【負けヒロインが多すぎる!】 雨森 たきび/いみぎむる ガガガ文庫

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「え? マケインって誰のこと?」

クラスの背景である俺――温水和彦は、あるとき人気女子・八奈見杏菜が男子に振られるのを目撃する。

「私をお嫁さんにするって言ったのに、ひどくないかな?」
「それ、いくつの頃の話?」
「4、5歳だけど」

それはノーカンだろ。
これをきっかけに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花など、負け感あふれる女子たちが現れて――?

「温水君。女の子は2種類に分けられるの。幼馴染か、泥棒猫か」
「なるほど、大胆な分類だ」

負けてこそ輝く彼女たちに、幸いあれ。
負けヒロイン――マケインたちに絡まれる謎の青春が、ここに幕を開ける!

かつて名将野村克也はこう言いました。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」

スポーツに限らない、この世の真理を鋭く言い表した名言中の名言だと思っております。

キミたちはーーっ、負けるべくしてーーっ、負けたのだっ!!
うはははは!
結果的に負けヒロインになったんじゃない、キミたちは負けるべくして負けヒロインになった者たちである。堂々とマケインと名乗るが良い。タイトルを初めて見た時は流石に負けヒロインって言われる方可哀想だなあ、振られ女にしておけよ(酷)と哀れみを覚えたものですが、何の何の。もうこれ「属性」負けヒロイン、とつけてもいいくらい負けヒロインでした。
むしろ、どうしてそれで勝てると思ったかーーっ!!
いや、主にメイン負けヒロインの八奈見杏菜についてであるが、焼塩檸檬についても相当である。なんだその根拠のない自信は。戦況を把握しろ、自分の立ち位置を把握しろ、人間関係を把握しろ。取り敢えず行けるだろうという根拠のない自信だけでイケイケで最初から勝ち目のない勝負に勝確みたいに挑むんじゃない。そしてなんで一人だけこんなキラキラネームなんだ。焼塩鯖檸檬とか親御さんに名付けられなくて良かったね、と言ってあげた方がいいんだろうか。ちなみに焼塩姓はマジにあるらしい。
改めていうと、八奈見杏菜くん、キッミは幼馴染の立場に安居して、こう……アレな感じに女子力を棄損してしまわれていましたね。クラスでは人気者、とされるように外面は立派に清楚系美少女を繕えているところがまたややこしいというかなんというか。それでいて、素の方はアレである。アレである。思わず2回繰り返してしまったが、この美少女将来はなかなか立派な厚かましいオバちゃんになりそうである。
いやでもさー、杏菜くん。キミが狙ってた……狙っていたって言い方あれだけれど、淡い恋を育んでいたつもりの幼馴染の草介くん。彼との関係は家族ぐるみで幼い頃から付き合ってた裸の付き合いだってしていた何でもさらけ出して全部知られてしまっている幼馴染という関係でしょ? 外面をどれだけキレイに繕えても、幼馴染は知っているわけですよ、キミのアレとかアレとかアレとか。
うん、まあわかりますよ。幼馴染だけが知っている本当のキミの顔。外面に誤魔化されず、だからこそ気心が知れていて安心できる関係。わかりますよ、幼馴染の恋ってのはお互い全部知ってる理解度がまたいいんだ。
全部何もかも知っているからこそ、幼馴染は家族みたいな関係で恋するのは難しい、なんてのが幼馴染が負けヒロインになってしまう定番のロジックだけど、そんなロジックなんか知ったことかーっ、と幼馴染なら言いたくなるし叫びたくなるってもんですわ、わかりますよ?
分かるけど、分かるけど、杏菜くんさー、それで幼馴染の座に胡座組んでちゃ勝確の幼馴染属性だってこうアレですよ……ダメだわーー、それはちょっとアレだわーー。
