【絶対魔剣の双戦舞曲(デュエリスト) 1 ~暗殺貴族が奴隷令嬢を育成したら、魔術殺しの究極魔剣士に育ってしまったんだが】 榊 一郎/朝日川日和 HJ文庫

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最強の暗殺貴族、異端の魔剣術で奴隷令嬢を育成! ?

魔術全盛の大魔法時代。ある異能を持つ青年貴族・ジンは、異端の“魔剣術"により、裏世界で「魔術殺しの暗殺貴族」として名を馳せていた。
ある日、ジンは依頼の遂行中、謎めいた「奴隷令嬢」リネットを拾い、成り行きから家に迎えることに。その後、彼女と名門女学院に潜入したジンは、唯一の男性教師として令嬢らに己の秘剣術を教えることになり!?
魔術のみが正義の世界、影の英雄は理外の魔剣で、落伍者の少女らを絶対強者の頂きに導く! あらゆる最強魔法を異端の剣が打ち砕く、無双教導アクション!


「棄てないでくださいっ」ってリネットの口癖、捨てるという漢字ではなくて棄てるの方を使ってるのってやっぱり榊先生の代表作の一つ【スクラップド・プリンセス】を意識してますよね。あれの略称が棄てプリでしたし。
ということは、これこそ新たなNEW棄てプリの可能性がッ!?
いや、パシフィカは罷り間違っても棄てないでくださいっ、なんてセリフは言えない娘でしたけど。
どちらかというと、こっちのリネットは捨てじゃなくて拾いの方なんですけどね。拾われ令嬢だ。

このリネットちゃん、可愛いですねえ、可愛いですねえ。榊作品のヒロインとしては珍しいくらいのあざとい系かもしれない。ちょっとポンコツでおっちょこちょいの所なんぞ、特に。人前、他人の耳目があるところで、というか生徒と先生という立場であるジンに対してついつい「棄てないでくださいっ」と言っちゃうあたり、なかなかのやらかし娘である。でも、そのおっちょこちょいな所がイイんですよ。なんかイイんですよ。やらかすタイミングといい見せ方といい、実にツボをつくものがありまして。
魔力無しという生まれから無能、役立たずと蔑まれ続けた挙げ句に、奴隷として売り飛ばされ、その売り先ですら送り返される始末。無能なだけでなく、感情が高ぶると爆発するというやばい体質も重なっているのだけれど、とにかく存在意義そのものを否定され、生まれたことを否定され、文字通り廃棄されたと言えるのが彼女だったわけだ。
それを拾ったジンに対して、リネット自身を求めてくれた、自分に価値を見出してくれた主人に対して全身全霊で傾倒してしまうのも、そりゃ無理ないってものでしょう。彼女の棄てないで、という懇願は彼にさえ見捨てられたら、もう駄目だという絶対的な絶望からくる叫びにすら思えてくる。
そんな境遇からすると、もっと依存して主体性もなくなりそうなものなのだけれど、意外なことにこの娘は本当の奴隷のように自分の意思まで主人に預けてしまうような有り様にはならないんですよね。
むしろ、自分の意見というものを小さくもしっかりと保持してるんですよね。学校に行きたいというのも、彼女の希望でしたし。目的意識もしっかり持っている。思考停止せずに、自分のやるべきことを考えて、自分で行動できる頑張り屋なのである。そういう所好感度高いんですよね。
だから、棄てないでっ、という言葉も自分を持たない娘の叫びならもっと重たくひもじいものを感じさせてしまうものなのですが、彼女の場合は本人は本気なんでしょうけれど小動物が甘えてじゃれついてるみたいな可愛らしさを感じるセリフになってるんですよねえ。

さて、そんなリネットを拾って育てて鍛えているジンですが、暗殺貴族ですかー。うん、暗殺貴族ってカッコいいじゃないですかっ。わかりますよ? 高貴な身分にも関わらず、だからこそ国を負うような暗部として働く孤高の貴族、みたいなの。……そういえば、本邦の服部さんとか柳生さんとかも広義の暗殺貴族なんだろうか。いやまあどうでもいいんだが。
それにしても、ジン・カインド先生、設定てんこ盛りである。彼の家系が暗殺貴族となる所以が元をたどれば異世界の勇者の血に辿り着くというのは、なるほど勇者って一種の暗殺者という考え方もありますもんねえ。本来は華々しい存在であった勇者が、後世では国家の暗部を担う存在になっているという歴史の皮肉。そこから、リネットのためにジンが教師として立つことで暗殺者という日の目を見ない立場から、表舞台に立つ可能性が出てくるという展開がまた面白いですねえ。
本人はめっちゃ陰に籠もってたいタイプで、目立つのが嫌いで、服は絶対に黒がいい、というこだわり派なのですが。先生やるときは白を基調としたスーツ、これはこれでほんとに派手だな、を着せられて憂鬱になってる先生、可愛いですよ?
おまけに、異世界モノでありつつ学園モノになったと思ったら、学校にテロリストが襲撃してきたっ、というシチュエーション。こうしてみると、設定てんこ盛りですね、この作品!!