【後宮の錬金術妃 悪の華は黄金の恋を夢見る】 岐川 新/ 尾羊 英 角川ビーンズ文庫

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彼女は”悪女”か? それとも――錬金術で紐解く、中華後宮サスペンス!

異母妹を虐げているとの噂も立つ、悪名高い柳(りゅう)家の娘・白蓮(びゃくれん)。
だが後宮で皇帝・珀狼(はくろう)の目に留まったのは、侍女として連れた異母妹だった。
苛めは酷くなると思いきや……白蓮は得意の錬金術で、後宮夫人による異母妹を貶める罠を、次々と暴いていく!
そんな時『皇帝呪殺』を狙った事件が! しかもその犯人は……白蓮!?

"おまえの本当の目的は何だ?"
彼女は「悪女」か? それとも――錬金術で紐解く、中華後宮サスペンス!

一見、妾腹の妹である木蘭に対してイジメとも取れるきつい態度を取る白蓮だけど、それはあくまで家族から虐げられ、父親からは道具扱いされ、母からは目の敵にされそうな可愛い妹を守るため。
白蓮が幼くして賢人の相を持つのは、安易に腫れ物扱いの木蘭を身を挺して庇わなかった事なのだろう。
正妻の娘とは言え、家の中では実権は無きに等しい。自分がかばうことで余計に家内を取り仕切る母の勘気を逆なでしては、大きな悪意が木蘭に差し向けられる。幼く後ろ盾を持たず、連れてきた父親も無関心。何の力もない子供でしか無い自分が何を言っても、妹を助ける事は出来ない。
今の自分では、この家に布かれているルールに逆らうことは出来ない。ならばこそ、あくまでそのルールに従う建前を押し出しながら、実態として妹・木蘭の待遇を改善させる方法を選んだのである。
表向き、味方をすることは出来ない。あくまで木蘭に対して辛く当たるように見せながら、常に妹に手を差し伸べ続け、いずれ家の檻に囚われた彼女を解き放ってやりたい、と虎視眈々とその時を伺い続けていたんですね。
まあ並の子供の判断力、状況分析力ではないですよ。彼女はその後、錬金術……というよりもこれは化学という方が正しいか。迷信や因習、主観的思考を廃した客観的・論理的思考に基づく世の理に傾倒していくのである。
ハタから見ると常に冷たい表情で感情を波立たせず、高慢に冷徹に振る舞うその姿はまさに悪役令嬢か魔女か、という所なんですけれど、表に出ないだけで結構情熱の人だよなあ。
嬉しいのは、木蘭だけはそんな白蓮の本心を悟っているっぽいんですよね。それとも、無意識に感じ取っているのか。理解しているのか、感じているのか、どちらなのかはわからないんですけどね。
どれだけ厳しく辛辣に接しようと、お姉さまお姉さまと慕ってくる木蘭は健気で可愛いんですよね。アタマお花畑、という訳ではないんですよね。悪意を感じ取れないような娘でもない。実際、木蘭が姉に対してどんな思いを、具体的にどんな感じに姉のことを思っていたのかはわかんないんですよね。慕ってくれているのは本当で間違いないみたいだし、心から尊敬してくれているみたいなんだけど。
後宮に召し上げられた際に木蘭を連れて行ったのも、白蓮としては家の檻籠から木蘭を解き放つ、これがチャンスだと思ってのことなんですよね。幼い頃に無断で街に出た時に、人攫いに拐かされそうになった時に姉妹で助けてもらった皇帝陛下。妹がどうやら、その時の思い出を胸に淡い思いをかの人に抱いているみたいだ、と思ってのことで。うまいこと、木蘭を皇帝に見初めさせてやる、とあれこれ策を弄するのである。これ、若干、自分がまかり間違って正妃にさせられたら面倒くさいから、妹に押し付けちゃれ、という気持ちがないでもなかったみたいだけど。
見ている限りでは、根っからの研究者気質なんですよねえ、この白蓮さま。正妃争いなんてとんと興味ないし、実家からのプレッシャーも知ったことではない。むしろ、木蘭の扱いから実家には嫌悪しかなく、またそれどころではない思いも実家には抱いていたわけですが。
この心が通い合っているのかいないのかわからない姉妹ですけれど、表には出せないながらも愛情を惜しみなく注いでいるお姉ちゃんの妹愛は尊くて、大っぴらに仲良く出来ないもどかしさが何ともそそられる二人でありました。
だからこそ、もうちょっと姉妹の本心での交流がもっとあってほしかったなあ、と思うんですよね。木蘭視点の描写も色々とあってくれたらなあ、と思うところでしたし。
いつの間にか、白蓮があそこまでの覚悟を決めきってしまったのかも定かではありませんでしたからね。あれは犯人をわからなくする意味でも、うまく展開的には迷彩かけないといけない筋書きではありましたけど。
肝心の皇帝陛下との交流も、わりとさっぱりというかあっさりというか、あんまり踏み込んだ所が少なかった気がするんですよね。いや、あの詐術は全然気が付きませんでいたけれど。てっきり、あくまで白蓮はあの阿倍仲麻呂モドキの人と結ばれるのかと思いましたし。
いやそれはそれで面白い構図だと思ったんですよね。妹が皇后となり、姉が側近の妻となり、というのは姉妹の仲が良ければそれはそれで大団円。姉の方が研究者気質で臣下としてもやれることも多そうでしたからねえ。収まりも良さそうに思ったのですが。
しかし、これ姉妹揃って根こそぎ後ろ盾なくなっちゃったのですが、外戚気にしなくていいのは良い事かもしれませんが、妹はともかくお姉ちゃんこれお妃様のお仕事けっこう大変だぞ。