【秘密結社デスクロイツ 3】  林 トモアキ/ まごまご 星海社FICTIONS

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オルタとアビスの母であり秘密結社デスクロイツ初代総統、クロイツ・パルフェクティア復活ッッ!! 
すかさず起こる不夜城家の親子喧嘩(デスクロイツ内部抗争)!!! 
そして始まるデスクロイツVSジャスティスの全面戦争!!!! 
オルタとヒロインズの関係も大混戦!!!!! 
勝つのは誰だ!? 林トモアキが贈る、誠実悪役主人公(ヴィラン)VS残念正義(スーパー)ヒロインズのバトルラブコメ、第3ラウンド!!

お母ちゃん復活! って、復活!?
オルタとアビスの母親、つまりカオス博士の奥さんって旦那のあまりのアレっぷりに愛想を尽かして出ていったんじゃなかったのか!?
いや、誰もそんな事一言も言ってなかったけど、言ってなかったけどこう、察するものがあるじゃあないですか。言わずともわかるという感じのあれ。オルタくんも幼心にそういう事なんだろうなあと小さい頃からわきまえていたみたいですし。
まさかの、初代総統! デスクロイツの創設者! クロイツ・パルフェクティア!! カオス博士じゃなくて、こっちが元凶だった!
しかも、吸血鬼とか設定が濃い! そして性格も濃い!! つまり、キャラが濃い!!
悪の女幹部どころか、口調から何から完全にボスムーヴなのだけれど、同時にオルタの母、お母ちゃんとしてのアイデンティティもはっきり見せている、という極端な属性をてんこ盛りにしながらわりとバランスうまく取れて安定しているキャラクターなの、林先生のワザマエを感じさせてくれますなあ。
でも、カオス博士、秘密結社デスクロイツが零細化して落ちぶれきっても頑張って組織を維持していたのって、眠るクロイツをいつか目覚めさせるためのエネルギー集めのためだったのか。それだけじゃなくて、破天荒で突拍子もなく生物的にも性格的にも異端者である妻の居場所を残すため、という理由なんかすごく愛を感じさせるんですけど。いや、組織を実質破綻させてしまうような運営をしているあたり、ほんとどうかと思うんですけど。アビスが継承してくれなかったらどうするつもりだったんだろう。
まあ、アビスも母親の件があるからこそ総統を引き継ぐ事をしぶしぶながら了承したみたいだけど。やる気ゼロでデスクロイツに対して全く思い入れもないし、父親に対しても冷たくはないけど遠慮ないアビス姉さんが、どうして総統継ぐなんて事したのかなあ、と不思議には思ってたんですよね。オルタくんがやる気満々だったのを見かねて、というのはあったにしろ。そうかー、お母さんの復活がかかっているとなると、そりゃ放棄はできんわなあ。
復活したクロイツ母さんは、かつて自分が眠る寸前には世界征服寸前まで制覇が進んでいたデスクロイツが、今や町の食堂レベルの零細組織にまで落ちぶれてしまっていた、ことにもがっかりしていたけれど、それよりもそれこそ赤ん坊の頃に分かれてしまった可愛い息子が、他人行儀な事に拗ねてブラックタイガーさんを連れて家出しちゃうの、ちょっと面倒くさいけど可愛いお母さんなんですけど!
変人奇人のたぐいなのは間違いないんだけど、凶暴な怪人たちをその威厳だけでひれ伏させてきた大人物なんだけど、こういう可愛らしいところを見せられてしまうとねえ。
まあオルタくんとしては、今まで自分に母親が居るとか知らされてなかったところに突然、初代総統が復活してそれが自分の母親でした、とか言われても混乱するですしねえ。クロイツ母さん、ほんとオルタくんを産んですぐ眠りについたみたいなので、オルタからすると全く面識ないんだよなあ。まだ幼児だったアビス姉さんが結構覚えている方がなかなか凄いと思うけど。今回はアビス姉さん、すごくカッコいいお姉ちゃんしてたなあ。現総統としてもオルタのお姉さんとしても非常にかっこよかった。普段やる気ないけど、やる時はやる人ってやっぱりかっこいいですねえ。

ともあれオルタ君。母親からすると眠っている間の時間間隔はないわけで、意識としてはオルタは赤ん坊だったんですよね。それが立派に成長して目の前に現れてくれたのはいいのだけど、他人行儀だったり母親として呼んでくれるにしても「お袋」呼ばわりなのは、たしかに想像してみると複雑な気分になるかもしらん。ママと呼べ、と言いたくなるのも無理はないかもしれない。でも、17歳なんてお年頃の男の子からすると、いきなり「ママ」は呼べんよなあ(苦笑

ともあれ、今回は不夜城家の四人家族をぐいぐいと深掘りしてくれて、デスクロイツという秘密結社がファミリーによって形成されている組織なんだなあ、というのを実感させてくれる家族愛のホームコメディーでありました。
尤も、デスクロイツが悪の秘密結社である以上、家庭内のゴタゴタだろうが外に波及するのを止めるのはヒーローたちなわけで。
家族愛の物語であると同時に、愛する息子の嫁にふさわしいのは誰ぞ、というお母さん起点によるオルタくんのラブコメも激化していくんですね。いやーー……かなりまっとうにラブコメしてませんか、これ!?(失礼
アリスとノエルが張り合いつつも、わりと似たような立ち位置であることから恋敵のライバル意識が戦友意識に変化していき、どこか友情めいたものが芽生えていくのも面白かったのですけれど、ノエルは普段から同じ学校で日々過ごしているというの、かなりのアドバンテージですよね。アリスは同じ組織の同僚として、まあ家庭の私生活にも踏み込んではいますけれど、どちらかというとオルタくんからすると同僚というか後輩意識の方が強そうですし。
それに比べると、毎日お弁当を作ってこさせて食べさせてもらってるノエルは、なんかこう、積み重ねがありますよ? ポイント結構貯まってるんじゃないですかね? 逆餌付けでノエルに何か食べさせてあげないと、という強迫観念みたいな習慣みたいなものが根付いてきてますし。

しかし、それら有象無象のぼんくらムーヴを一蹴するかのごとく、一気にヒロインの座をかっさらっていったのが、ルナっちでした。いや、まじでこれ、ルナ一択なんじゃない!? 普段からキャラもかなりマトモで、他の色物系ヒロインたちと比べると、正統派ヒロイン強度の差がダントツなんですよね。しかも、トドメにヒーローサイドのルナの立場から悪の組織サイドであるオルタくんに対して、と考えるなら強烈この上ない真っ当で痛快な告白ぶつけてきましたからね。告白どころか、お嫁さん宣言!
……いやー、めっちゃ可愛かったんですけど、告白ぅぅっ!

はい、もうルナでいいと思います! バンザイ!!