【ゴブリンスレイヤー外伝 2 鍔鳴の太刀《ダイ・カタナ》(下)】 蝸牛くも/ lack GAノベル

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これは、蝸牛くもの描く、灰と青春の物語。

「王都がヤバイ事になってるって噂は聞いた。吸血鬼の王が出たとかな」
城壁の彼方から、次々と流れ込んでくる避難民たち。
今や城塞都市を襲っているのは、《死》の影に怯える者の恐慌であった。
しかし――。
「俺はやつを討つ」
金剛石の騎士の言葉を聞いた君は頷き、都市の崩壊に構わず《死の迷宮》へと再び挑む。
これは終わりの始まり。ただそれだけ。
――いよいよ、大詰めだ。
「おう、大将! ついていくで」
「俺はどっちでも構わんがな」
「私も行きますから、忘れないように」
「わ、わたくしも……! そのために、この街へ来たのです」
「うん。行こう?」
この六人で――世界を救いに行くとしよう。

「ゴブリンスレイヤー」の10年前を描く外伝第2弾。
これは、蝸牛くもの描く、灰と青春の物語。


ゴブリンスレイヤーの物語より十年前。それは世界を救ったあるパーティーの冒険の物語。そのまさに、終章がこれだ。
いやー、「君」の女戦士に対するメンタルリカバリー能力たるや、もはやベテランの域と言っていいくらいわかってる感がありますよね。
元々脆さを見せていた女戦士ですけれど、彼女の戦士としての強壮さと裏腹のその弱さというのは表裏一体って感じなんですよね。彼女の精神の脆さ弱さというのは、どこか儚さに通じるものがあった。儚いが故に鋭く尖った強さがあったように思えるのだ。
でもどれほど鋭くても、簡単に手折れてしまいそうなその脆さを「君」は掌中に収めている感があるんですよね。大敵に打ちのめされ、自身の唯一の牙であった愛槍も折られ、いったんは女戦士、心すらも折られていたんじゃないだろうか。
地上に上がってみれば、都市には避難民が押し寄せ冒険者たちの賑わいは消えせて、世相はまさにこの世の終わりへと直滑降に落ちて行く真っ最中のような仄暗さ。
気持ちの立て直しようもない空気感、いつ治安が崩壊してもおかしくないような不穏と不安がはびこる街の中で、しかしそれまでと変わらず揺るがぬ不動の立ち居振る舞いを見せ続けたのが、この男「君」であったのだ。
どこか飄々とすらして、彼は女戦士を連れ出して、彼女に新たな縁となるだろう槍を入手すべく奔走する。奔走する、というよりも練り歩くとでも言った方がいいくらいに、空気が悪化するばかりの街の中を、それを維持しようと平穏を保とうと治安を守ろうと、それまでの日常を続けようと踏ん張る街の住人や職人、そして冒険者たちの奮戦を横目に見ながら、その在り方に共感を抱きながら、彼はまたダンジョンの最奥に挑むための準備に勤しむのだ。
そこに迷いはない。彼の目標は決まっていて、意思は定まっていて、決意すらも必要ないくらいやるべきことはわかっている。
問題はそれに、果たして仲間たちは付き合ってくれるか、ということだったわけだけれど。世界を脅かす死を生み出し、地上へと送り出してくる元凶に挑むことは、それこそ自殺行為かもしれない。しかし、仲間たちは誰一人ためらう様子一つなく、さてもう一度ダンジョンに挑もうか、という呼びかけに当たり前のように応えてくれた。それは、新しい縁たる槍を手に入れた女戦士も一緒。とはいえ、これだけ手厚く手当てされたらねえ。的確に心奮い立たされ、支えとなってくれたらねえ。柱ですよ、もう。どんな自分でもブレなくなるほどしっかりとささえてくれる不動の柱。これを味わってしまえば、なくてはならない存在としか思えなくなるでしょう。女戦士としては、もう最後まで責任取ってよね、てなもんでしょう。
他の仲間たちにしても、君が思っているほど迷いも躊躇いもなかった、とは思えない。蟲人のモンクさんはあの人はちょっと突き抜けているんで、君の主観通りかもしれないけれど。
他の連中はなんだかんだと不安もあっただろうし、迷いもしただろう。最終的に、君の信頼に違わずその選択はされたかもしれないけれど。でも、標となったのは君のゆるぎのなさでしょう。それは安心ですわ。カリスマというほど惹きつける力があるわけじゃないですし、導き手のようにみんなをグイグイと引っ張っていくタイプでもない。でも、ドンと揺るぎなく大らかにどんな出来事があろうと変わらずに立ってくれている不動の柱のような存在に、どれほど安心感があることか。
君が揺るぎなくそう在ってくれるからこそ、みんなも安心して君の信頼に応えられたんだろうかな、と思うんですよね。
ちょっと肝心のラスボスが唐突感もあり、これを倒さないと世界が滅びるという切迫感も敵に馴染みがなかったのであんまり感じられなかったのが、残念だったかしら。せっかくのクライマックスバトルだったのですが。戦闘それ自体は面白かったんですけどね。

何もかもが終わった後の、余韻みたいなものは良かったですねえ。彼らの冒険はまだまだ続くけれど、一区切りがつき、彼らの想いを受け取って引き継いでくれる人達も現れて、冒険者たちの道は続いていく。
そのさきにゴブリンスレイヤーさんたちの冒険が繋がっている、と思うと感慨もひとしおでありました。
はたして10年後、彼らはどのような冒険を繰り広げているのか。女司教だけじゃなく、他の面々の姿もゴブスレさんの本編で見ることが出来たら、嬉しいですねえ。






て、だからこそ鋭く疾く貫く敵を討つ槍であったように