【JDとプロフェッサーの黄昏戦記 1】 獏末 カナイ/風花 風花 富士見ファンタジア文庫

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戦場は広大な砂漠。埋もれてしまった愛と真実を、見つけ出そう。

とある事件をきっかけに日本を離れ、軍へと身を投じた羽野時矢。整備士としてJDと呼ばれる女性型戦闘兵器からの信頼も篤い彼だったが、ある日、戦線に巻き込まれーー。目をそらしてきた真実が、姿を現わし始めた。

ジャッジメントドール、略してJD。それがこの物語の世界の中で運用されている女性型戦闘兵器の名称だ。
……女子大生じゃなかったのかぁっ。
何を言っておるのだ、と言われそうだが、JDという単語を見たらそう連想してしまう生き物なのです、すみません。なので、作中でもJDJDと書かれているのを見るたびに女子大生がアタマを過ってモワーっとなってしまいました、すみません。
JKだともはや慣れ親しみすぎてだめですね、JCやJSはあざとすぎる。いや何言ってんだ、という話ですが。
まあそれくらい? JDの彼女たちは普通の女の子をしていたのです。機械なの? と思うくらいに人間と変わりない情緒と意識、感情、個性を持った兵器達。そりゃ、人間側だって感情移入してしまいます。それどころか、彼女らを兵器として消耗することに果たして人間側の精神が耐えられるのか、と疑問が浮かぶところだったのですけれど、基本的に彼女らJDというのはそのパーソナルの元データは「ライリス」というクラウドにあって、いわば肉体というべき機械体はアバターみたいなものだから、戦闘で失われても他の機体にインストールすればよいので、どれだけ損耗しても大丈夫、という設定があるわけですね。
いやでないと耐えられないよ、人間の側だって。肝心の生身の人間の登場人物が少なくて、その大半がJDと人間とを区別せずに扱っているタイプの人なので、果たしてこの世界でJDがどのように扱われているか、というのは世界観の解説文で語られる範疇でしかわからなくて、生の人間の声や意識は伝わりにくいんですけどね。完全にJDを道具としてしか見てない司令部のあの副司令官は、そもそも社会性が破綻している異常者っぽいので、基準になりにくいんだよなあ。
ぶっちゃけ、これだけJDが人間と変わらないと、戦闘兵器とただの兵士の差を感じられないんですよね。加えて、途中からライリスが破壊されてJDたちが体を破壊されたら復活できずに終了、という人間と変わらない状況になったので、なおさらに。おまけに、主人公の時矢くんはJDを人と変わらない扱いをする代表的な人物であり、JDが破壊されることを何の違和感もなく死んだという風に表現する人ですからね。
ついでにいうと、アイリスという人間の少女が限りなく人間に近い有機物によって構成されたJDです、でおおむね罷り通っていた時点で、人間とJDとの差異がもうわかんないんですよね。
そこらへんを際立たせて、機械と人間の立ち位置の差、それを埋めるための理念や言動といったSF的な掘り込みはあんまりありませんでしたし。
ただその分、個々のJDのキャラクターはその情緒の深さも加味してとてもキャラ立ってましたけれど。特にリーダー格であると同時に母性的で時矢くんに対してもどこかお姉さん的な庇護を垣間見せるシオンや、過去に何かあったことを匂わせつつ人間との関係の中に愛情というキーワードを混ぜ込んで意味深な言動を見せるバルなど、それぞれに複雑な感情を胸に秘めている描写があって、むしろ人間のはずのアイリスの方が構造単純そうな思考回路してませんか、という感じでしたし。
そういう意味で、機械と人間という境目を感じさせない主人公と彼女らの関係はとても切り捨て切り替えられない情の絡まりがあって、そこに戦争というファクター。窮地に陥りながら彼女らを戦場に送り出さなければならないという苦悩、そして動的な戦闘シーンも相まって読み応えある作品でした。
でも、ちょっと要素要素がうまいこと噛み合ってないというか、結構勢い任せで突き詰めが甘い感じがするのも確かで。土台部分をもうちょっとしっかり固めておかないと、後々勢いがなくなるにつれて曖昧模糊となってしまいそうなのがちと心配かもしれません。次が大切ですね。