【浅草鬼嫁日記 十一 あやかし夫婦は未来のために。(下)】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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今世をひたすら守ると誓い、「最強の鬼嫁」夫婦は浅草から未来へ向かう!

封鎖された浅草で、真紀と馨はミクズの待つ“狭間”の最深部へと向かう。そこでは叶がミクズを抑えるため死力を尽くしていた。相対するミクズも力を解き放ち、浅草の蹂躙を始める。その時、分かたれたもう一つの“酒呑童子”の魂を持つ来栖未来が、“童子切”を携えて現れたのだった――。
浅草には鬼が出る。千年昔の鬼夫婦“茨木童子”と“酒呑童子”が転生した少女と少年。二人はかつて滅んだ“あやかしの国”を巡る因縁を超え、今世を守ると誓う。あやかし夫婦は未来のために。二人の物語はここからはじまる!



感謝感謝の最終巻でありました。
前巻から続くミクズとの最終決戦は短めに、決戦終わって戻った日常とそこから新しい人生への旅立ちをじっくりと描いてくれました。やっぱり本作は浅草での平和でのんびりとした日常風景が一番の持ち味でしたもんねえ。
とはいえ、決戦では過去から続く因縁にけりをつける区切りとしての大きな意味がありました。茨木童子としての真紀ちゃんの本当の意味での長い旅の終わりを意味する、酒呑童子の首の奪還。
生まれ変わって馨とは再会出来ていたとは言え、大魔縁・茨木童子としての心の決着はついていませんでしたからね。そして、もう一人の酒呑童子の魂を引き継ぐ源頼光の生まれ変わりである来栖未来。彼もまた過去の引きづられ、ミクズによって惑わされ、今の人生を見失っていた一人の迷い子。未来と名付けられながら、ずっと未来を見失っていた彼が自分を縛る過去にけりを付けるのに、この戦いは絶対に必要だったのでしょう。この時点では、まだ未来に目を向ける余裕がなかったとしても。

終わってみれば、真紀ちゃんも馨もあまりにも多くの人たちに助けて貰っていた事に気付かされるんですよね。いや、今更気づくんじゃなくてこの娘たちはその折々でちゃんとわかっている娘たちでしたけれど、すべての因縁に一区切りがついたことで改めて自分達を助け支えてくれた人たちに感謝する姿に、何とも心地よいものを感じるのでした。
丁度、生活の方は高校が卒業を迎え、それぞれが新しい道に歩みだす時期。真紀は京都の陰陽師の専門学校へと通うことになり、馨も一念発起して京都大学を受けて真紀ちゃんについていく所存、となり、二人共が慣れ親しんだ故郷・浅草を旅立って、新天地での生活を始める、という段になったからこそ、馴染みの人たちのところを挨拶回りする際に、改めて感謝の念しか湧いてこない、という状況になったわけですけれどね。逆に真紀ちゃんもそれだけこの浅草で多くの人達を助けていたという意味でもあり、改めて改めて、多くの人達と良い縁を繋いでいたんだなあ、と。
再び真紀ちゃんの元に集った茨木童子の眷属たちもこれを契機に新たな道を歩み始め……って、半分は京都まで付いてくるんですけどね! 年長組の方が真紀ちゃん離れ出来てない気がするぞ!
特に凛音。キミはどういうポディションなんだw 呼んだら絶対駆けつける、って常にストーカーする気満々なんだが。実際呼んだら出てきたしw

でもそうかー。真紀ちゃんと馨が浅草を離れてしまうというのは、なんか信じられないですよねえ。それくらい、この土地に馴染み染まりきってた。思い出してみたら、彼らの故郷は京都のはずなんですけどね。人間として生まれたこの二人の今の故郷は間違いなくここ浅草だったのです。
現代ならいつでもすぐに帰ってこられるけれど、やはり高校卒業と同時に故郷を離れて新天地へ、というのは特別な思いをはらみます。そう、特別なんだよなあ。二人で、通い遊んだわが町を名残惜しげに見て回る二人の散歩デートが、なんか雰囲気良かったですねえ。
いや、もうゴールデンウィークには帰ってくるつもり満々なんですけど。
しかし、寂しい気持ちと同時に、いやそれ以上に京都で真紀ちゃんが何を巻き起こすのかが楽しみでワクワクしてくるわけですよ。高校は卒業だけれども、学園編はこっからだよ! メイデーア転生物語の方でもそうでしたけれど、才能ある同世代の若者たちが集う学園の中に我らがマキちゃんが乗り込んでいく、というシチュエーションは際限なくワクワクしちゃうんですよ。
今回なんぞ、茨木童子の生まれ変わりという突拍子もないファクター付きですからね。それ以上に、真紀ちゃんの性格上のぶっ飛び具合がうなりをあげることこの上なし、なのでしょうけれど。
敢えて馨は京大の方に進学で進路が違うというのも面白いところで、由理もまさかの京大進学となるとは思わんかったけど、真紀ちゃんそっちのけでこっちはこの二人で京都の貧乏学生生活に馴染んじゃいそうですし面白そうなんだよなあ。

番外編で未来の京都での新しい生活を描いたエピソードが描かれていましたけれど、ずっと余裕のない崖っぷちに立たされて負の感情に急き立てられていた未来という子が、本来どういうキャラクターで日常風景の中でどんな顔を見せてくれるのか、どんな立ち位置で振る舞う子なのか、というのがこの番外編でようやくわかった、というか収まった気がします。だから、もっとこの子と彼に出会うことで運命が変わった化猿の花嫁たるあの少女のお話ももっと見てみたいんですよね。

いやもうこれ、スムーズに次は京都で話が続きますよ、的に物語が進んでるんで、普通に次の巻は京都編です、となってはじまるのかと思ったら、最終巻ですとーー!? 
すぐに京都鬼嫁学園日誌がはじまるんじゃないんですかー!?
作者さまがあとがきで完結の感慨に耽っていらっしゃるの気持ちはわかるんですけれど、こっちは全然終わった気していないので意外と感慨もあったもんじゃないんですよね! 
構想はちゃんとあるみたいなんで、その点は一安心ではあるんですけれど、他のシリーズもあるのでしばらくは間が空きそうなのが……おおう。まあ、その間に他のシリーズを嗜んでおけばいいのですが。
新たに登場した水無月さん、彼の出てくるシリーズまだ読んでいないですし。

作中の真紀ちゃんの台詞に「青春の終わり」という言葉が紡がれましたけれど、過去にケリを付けて…というよりも受け入れて糧にして今の自分達の確かな一部にして未練を晴らして、気持ちよく振り返られる過去になり、そうして未来に辿り着いて歩いて行く、そんなエンドに心温かくなりました。
少しだけ、人間になってしまった事で眷属たちや友人となったあやかし達を置いて先に逝ってしまう短い人生を儚む思いがあったのですけれど、それも叶先生と葛ノ葉の姿を見たことで晴れました。
彼らのように精一杯生きて、その果てにたどり着ければそれはとても素敵なことなのでしょう。
……ってか、この二人が死んだくらいで死んだままになるとは思えんしなあw 特に馨は、死ぬ前からずっと地獄で働いてそう。社畜の才能ありありですしw

ともあれ、ハッピーエンドの幕引き、お疲れ様でした。素敵な夫婦の物語、ありがとうございました。いやまあ、全然幕引かれた気してないんで、新たな真紀ちゃんの活躍首を長くして待ってます♪