【魔王と勇者の戦いの裏で 2 ~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です~】  涼樹悠樹/山椒魚 オーバーラップ文庫

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転生したゲーム世界で、魔王軍襲撃によるデッドエンドを回避すべく奮闘するモブ貴族のヴェルナー。
ヴェリーザ砦の戦いから王都へ帰還するも、彼に休む暇はない。勇者マゼルのパーティーメンバーが集い始めるなか、ヴェルナーは魔物に滅ぼされた隣国の難民を護送する任務へ就くことに。更には前世の知識を活かして王都の水不足解消にも一役買い、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せる。
一方、奪われた砦に巣くう魔族(ボス)を打ち倒したマゼルら勇者パーティーは、いよいよ魔王討伐の旅へと出立。勇者とモブ、それぞれの戦いは次の舞台(ステージ)へ――
伝説の裏側で奮闘するモブキャラの本格戦記ファンタジー、第二幕。


魔王軍の攻勢によってあっさりと滅びてしまった隣国。当然のごとく発生した難民の群れを軍を派遣して護送することになり、その護送軍の幕僚として参陣することになったヴェルナーでしたが、この軍の指揮官である老将セイファート将爵の知遇を得て目をかけられるようになる。
政治的な後ろ盾として王太子がヴェルナーを何かと使ってくれるようになったけれど、王太子はちょっと地位が上すぎて直接子飼いとして使われるには格差がありすぎたんですよね。
でも、武断派と文官派のどちらにも属さない中立的な立ち位置であるからこそ、軍でも重きをなしているセイファート将軍が後ろ盾に立ってくれると、軍の仕事も動きやすくなるんだなあ。
まあ、この難民護送の一件であれだけ様々な貢献を見せたら、こいつは使えるぞとなりますわなあ。
難民護送のためにヴェルナーが提案したのが、船団護送方式をモデルにした行軍スタイル。いや、これ言うは簡単だけど実際に運用しようと思ったら、指揮系統の確立と情報の整理とかがべらぼうに大変じゃろうに、と思ったんだけど、こういうシステムを構築するのがヴェルナーの得意分野だもんなあ。
軍だけじゃなく難民の分も都合つけた兵站の構築にも貢献してるし、功績半端ないぞこれ。
面白いのが、たとえばこの遠征などの軍隊の運用で、糧食など必要物資がどれほど必要なのか、とか具体的にローマ帝国の資料を引き合いに出して説明していたり、とけっこう具体例を引用して読んでいる側に非常にイメージしやすい形で、内政にしろ軍を動かしての作戦にしろ、解説してくれるんですよね。これがほんとわかりやすくて、だからこそ頭の中で何がどれだけ大変か、ヴェルナーが差し迫ってどんな仕事をこなしているか、それらをテキパキとさばいていく彼の仕事っぷりがどれだけべらぼうか、というのがスッキリ伝わってくるんですよね。だからこそ、めっちゃ面白い。
実際に戦いになって槍突き合わせてワーワーとぶつかり合うのは氷山の一角。それが起こるまでに膨大かつ途方もない実務処理が行われていて、それらを実行するために様々な人が頭を捻りまた走り回っている。やっぱり具体的に数字が出て、動いている様子が語られて、それらをバチバチに捌いていく様子が描かれると、実際の戦いじゃなくても面白いんですよ。ワクワクしてくるし、痛快感は引けを取らない。
まあ、後方での戦いだけじゃなく、実際の軍と軍との大会戦までもちゃんと起こるんですけれど。
相手が半ば自動的な反応に基づいて動くだけのアンデットと、指揮官も魔術師であって戦争の素人、というのを見込んでいたからこそ、ですけれど大胆な包囲戦でした。これも、ちゃんと指揮と行動目的が各部隊に行き届いて、それにちゃんと各指揮官が従うだけの下地が整えられていたからこそ、でありますしね。
1巻の段階だと、これ各部隊が好き勝手動いて乱戦になるばかりだったんじゃないだろうか。そう考えると、王太子は非常にうまく政治的に立ち回って各派閥の首根っこ抑えてるし、中世のまとまりのない貴族の寄せ集めの軍隊だった王国軍が、急速に近代的な軍隊に変革しつつある兆しなのかもしれない。
女性騎士たちの立ち位置も、これ面白いなあ。これちょっとした派閥を形成してるんじゃないだろうか。しかも、女性騎士たちが色んな派閥や家柄から出てきて集まっているので、地位や武断派文治派などを横断してある程度影響力を持ってるんですよね。ヒロインっぽいヘルミーナ嬢なんかも、そんな女性騎士派閥の幹部格の一人ですし。それに役割的にも使番的な仕事を主に任されているということは、多岐に渡る様々な場所に出入りするという意味でもあるわけで。
その女性騎士たちからヴェルナーが評価高まっている、というのは結構これ侮れない影響があるんじゃないだろうか。

結構ウンチク話も多いんだけど、先にも触れたようにこれがストーリー上必要な知識を解するのに必要な解説にちゃんとなっていて、分かりやすく面白い。定説から切り込んだり深掘りしたり、と結構既知の死角を突かれたりして「へぇ!」ボタンを連打してしまった。下地となる部分が斯様に柔軟かつ広大で、内政モノとしても戦記モノとしても非常に歯ごたえのある内容になっている。
まあ犯罪捜査まではじめるとは思わなかったけど。あれも、密かに動いている陰謀に気づく足がかり、ともなるんだろうけど。
それだけじゃなく、勇者マゼルの故郷の村の問題も、あれそういうトラブルまで首突っ込むのか、とちょっと唸ってしまった。まだ種火がくすぶっているくらいの段階でしょうけれど、近視眼的にしか物事を捉えられない、村という世界を出たことのない人々の常識と戦うことになるのは、かなりしんどそう。時代と土地柄を考えれば、珍しくない民度なんだろうけれど、こういう泥臭いちょっとどうしようもない問題までヴェルナーは取り組むことになるのか、とちょっと感心してしまった。この村の人達、勇者というのがどういう存在なのかも、まったくわかってないんだろうなあ。

しかし本作、女っ気本当に少ないですねーw
かろうじてヘルミーナ嬢が孤軍奮闘頑張ってますけれど、マジで紅一点じゃないですか。勇者パーティの方も今のところ男ばっかりですし。パーティー参加予定らしき王女様、今回名前しか出てこなかったぞ。