【転生王女と天才令嬢の魔法革命 5】  鴉 ぴえろ/きさらぎ ゆり 富士見ファンタジア文庫

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ユフィと視察って、新婚旅行みたいなもんなんじゃ?

アニスの魔学に必要不可欠な資源――魔石。未開の地が多い東部に多く眠っているため、ユフィとエアバイクで視察に行くことに――これって、新婚旅行じゃ? 想いを確かめ合った二人の王宮百合ファンタジー、第五弾!


アニメ化おめでとうございます。この作品がアニメ化のターゲットになるのは、ちょっと予想外だったなあ。やるとするなら、どこまでだろう。2巻が切りが良いといえばそうなんだけど。

さて。ユフィさんですが、どんどんとドSになっていくじゃないですかー。主導権握っているの、完全に女王様の方だなあ、これ。
新婚旅行みたい、と思いつつもいざイチャイチャしようとしてもヘタれてビビるアニスを、ユフィが余裕たっぷりにチュッチュパクパク食べちゃうの、最初の頃の関係を覚えてたら信じられないよねえ。
アニスの代わりに女王座に就くために自分からあれこれと暗躍しだしたときから、アニスとユフィの力関係ほぼ決まっちゃったんだろうなあ、これ。
あのアニスに首輪つけちゃったんだから、大したものである。ユフィ出し抜いて暴走とか、もうアニスさんには出来ないでしょうねえ。そっち方面に関してはもう役者が違うってくらいにユフィの政治政略手腕が尋常でないものになってしまった。
アニスについては、自分が動いてどうにかなること。魔学の研究や冒険者活動なんかはとかく暴走しがちでガンガンいこうぜ、な傾向なんだけれど、ことが人間関係となると途端にヘタレるのはもう周知のこととは思いますが、ユフィが強くなってアニスの意向はとりあえず無視してでも背中押して場をセッティングしてくれるこの押しの強さは、こうなってくると頼もしいですよね。
ユフィも散々イラッとさせられた経験が後押しになってるんだろうなあ。
特に大事な人に対しての距離感に関しては及び腰になりがちで、家族と何だかんだと距離を置きがちだったのも今になって思うと、ちゃんと腰据えて向き合う勇気がなくて逃げ回ってたんだなあ、というのがよく分かる。王女として政治とか出来ないからー、と逃げ回ってたアニスだけど、それらの件を含めて家族とちゃんと腹割って話し合う場からも逃げ回っていたとも言える。それが募って、家族としての当たり前の会話も少なくなっちゃってたんでしょうね。自分の母親である王妃さまについてですら、いつも説教してくるからと逃げ回って、普段の母の様子とか食べ物の好みとか当たり前の事も知らないくらいだったんですよね。
なに話したらいいかわからないよ、という弱音吐いちゃうくらいですもんねえ。
そして、その逃げ回る最たる相手が弟のアルガルドだったわけだ。幼い頃は仲良く一緒に遊んでいた二人が疎遠になっていったのは、アニスが王位継承者であるアルから距離を置き、政治の場からも離れることで貴族間のパワーゲームを沈静化させて、アルと自分の身の安全を図る意図があった、というのは理由としては十分かもしれない。でも、何の話もなく急に距離を置いてしまった大好きな姉の態度に、弟がどれだけ傷ついていたのか、お姉ちゃんは知る由もなかったんですよねえ。
その一方的な態度は、弟と向き合うことから逃げてしまったのと同じ、と言っては言い過ぎだろうか。