むしろ草介ーーっ、オマエだ。おまえ、幼馴染なんだからどうしてこうなるまで放っておいたんだよ! もうこの娘えらいことになっちゃってるじゃないか! 小さい頃から一緒だったんだろ? 家族ぐるみで実質家族みたいなもんだったんだろ? ヤンデレみたいな潜在性のアレだったら仕方ないかもしれないけれど、杏菜くんのこれは普段のプライベートではドバドバに出ちゃってるものだっただろうし、もうちょっと何とかしてやれなかったのかよ。手遅れじゃん!? こうなっちゃったんだから、もう最後まで面倒見なさいよ。もうここまでなったら責任問題だよ。飼い主はペットに対して最後まで責任持たないとダメなんだよ?ってやつですよ。
いや、ほんとに杏菜くん中心に愉快で面白い子たちばかりなんだが、友達としてはイイんだけれど恋愛対象として考えてみて? となると真面目にムムムム?ってなるよね。なりますよね。
考えた結果……無理かな♪ ってなるタイプですよね。
恋愛対象として見ることは「出来ない」、じゃなくて恋愛対象として見るのは無理かな? 「無理かな!」って言葉を敢えてチョイスしてしまうくらいにはこう……残念!!
いやでも友達としてはほんと面白いし飽きないし、大変迷惑もかけられ鬱陶しかったりオマエそろそろいい加減にせいよ?とか思うこともしばしばですが、友達甲斐のある良い子たちなんですよ。恋人としてはノーサンキューなのですが。
……草介くん、まあまあ気持ちはわかるよ、うん。
実際、主人公である温水くんと杏菜くんとは普段からお昼に一緒にお弁当を食べるような仲となり、幽霊部員だった部活にも通うようになり、一緒に合宿行ったり、とまあ随分と仲良くなった……厚かましく纏わりつかれている、とも言えるような気がしますが。とりあえず、人の話は聞こうぜ。聞いてスルーしないで。うん、仲良くなりましたけど、恋愛臭はびっくりするくらい一切なかったですもんね。他の子とも。
杏菜をはじめとして負けヒロインたちがまだまだ本来の恋していた相手への気持ちを引きずっていたから、というのもありますし、温水くんという男の子の方もこれ随分と変というか面白い子で、こいつもわりと図太いというか、あれだけ周りに巻き込まれ、流されて、どちらかというと傍観者としての立ち位置に居続けているくせに、けっこうズケズケしてて、イイ性格してるというのもあるんでしょうけれど。
お互いに恋の矢印が向き合ってないんですよね。だから、失恋のダメージにのた打ち回っている負けヒロインたちに、友達として寄り添えるし……寄り添ってたかなあ? わりと失礼なことばっかり考えてた気もするけれど、むしろ的を射ていたので温水くんは間違ってないぞ! いや、うんまあ、友達として慰めてた、かどうかもまああれなのですけれど、ちょっとしんどいときにやけ酒付き合えやーっ、的な絡みにも嫌がらず……嫌がってたけど、それでもちゃんと付き合ってくれて、愚痴やら鬱憤やらを吐き出すの聞いてくれてたのは有り難いと思うんですよ。温水くん居なかったら、杏菜なんてもっとドツボハマってたかもしれないじゃないですか。あんまり想像できないけど。攻撃的ダークサイドくらいはハマってたかもしれない。
その上で、幼馴染という身近な相手だからこそ振ってしまった事の罪悪感から、致命的にすれ違ってしまいそうな事を言いかけた草介くんに、それはあかんやろう、と叱ってやれた温水くんは、ちゃんと杏菜に寄り添っていてくれたと思いますよ、うん。
それで乙女心にキュンと来る、というのはなんかなさそうなのが、杏菜なんですけどね。そしてそういう対象にならなさそうなのも、また温水くんなのである。この主人公も結構謎だよな。だいたいなんだ、あの妹は。生きた爆弾か? 

ともあれ、個性的にも程があるという女性陣、負けヒロインの看板背負ってるかのようなアレなヒロインたちと、これまた個性的な主人公、というかなんかやたらとモブ!という強烈な存在感を持った温水くんの、果たしてこれはラブコメになるんだろうか、というラブコメの第一弾、面白かったです。
いや、真面目な話、これラブコメになるの? 恋愛に発展するの、ガチで想像しづらいんですがw
むしろ、男女間の友情は成立するのか、の実証実験にでもなるんじゃなかろうかw

あと、いみぎむるさんのこの絵力は素晴らしいですね。視線一発で縫い留められて、焼き付けられますわ。