【魔導書学園の禁書少女 2.少年、共に誓いを結ぼうか】 綾里 けいし/みきさい 角川スニーカー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
少年の過去は――禁忌に彩られていた

『これより「革命」を開始します』――過去なき少年レンが禁書の主であるアンネと共に、学園に潜む仇を捜す最中、突然に事件は起こった。『ある者』を求めて学園を占拠した脱獄魔導士らとの戦いがはじまる――。

全然話としては違うんだけれど、絶望の果てに辿り着いてなお、生きる希望を胸に宿し支え合い混じり合う深くも純真な愛の物語として綾里さんの作品としては【アリストクライシ】を思い起こしてしまいました。
あれ、好きだったんですよね。
この作者さんってなんだかんだと一貫して純愛路線の人だと思うんですけれど、それでいて一筋縄では行かない曲線を描く物語が多いんですけれど、珍しく剛速球のストレートだったなあ、と。
そこに辿り着くまでは色々と寄り道回り道目くらましにお色直しと、紆余曲折をたどることも多いのですけれど。
いや、それにしても今回は2巻とは思えないクライマックスっぷりで、これ巻いてますよね!?
レンの失われた過去に沈んだ家族の真実も、仇の正体も、アンネという禁書少女の実情も、何もかもが一気に怒涛のように明らかにされて、さながら長期シリーズのラストを飾るような展開でしたし。
学園を封鎖した柱の開放のために戦うことになった守護者たちもこれ、一人ひとりここでマッチの火のように灯されて吹き消されるには、キャラの存在感が強烈すぎるんですよ。これ、一人ひとり一冊丸々の物語を担えるほどの敵キャラであり、心をつなぐことのできる相手だったんじゃないだろうか。
それを線香花火のように儚くも鮮烈に費やしていくこの贅沢さ。ドードーなんて、これ相当にアンネの心を揺さぶるポディションになりかねないキャラクターでしたのに。
まあ、一瞬にしてレンの情緒をこれ以上無く揺さぶり倒して傷だらけにしていってしまいましたが。アンネの洒落にならない必死の形相を引き出した、という意味ではその閃光のように駆け抜けた登場シーンは大いに意味あったのでしょうけれど。
続くディレイの兄についても、学園で出来た友人たちがそれぞれ抱えているであろう事情を一巻かけて掘り下げて語るに十分に足る密度だったんですよね。てか、綾里さんて肉屋ファッションお気に入りなんですかね!? あのスタイルを見せられると色んな意味でこっちまで情緒揺さぶられるのですけれど。
そしてトドメの、レンとアンネの因果の糸を暴露する、犯人と仇と黒幕の曝露。破滅による救済という終わり果ててしまった者たちへの救いの結末。容赦無しの一言なんだけど、サーシャにしても『アンネ』にしてももう後戻りできない一線を越えてしまっていた以上、再会が叶い愛する人の未来を確かめられて、自分ができなかった希望を掴む「自分」を見つけられて、もう二度と取り戻せないはずだった過去を取り戻せた果ての結末は、当人達にとってはやはり救いだったのでしょう。
とても幸せな「悲劇」でありました。

全部、剥き出しにしてしまったなあ。この結末は、消えていたレンの心も伏せられていたアンネの気持ちも、何もかもをむき出しにしてしまった。レンにすがりついて叫んだアンネの想いは、剥き出しの魂の叫びだっただろう。自分の大切な人達が失われゆくのを半狂乱で追いかけようとするレンを、しがみついて自らを傷つけてまで縫い止めて、行かないでと一人にしないでと叫んだ言葉は、色んなものを覆い隠して見せようとしなかったアンネの、剥き出しの気持ちだ。
直球ですよね。エゴイスティックなほどのストレートでした。でも、レンはちゃんとそれを受け止められる男だったんだよなあ。
だからこそ、絶望の果てであってもお互いがいれば彼らは希望をいだいていることが出来た。
悲劇を前にしても、お互いを信じることが出来た。
生きることを、選べた。
ラストのアンネの泣き笑いの挿絵は、グッと来るものがありました。
失われ、しかし確かに希望を残してくれた家族の鍵を胸に抱き、彼らはお互いを伴侶とする誓いを守り続けて、この悪夢の世界を生き抜いていくのでしょう。
これで、このシリーズがラストなのかわかりませんけれど。これで終わりというのも一つの形ではあるのですが、もうちょっと続いてほしいなあ。少なくとも、学園編はこれで卒業は間違いないですが。