そして、ユフィの配慮によって東部地域視察の〆でアルが押し込められている領地を訪れ、弟と再会することになった際も、結局アニスはアルと向き合えずに俯いたまま逃げ回ることになる。
って、逃げんなよ!w
縁あってアルのところに居候しているリカント族のアクリルちゃんが、激怒するのも無理ないよ。この期に及んでヘタれるなし!
アニスとアル、二人は一応アルが起こした事件を解決した際にお互いの思いを打ち明けあい、お互いを許しあい、仲直りはできたのでした。あれを仲直りというのなら。
アニスにとっては後悔ばかりが残る結末で、アルにとっても積年の負の感情から解き放たれたとはいえ、残されたものは何もない虚ろの終焉でした。
和解、というのはお互いに譲歩しあって争うことをやめるだけのことで、決してその間にあるわだかまりとか悲しみだとかが晴れ消えるものじゃないんですよね。決着ではあってもハッピーエンドではない。
だから、この再会では和解以上の、仲直り以上の、一度分かたれてしまった家族としての、姉と弟としての二人がもう一度家族に戻れるなにかが必要だったんですよね。
お互いに、誰よりも家族として愛している事をちゃんと理解しながら、どう歩み寄ったらいいかわからない姉と弟。……こういうところ、血の繋がった姉弟ですよねえ。不器用で面倒くさい。
そういう意味では、王家だの貴族だのという社会システムとは縁のない化外の民であり、ただ純粋にアルの事を思う少女アクリルのストレートな感情は、もどかしい行き詰まるを打破する良いきっかけになったんじゃないでしょうか。
そして、場をセッティングするわ、容赦なくホラホラホラと急き立ててくるユフィのドSな攻め。もうほんとアニスに対してのいい意味での遠慮がなくなったユフィは、アニスをこういう場面では甘やかさないですよね。完全にサドです。ドSです。
アルからすると、一番変わって見えたのは元婚約者の彼女だったんじゃないでしょうか。同じアニス好き好き同盟の同志でありながら、不倶戴天の相容れぬものとしての再会w
いや、何気に以前のアル追放直前の別れのシーンなんかよりも、よっぽど息ピッタリにも見えましたけれど。伴侶としては当人たちの感想通り相性最悪かもしれませんけれど、政治的パートナーとしては至上のコンビになりそうに見えたんですけどw
確かにユフィ、あの父親である曲者の公爵閣下にそっくりになってきたなあ。むしろ、さらに性格悪くみえるくらいになってるのは、頼もしいと思うべきなのか。
ユフィの弟のカインドくん、この姉上を見せられてしまって大丈夫だろうか。さらにアニスの事恨まんだろうか。それか、性癖歪んだりしない?

やり直しと言えば、アルくんに煽られて問題を起こしてしまったスプラウト近衛騎士団長の息子であるナヴルくんも、あれからずっと心入れ替えて周りからやいやい言われながらも直向きに頑張ってたんですねえ。
今回の東部視察の護衛に抜擢することで、禊は済んだと周囲にも示すことになったと思うんだけれど、このままなら良い騎士になってくれそう。挫折を乗り越えて頑張る子は強いですよ。
個人的にはレイニとのルートあってもいいかもなー、と思ったのですけれど、それはないか。

さて、今回は弟のアルくんとの本当の仲直りが話の主題となっていましたけれど、魔石の確保のために東部の開拓を進めるという大事業の前準備も進んでるんですよね。
かつて、東部の貴族による大規模クーデターがあって主要な貴族が根こそぎになってるとか、王妃さまがその東部閥の出身というのが今更ながら発覚したり。外交手腕などで一線で活躍している王妃さまですけれど、自身の政治的実力を示すことで存在感を保ってますけれど、王妃ながら後ろ盾は全然ない状態なんですねえ。外戚が存在しないというのは余計な茶々を入れられないという意味では楽かもしれませんけれど、王家に貴族の政治的なバックが存在していないという事でもあるわけで、そりゃアニスとアルの後継者問題を相当にこじらせてしまうわけだ。ユフィを嫁がせることでマゼンタ公爵家との関係を盤石として柱にしようとしたんでしょうけれど、これはまだまだこれから魔学普及には波乱が幾つもありそうだなあ。不穏な気配も漂ってるし。

そういう意味では、残存する東部貴族の支持を取り付けたり、アルガルドを将来的に辺境伯として東部開発の主軸に据えることで、ゆくゆくは東部閥の柱にしていく見通しが立ったり、と政治的な成果はかなり立ったことになるんだなあ、今回。