【サイレント・ウィッチ IV -after- 沈黙の魔女の事件簿】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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完全書き下ろし! 学園で起こる不思議な事件を名探偵モニカが解決!?

学園祭を終えて一段落……かと思いきや、冬休み前の学園には不思議な難事件(?)がいっぱい!
盗み食いの容疑者としてグレンが捕まったり、学園なのに迷子の少女が見つかったり、正体不明の火の玉が目撃されたり――第二王子が怪しいおまじないに巻き込まれたり。
「多分だけど……止めないと、大変なことになる」
名探偵モニカと探偵小説にハマり中の黒猫が、数々の事件の謎を解き明かす、オール書き下ろしの極秘任務・番外編!


サブタイトルの「-after-」って鹸のアフターって意味なのね。いきなり後日談ってなに!? と驚いたのですけれど。

いやー。いろいろなエピソードの詰まった短編集ということで、これまでに登場したキャラクターたちの様々な側面も見られて非常に満足度の高い一冊だったんですけれど、それでもラスト近辺のラナが贈ってくれた誕生日プレゼントにあらかた気持ち持っていかれてしまいましたよ。
モニカが彼女と出会い友達になった、というのは本当に幸いで素敵な運命だったのだなあ、と微笑ましく思う。彼女だけは、全く何にも「沈黙の魔女」に関係のなく、因縁もなく、任務にだって一切の関わりなく、ただのモニカと友達になった子なんですよね。
人とまともに接することも出来なかったモニカが、ラナと友達になったというのは彼女の成長の証なんですよねえ。ラナだって、素直じゃなくて友達の出来にくい子だったのに……いや、改めて考えるとこの娘に友達少ないというのは不思議に思えてくるくらいイイ子なんだよなあ。
あれだけの金持ちの子女なのに、わざわざ誕生日プレゼントにお金をかけようとせずに自分の手で苦労して作ってきてくれるって。どれだけ気遣いできるんですか。どれだけ思いやりがあるんですか。大切な気持ちを損なわないでちゃんと伝える術を、わかってる理解している子なんですよねえ。
もうリアルにうわーーとなって、キュンキュンしてしまいましたよ。実際に胸がポカポカと温かくなってしまいましたよ。

イザベラとの出会いは沈黙の魔女としての仕事絡みでありましたけれど、彼女は彼女でラナとは違う形でモニカにとっての運命の出会いですよねえ。あれだけ沈黙の魔女フリークでありながら、モニカという少女を見ていないわけではなく、むしろ沈黙の魔女という肩書に目を曇らせずにモニカその人をちゃんと見ていて、慕ってくれているんですよねえ。
モニカの様子がおかしいときはすぐに気づいてくれますし、モニカが何に悩んでいるかもすぐに理解してくれる。落ち込んでいたらさり気なく支えてくれますし、完璧じゃないですかこの子。
おまけにモニカにトラブルが絡みついてたら、本当にちゃちゃっと解決しちゃってくれますし。優秀な人間の揃っている学園ですけれど、イザベラに関してはちょっと別格なんじゃないの!?と思えるくらい、手練手管が際立っている。
こと沈黙の魔女に関することだけ、夢中になりすぎてアタマガバガバになってる節があるけれど、それ以外にはほんと完璧なんだよなあ。なんで悪役令嬢なんだろう、と思ってたら一族全部がそっち方向にはポンコツなのか。
何気に「沈黙の魔女」に関してのハマりっぷりに関してはフェリクス王子とは似たもの同士なので、これお互いに趣味が一緒という事が発覚したら、凄まじく意気投合してしまうんじゃないだろうか。

そのフェリクス王子は、以前に見せた素の表情を改めて見せてくれる回でもありました。魔法や沈黙の魔女が絡むと、普段の冷静で感情を波立たせずどこか皮肉っぽくどこか諦めたように、そして仄暗く何かを溜め込んでいるかのように、何かを狙い定めているかのように、笑顔の仮面を被ってスマートに完璧な王子を演じているのが、一変しちゃうんですよね。
本当に年相応の無邪気で好奇心一杯で我慢がきかないヤンチャなお子様、みたいな顔をこぼしてくる。
幼なじみのエリオットの記憶からしても、相当幼い頃から今の王子としての仮面をきっちり被るようになってたみたいだけれど、素の顔は自分を不良と呼ぶこっちなんだろうなあ。
瑞々しさが全然違うんですよねえ。これだけはっきりと異なっているのがわかると、普段のフェリクスがどれだけ巨大なものを押し殺しているのかが伝わってくるようです。それだけ壮絶な何かを、覚悟をもって抱え込んでいるのか。
無邪気に好きなものに夢中になってるフェリクスは生き生きしていて可愛いくらいなんですけどねえ。
……絶対、イザベラと早口でマニアックな沈黙の魔女の話題で盛り上がりそうw

ルイスの使い魔であるメイドの姿をした精霊リンが実はネロと同じかそれに勝るくらいフリーダムポンコツで、精霊ってみんなこんななんかい!?というのがわかったり。
なんで学園で流行ってる恋関連のおまじないが、よりにもよってルイス由来だったりするのか、とか。
七賢人のレイくん、わりと出番あるよね。というか、七賢人ってこんなばっかりかい。そりゃモニカがあれだけ対人能力なくてもあんまりやいやい言われないよね、と納得したり。

沈黙の魔女の事件簿 とタイトルついているわけですけど、言うほど探偵ものとかミステリー、謎解きという要素はなくて、あくまでいくつかの日常の中のミステリーを解いたり、解決したり、という感じのお話でした。というか、一番大きな事件と問題は、イザベラが乗り出した途端ちゃちゃっと彼女が解決してしまった気がしますがw
ともあれ、大きな事件が無い中で、学園祭というイベントも終わってホッとみんなが息をつく日常の中で繰り広げられる、様々な人の学園での風景、いつもの生活、そこで起こる色んな出来事。そうして見えてくる登場人物たちの違った側面。そんな中をワタワタと駆け回るモニカ、と本編ではじっくり味わえない部分を堪能できて、実に美味しい作品でありました。面白かった。
あと、ルイスの嫁さんは男の趣味が悪いという自覚はあるんだ。それはもう仕方ないな!!