【聖女様は残業手当をご所望です 2 ~王子はいらん、金をくれ~】 山崎 響/伊吹 のつ エンターブレイン

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王子暗殺計画に聖女を巻き込むとはいい度胸だな!?

儚げな美しさと強大な魔力を合わせ持つ心優しき聖女ココ・スパイス。でも本当は前の聖女と酒盛りでバカ騒ぎし、お供のナタリアを嘆かせる常識はずれの女の子だ。今日も今日とて修道院を抜け出し下町グルメを満喫していたら、なぜか庶民の格好で逃げているセシル王子とバッタリ! ココも逃走劇に巻き込まれ、おまけで一緒に逃げることに! 追手はどうもプロの暗殺者のようで……。 王子暗殺の陰謀!? 黒幕の魔の手はココにまで!? やられたら倍返し、ココの秘策が炸裂する! 誰よりも規格外の聖女ココが、あらゆる陰謀を殴り倒す物語、その2!



うわっははははっ、やばいやばい、めっちゃ面白い! めっちゃ楽しい!
ココの暴れっぷりがこれ、外側に向かってしまうとこんなひでえ事になってしまうのか、いいぞもっとやれ!
庶民出身、どころか路地裏でストリートチルドレンとして逞しく生きてきたココが、何の因果か女神からの神託を得て、教会の聖女として祀り上げられること8年。14歳になった今も、その逞しさは衰えるどころか磨き抜かれて、暴虐の徒として教会内部を蹂躙しまくっていたのが一巻のお話でした。
いわば、内輪での話でもあったんですね。元気いっぱい…というには少々タチが悪いココの本性を抑えかねる教会内部の四苦八苦、苦闘の数々、お付きのシスターたちの苦心惨憺、そしてそんな彼女の婚約者であるセシル王子の、女の趣味の悪さ、或いは目の付け所の良さを堪能するお話でもありました。
ココって、そのまま路地裏で暮らしていても、むしろそこでのし上がって暗黒街の女王にでもなっていただろう強かさとアクの強さの持ち主なんですが……ってか、現在進行系で度々教会抜け出しては下町に繰り出して、未だに恐怖の対象として路地裏を根城にしているヤクザものたちにもビビられてるような少女ですからねえ。
何しろ口が悪い、性格が悪い、根性が悪い。聖女として授かった力をふんだんに使用しての力の暴力、生き馬の目を抜く厳しい世界を生き抜いてきた知能の高さを活かした知力の暴力! これで表向きには清楚で神秘的な聖女の中の聖女として崇められているくらいには、外面の繕い方も抜群にうまいわけで、何も知らない人をコロッと騙してしまう詐術も使えれば、口の悪さでデンプシーロールを決められるほどの言葉の暴力の使い手であり、ってか無敵かよ、というようなアークエネミーっぷりなのですが……まあそんな彼女にも天敵と言っていいくらい頭の上がらない厳しい先生がいるので、本当に好き勝手しているわけではないのだけれど。
そんなココ様だけど、12年という聖女の任期が明けたら市井に戻って自由に生きることを目論んでいる一方で、教会上層部としては王国の王子と結婚してもらって年貢を納めて欲しい、とも思っているわけで、その辺の齟齬という攻防が残業代という形で現れていたわけです。

