【転生したら皇帝でした 2 ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~】  魔石の硬さ/柴乃櫂人 TOブックス

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暗殺に怯える皇帝・カーマインは、"無力な少年"の仮面の下でほくそ笑んだ。夢にまで待ちわびた、悪徳貴族を処刑できる唯一のチャンス――即位式が数日後に迫ってきたのだ。万全を期すため、悪行の裏付けを取ろうと、初めて宮廷外の偵察へ赴くことに。そこで目の当たりにしたのは、領地争いの内乱に巻き込まれ、傷つき貧する民達の姿だった。これ以上誰も死なせない! ビビる心を奮い立たせ、ついに"お飾り帝"の汚名返上へ! 「運命よ、そこをどけ、余が通る! 」 秘めた魔力を解き放ち、自ら剣を手に武力で10年分の倍返し! エスプリ幼帝の痛快王政サバイバルファンタジー第2弾!


派閥争いを繰り広げる帝国国内の二大奸臣の勢力争いの間隙を縫いながら、何とか信頼できる家臣を見つけ、協力者を捕まえ、自身も魔法の力を鍛え、と監視の目もキツイ中で虎視眈々とその時を待ち続けた幼き皇帝カーマイン。
まさに雌伏のときでした。
生まれたその時から周りに味方してくれる人間が誰もいない中で(母親ですらも自分が贅沢をするための駒としか見做していない)、常に暗殺の危険がある中で、知恵をつけないようにわざとちゃんとした教育を受けさせないようにしている環境の中で、よくぞここまで頑張ったものです。
比喩じゃなく、難易度ルナティックモードだったもんなあ。
僅かにいた、マトモに自分を育てようとしてくれた人も、邪魔者として排除されるような境遇でしたから、普段から愚かに振る舞うというのはこれ想像以上に辛かったはず。フリをしているつもりでも、常にそういう振る舞いをしていたらそれが素になっちゃう危険性だってありましたものね。
そんな中でようやく得た協力者も全面的な味方とは言えず、腹に一物持つ者だったり、と精神的にも耐え難いものがあったでしょう。
それでも、股肱の臣となってくれるものを見つけ、婚約者とは心通じ合わせ、ちょっとずつちょっとずつ自分の手を広げていったカーマイン。
そしてただひたすら待つだけではなく、奸臣たちの派閥争いを利用して少しずつ自分の望む状況に誘導していく手腕はまさに政争・謀略の練達を思わせるものでしたけれど、それよりも何よりも印象的だったのが我慢強さ、これに尽きますよね。ひたすらに我慢、我慢、我慢を重ねる精神の強さ。
ようやく外遊というかたちで外に出るチャンスを得て、自分の目で国の状況を見ることが叶うことになった時も、浮かれて隙を見せること無く、そしてどれほど酷いありさまを見せられたとしても、グッと内側にこらえて表には出さず、とやっぱり我慢の連続でした。
ただ生き残るためじゃない、皇帝として民を安んじる責任感。これは一巻の段階で少しずつ芽生えてきたものでしたけれど、実際に自分の目で奸臣たちの圧政を、苦しむ民の姿を目のあたりにすることで、より強く自分の立ち場を意識することになるカーマイン。
教会の始祖である転生者の先人が残した秘録から読み取れた、彼の人の有徳にして他者を尊重しようとする誇り高い在り方を聞いたことも、同じ転生者として思う所あったんでしょうなあ。

既に国法すらも蔑ろにして、国の権力を握る奸臣たちから権力を奪い返す、いわば逆クーデター。それを正式な皇帝の即位式の場で敢行することを決意したカーマイン。
暗殺までは行かずとも、少年という年齢になろうとしているカーマインに対して、何の躊躇もなく麻薬を投与して本当にただの置物の傀儡としようとする連中のやり口は鬼畜外道なんですが、ある意味国を食い物にすることになんの躊躇いもない奸臣の在り方としては終始徹底していて、いやなかなかここまでやれるやつも居ないだろう、と感心してしまいました。ある意味派閥争いのパワーゲームが拮抗していたから、手段に容赦がなくなっていたのかもしれませんが。
まあその拮抗状態もカーマインがうまいことコントロールした所もありますし、どちらかが権力を握った場合、カーマインが動ける余地は殆どなくなっていたでしょうからね。最初の段階で権力争いの勝負付が済んでいなかったのは、皇帝にとっては不幸中の幸いだったのでしょう。
しかし、これだけ我慢に我慢を重ねて、ようやく今までの鬱憤を晴らせそうという状況に至っても、それでもなお浮かれずに、サクッと派閥の長である二人の大貴族を不意打ちで殺してしまったあたり。
最後まで感情に流されずに我慢しし通し、カタルシスや今までの恨みを晴らすために当事者たちに思い知らせてやるのではなく、安全と成功の可能性を高めるために公爵たちが何もわからないまま殺ってしまったあたり、このカーマインの性格が伝わってくるというものである。
そして、自分の命をつけねらう最大勢力を排除して、それがゴール、というわけじゃないんですよね。皇帝としての自覚を獲たカーマインは、政治が腐り果て、土台が揺らぐこの帝国を建て直さないといけない。
ここでようやく、スタート地点に立てた、ということなのだろう。ほんと、立てるまでが大変極まりなかったわけですが。
さて、これからは愚者のふりをせずともよく、思うがままにその才知を振るえる自由を得たわけですが、たった舞台の土台が腐っているのは変わらないだけに、これからもまあ大変なわけだ。
味方となる協力者たちはそれなりに集めたものの、本当に信頼できる相手はわずかばかり。奸臣たちの首魁二人は討ち取ったものの、派閥の勢力は未だにまるごと残っている。残党となるこれらを排除しつつ、ここから真に皇帝としての振る舞いが試される。さあどうなるか。