【お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです】  瀧岡くるじ/猫猫 猫 カドカワBOOKS

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
召喚獣のスキルを"全て自分で"使えるラスボス級新人、爆誕!!

昔大好きだったアニメ『バチモン』がコラボすることを知り、初心者ながらもVRMMOを始めたヨハン。
もちろん職業は召喚師(サモナー)!
懐かしのバチモンたちを愛でながら、コラボイベントを遊んで遊んで遊び尽く……した末にGETしたのは、まさかのラスボス装備!?
召喚獣のスキルを全て自分で使えるようになったヨハンは、さらに階層ボスまで仲間にしてしまい……!?
無自覚にランキングを駆け上がる『ありえない』エンジョイ勢新人、爆誕!!


これバチモンって何の略なんだろう。ポケモンだってポケットモンスターというちゃんとした名称あるぞ。バチッとモンスターとかそんな感じでしょうかね?
ところでどうしてもこれ「パチもん」と見間違ってしまって仕方なかったんですよね、申し訳ないんですけど。パチモンパチモンと見えてしまって、思わず笑ってしまった。
しかし、子供の頃見ていたアニメ・ゲームのバチモン、というフレーズがけっこう胸にグサグサくるんですよね。自分の年代からすると、アレはもう子供が夢中になってるコンテンツで縁がなかった作品なんで、それを幼い頃夢中になっていた世代が若い子たちより一回り上の大人として昔を懐かしみながら遊んでいる、という構図がなかなかくるものがあります。
でも、確かに今となってはアレ……ポケモンって国民的コンテンツなんですよねえ。今30代くらいの人までは子供の頃にやってただろうし、もうひと回り上の世代だと自分の子供が遊んでいたのでそれに付き合って一緒に遊んでいた、という50代の人も結構多かったりするので、自分くらいの年代はちょうどポケット、谷間の世代なんだよなあ。
などと、本作とはあんまり関係ないところに感慨深いものを感じながら読んでいたわけですけれど……この主人公のお姉さん、年齢28歳の会社員というけれど、言動が実年齢よりもおばさんくさいのでアラフォーみたいに見えるんですけどw
完全に機械に疎いオバちゃんだよなあ。現代だと70,80代のお婆ちゃんでもスマホとかけっこう使いこなす世界になっているので、もう機械に疎いとか年代でどうこうじゃないのかもしれませんけれど。
主人公の哀川圭は、古臭い時代遅れの価値観に頭まで浸かった父親から厳しく育てられ、エンターテインメントの類、ゲームやアニメや漫画といったサブカルチャーを低俗なモノとして排除され、頭を押さえつけられるような青春を送った女性でした。唯一、ハマったバチモンも父親に取り上げられ、好きだったものを罵倒され踏みにじられ、遊ばず勉強だけして良い会社に行けば幸せになれる、という価値観で縛られ、抑圧された人生を送っていた人でした。
そんな強圧的な父親は早々に亡くなり、彼女は趣味もなく毎日を歯車のように過ごす無機質な日々を送っていたのです。そこに父親の語った幸せなど欠片もなく、荒涼とした砂漠のようなそれは余生のようでした。
28歳でこれだけ枯れた精神で居たら、そりゃ若々しさなんか残ってもいないか、とちょっと納得してしまう。
だからこそ、子供の頃の唯一の宝物のような思い出だったコンテンツとのコラボに、一念発起してはじめてゲームに挑んだのも、まあ微笑ましいんですよね。
あれだけ頭ごなしに押さえつけられる人生を歩んできたのに、圭さん自身はまったく高圧的なところはなく、温厚篤実で真面目な女性で、明らかに年下でまだお子様っぽい他のゲームのプレイヤーに対しても、ゲームの先輩として素直に言うことを聞いて、ハイハイと笑顔で受け答えする姿は彼女の人となりを感じます。
いや、温厚すぎてなんだか孫に接するおばあちゃんか、というくらいののんびりさすらも垣間見えたのですけれど。
まあいずれにしても、一番ラスボスが似合わないキャラクターなんですよね。いや、こういう大らかでポヤポヤした呑気さと、何もかも包み込むような包容力を持っていると、それはそれでラスボスっぽくはあるかもしれませんが。
こういう女性が抑圧されて生きてきて、何の楽しみもなくうるおいなく人生過ごしてきた、って虚しいし可哀想にも程がありますよね。だから、子供みたいにはしゃいでかつての懐かしい思い出を取り戻すかのようにボケモンたちと戯れる圭さんの姿には、胸に迫るものを感じます。
ゼッカやレンマといったまだ若い彼らが、ゲームは素人のはずの圭さん…ヨハンに懐くのはこういう無邪気さと大人びた大らかさ故なんでしょうね。

ただ、これ客観的にゲームの評価として見ると、どこからどう見てもクソゲーですね! ゲーム初心者にラスボスとしか言いようのない破綻した能力の装備を与えてしまうのもアレですけれど、ゲームバランスの調整がメチャクチャですし、その修正の仕方もなにを考えてるんだ、いや何も考えてないなこれ、というような酷いものですし……うん、これゲームとして成立しませんよね?
それこそ素人の学生たちが集まってノリで作って、作りかけでこれ投げ出すな、という感じの同人ゲームみたいなゲームバランスである。運営が運営できてないや。
まあそういう部分さえ気にしなければ……話の根幹設定な気もするけれど、そういうのはさっと流して、ヨハンさんが素人でも楽しく遊べているのを微笑ましく見守る、という意味ではじんわりと優しいきもちになれる作品でした。