……実のところ、ココさまもセシル王子の事いつも罵倒して足蹴にするような態度取っているのだけど、決して毛嫌いしているわけじゃなくて……むしろ憎からず思ってるんですよね。王子の方も政略結婚だし、ココの事は面白いからからかっている、みたいな態度を取っていつもココをおちょくって遊んでいるのですけれど、本音ではかなりベタぼれみたいで。
さて、ココの年季が明けたとき、果たして彼女は自由を選ぶのか、それとも王子との結婚を受諾するのか、という綱引きが興味深いところだったのですけれど。
今回、セシル王子の王太子という身分が、体調不良の国王に代わって国政に口出ししている武闘派の王弟が野心を剥き出しにして、セシル王子を排除にかかったことで事態が急変。
しぶしぶ、という体をとりつつも、ココさま前のめりでセシル王子を助けるために王弟派、並びに主だった貴族連中へと喧嘩を売ることになるのである。
さあ、あのココさまの暴れっぷりが内側ではなく、外部勢力へと向けられてしまった、ということで教会の連中は開放感たっぷりにやったれやったれ、と全面後押し。解禁されてしまったココさまのあらゆる暴力が、調子に乗って王国を壟断しようとする王弟一派へと襲いかかるっ、てなもんである。
……敵に回してはいけない、やばい奴を、ガチでヤバい奴をそりゃもう盛大に敵に回してしまったバカどもの末路が、花火のごとく打ち上がります。たまやー!
やーー、ココさま、やりたい放題! 王弟のおっさん自体、野心ばっかりプライドばっかりが先立って品性が追いついていないようなまあみっともない人なのですが、ヤラれ役としては最高です。でも、何よりココさまの暴れっぷりが痛快すぎて、カタルシスの過剰接種だよこれ。楽しい、楽しすぎる!!
煽る煽る、もう煽り倒す。実際問題、セシル王子、周りは裏切り者ばかりで信用に足る人物も殆どおらず、一時期は自分の執務室から表に出ることも叶わず、王宮内ですら下手にうろつくと拉致られて何をされるかわからない、という所まで追い詰められて、かなりのピンチだったんですよね。
なんだかんだと、助けに行くんだよなあ、ココさま。ふてぶてしいまでに、心配する乙女みたいな顔は一切見せないんだけど。それでも、セシルサイドにつかないと後はないぞ、腹据えて覚悟決めろやっ、と発破かけて何気にさらっと修道女OG動員して各貴族を奥様の側から勢力図塗り替えていくなど、政治的活動もぬるっとこなすし、なんだかんだと王妃の資質抜群にあるんだよなあ。
先代の聖女様との関係もなんだかんだと最高で……ってか、先代聖女さま、ココと同類じゃん!! こっちはちゃんとした高位貴族出身にもかかわらず、聖女就任時のゴタゴタでよほど腹据わったのか、ココから姐御と慕われるような女傑というのが本性で。教会、マジで大丈夫か、ほんとにこれ宗教団体なのか?w
「ヤリまくりよ!」と親指立ててウインクする先代には爆笑でした。
結婚間際に聖女認定されて、12年の任期を務めなくてはならなくなった先代聖女エッダ様。そんな彼女のために、婚約を破棄することなく聖騎士として12年もの間側に侍り、年季が明けると同時に今度こそ結婚に至った婚約者との愛の美談の実態には、もうなんか最高でしたよ。
まあ実際ヤリまくっていたとはいえ、子供作るわけにはいかず(結婚した後めっちゃ産みまくったみたいですが)、禁断のシチュエーションに燃えまくった12年間だそうですが、それでもエッダさま長い年季だったわけで、それを思うと幼児の頃から聖女やってたココは、あと4年だけなんですよね。年季が明けてもピチピチの18歳。もうこれ、王子と結婚しようぜ、と言われているようなもので。とにかく、あらゆる事情が政治的にも勢力均衡的にも王子とココの結婚を後押ししてるんだよなあ。
そして今回の一件で、貴族連中は聖女ココの本性と恐ろしさを思い知ってしまったわけで、もう逆らう相手がいねえ。王弟殿下を政治的にも肉体的にも精神的にも徹底的にフルボッコにした挙げ句の、あの決めのポーズはひどすぎて最高でしたw
でも同時に、この一件でココはセシル王子がどれほど気の休まらない環境で生きているのかを見知ってしまうんですよね。一番の側近ですら信用しきれない、信用してはいけない環境で、彼は唯一、ココの側だけに安らぎを見出している。
建前の奥、裏の事情の更に奥。セシル王子がココを嫁に迎えたい本当の本心からの理由。ただシンプルに、ココの事が好きだから。それを、ココ自身も感じて察しだしている、そんな面映ゆい甘酸っぱいラストシーンでした。
まったく、全然まんざらじゃないのにねー。殺す後で殺すとつぶやきながら真っ赤になった顔を掌で覆い隠して、背中の王子のぬくもりを感じでうめいてるココの可愛いこと可愛いこと。
やー、ごちそうさまでした、ですよ、うんうん。