を読み取れるわ、と効力が尋常じゃないんですが。
性格の方はFGOにて登場したシオンの陽の者とは違って、月姫・メルティブラッドの方に登場したどこかマシンめいた冷静さをまとうクール幼女であります……が! が! が!

……あ、この子。このシオン、ポンコツだw

うん、その歳でアトラスでも一目置かれていて、既に天才の名をほしいままにしているのも納得の腕前であり、賢明さであり、実際有能極まる切れ者なんだろうけれど。アトラスで監査なんかやってるだけあるんだろうけど。
なんかすげえポンコツ臭がするぞ、この子!
なんていうんだろう、分割思考なんかを駆使して大変頭の回転が速いんでしょうけれど、入手する情報に対しての分析力が……思いッきり的を外しまくってるんですが!? 特にロード・エルメロイ二世に対しての解釈が実像に対して明後日の方向なんですけど!? いやまあ、何も知らない人が彼のその実績だけを見せられたらコイツはトンデモナイ策士で陰謀家で油断ならない切れ者だ! と思うのも無理からぬ所かもしれないけど、実像のロード・エルメロイ二世を知っていると誰のことそれ??? となってしまう分析をしちゃっている時点で、自分の想像の範疇でしか物事を解釈できない未熟さ、幼さを露呈してるんですよね。
ただこれ、経験不足から来るものなのか、それとも肝心なところで天然入っているポンコツなのか。絶対後者じゃないの、これ? この娘なら、将来なんやかんやで予定外予想外を連発しまくった挙げ句、路地裏でのホームレス生活に突入してしまっても全然不思議じゃない、納得ですわ!
まさにこれぞ、シオン・エルトナムって感じですわ!

と、あまりにもシオンがおもしろシオンだったんで、興奮してしまいましたが、物語としてもエルゴ誕生の核心に迫る展開に、新たな時計塔のロード・考古学科のどこかエルメロイ二世とは違う意味で気弱で威圧感がなくてロードらしからぬ、でもきっとロードにふさわしい何かを秘めているロード・カルマグリフの登場など、色々と見どころの多い転換点でありました。
カルマグリフ、イラストだけ見ると優男風のキレのあるイケメンなんですよねえ。話を読んでいると穏やかでもっとヘタレっぽい感じなんだけど。
ってか、今回の登場人物みんな名前長くないですか!? 全員ミドルネーム付きですし。いや、まあライネスもそう言ったら長いんですけど。
古のイスカンダルの時代に海中に沈められた、もう一つのアレクサンドリア図書館。海中遺跡というわけでもワクワクしてきますけれど、さらにそれが失われたアレクサンドリア図書館の封印されたもう一つの現存する遺跡というだけで、もうねえ。
しかも、その管理者としてファラオ・プトレマイオス一世まで。当人そのものではないとはいえ、意識としてはほぼプトレマイオス当人。って、アッドのベースである円卓の騎士のケイ卿といい、サーヴァントではないのにご当人そのものに近い歴史上の偉人が結構登場しますよね、本作って! 
アレキサンダー大王の軍勢って、十把一絡げにするにはほんと一人ひとりが歴史上の偉人ばっかりなんだよなあ。
そして、古の時代を知るプトレマイオスだからこその、彼の口から飛び出した予想だにしなかったエルゴの正体。いやー……これはこれはさすがに全然まったく予想もしてなかった。彼が赤毛なのって、最初はむしろ衛宮士郎と被らせているのかとも思ってたんですよね。遠坂凛が本格的にレギュラーとしてシリーズに参加するのに合わせて。まあ特に凛はエルゴを見て士郎を重ねたりとかは全然しなかったんで、そのまま忘れてたんだけど。

と、お話の方もシリーズの方は「冒険」に移ったにも関わらず、今度は「ファラオ殺人事件」と事件簿みたいに、とはまたちょっと趣向が違うのだけれど、不可能犯罪的な謎に先生、挑むことに。
誰も到達していない遺跡の最奥。未踏破領域に眠るファラオの心臓が盗まれた。犯人は、時計塔とアトラスの合同探索チームの中にいる。さあ犯人は誰だ。……いや、ほんとにこのメンバーの中に犯人いるの? とそこから疑ってしまいますよね。魔眼列車編では完全に騙されましたしねえ。
さて、今回から久々にライネスが合流。久方ぶりに、と言っても作中ではそこまで時間経ってないはずなんだけれど、ライネスの顔を見た途端に駆け出して抱きついちゃうグレイさんが尊いです。
この娘、巻を重ねるごとにライネス好き好き度が跳ね上がってやしないだろうか。ライネスはライネスで、普段の性格の悪さはどこへやら。グレイに対してだけはダダ甘も良いところだもんなあ。
この二人がイチャイチャしているのを見ると、何とも癒やされます。