【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 7 ~ヘンダーソン氏の福音を~】  Schuld/ランサネ オーバーラップ文庫

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新米冒険者、ファイターLv1です!

新たな出会いと別れ、そしてクソイベの果てに、故郷へと辿り着いたデータマンチ転生者エーリヒ。
容姿は幼いままでありながら凄腕の狩人に成長した幼馴染マルギットや変わらぬ両親、成長した兄弟やその家族らに迎えられた彼は、しばし穏やかな日々を過ごす。
そして季節が変わる頃、かつて交わした約束の通り、エーリヒはマルギットと共に冒険者となるべく故郷を旅出つ。
向かうは、数多の冒険者が集う辺境の都市マルスハイム。
冒険者としての日々への期待に胸を膨らませるエーリヒだけど、道中も到着してからもやっぱりトラブルの連続で……?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、新たな門出の第7巻!
オマエのような「新米冒険者、ファイターLv1」がおるかーー!! てなもんである。
うん、これはヒドいw
昨今、冒険者登録をして早々の新人初心者冒険者だけど、既にベテラン冒険者を上回る強さで最初のランク認定で無双、なんてのは珍しくもないどころかそちらが定番なんだけど。
違うのよ。エーリヒは違うのよ。そういうわかりやすい強さを振りかざして喜ぶくらいなら「お可愛いこと」で済むんだけれど、この男のたちの悪さはそんなもんじゃないのよ。
いやさ、なんで冒険者として活動を初めて間もないのに、それも地道に街なかでの雑用や猫探しなんていう極々当たり前の新米の下請け仕事ばかりに勤しんでて魔物退治やら護衛やらの派手な仕事、どころか戦闘するような荒事も、街の外に出ての採取や調達の仕事すらもしていない、正真正銘のニュービーとしての活動しかしてないはずなのに。
なんで、速攻で都市の主要なマフィアタイプのクランのボスたちに混じって、顔役の一人に収まってるのかしらー!?
ヤクザか半グレか、というよりもほんとに海外の治安の悪い都市を牛耳るマフィアみたいな感じに幾つかのたちの悪い冒険者クランが街の裏側の秩序の一端を担っている、というあたり帝都などと違って辺境の都市らしい公権力が及ばないアウトローな風情があって大変よろしいのでありますけれど。
いやだから、どうして着いて早々、その裏の秩序の一角を担う顔役の一人になっちゃってるんですかね? そりゃ、新人を搾取スべくちょっかいかけてくるチンピラ紛いの連中をあしらってたら目をつけられた挙げ句、クラン同士の縄張り争いに巻き込まれてしまった、というのはありがちな展開かもしれません。
往々にして普通の作品だと適当に絡んできた連中をぶっ飛ばし、上役の組織の幹部クラスまでぶっ飛ばして力技で障害を排したらわりと安牌に悪徳組織は潰れちまったりするもんなんですけれど、エーリヒてば何しろ謀略と政治的暗闘のメッカである帝都でブイブイ言わせてきた今帝都で一番注目されている宮廷魔導伯アグリッピナ師の片腕として、帝都の闇でやりたい放題やってた人ですからねえ。
力技で無理やり障害をぶっ壊すのではなく、有無を言わさぬ暴力を鼻先でチラつかさせて黙らせた上で、敵味方をキレイに寄り分けた上で政治的暴力で取り囲んでごめんなさいと言うまでひらすら威圧的にナシをつける、というまさに帝都流のやり方、アグリッピナ師譲りのやりたい放題で。
一応、マルギットにちょっかい出されるまで我慢していた、自重していたつもりだったみたいだけど、それまでも十分相手逆なでする挑発しまくってるっちゃしまくってるんですよね。息を吸うように煽ってますよ!? さて、それが帝都流が魂まで染み付いちゃっているからか、それともTRPGプレイヤーの業からかはわかりませんけれど。
ともあれ、初っ端に剣を交わして誼を通じた女鬼ロランスのクランを味方につけて、新人が関わっちゃいけないと戒められる半分犯罪組織となってるヤバいクランのボスの元に乗り込んで話をつけて、自分とマルギットにちょっかいかけてきて完全に敵認定したクランに対して追い込みかけるエーリヒ、最初から最後まで主導権握り続けてて、抗争寸前になってる各クランのボスが集まって会合する中に混じっているどころか音頭とってるの、完全に街の顔役の一角になっちゃってるんですよね。

エーリヒくん、キミてば表ではもうすぐ一番初心者ランクの煤色から真面目に仕事してるからそろそろ昇格できますよ、と言われてわーい、と喜んでる一方で、裏ではヤクザクラン集めて、おいこらいい加減落とし前つけろや、と脅しかけて街の誰もが腰引けて名前聞くだけでビビるようなヤバい組織から全面降伏の詫び入れさせてるとか、どんなやねんw
いつもみたく、明らかに人外のヤバい相手に限界戦闘繰り広げてしれっと生き残るどころか、色んな意味で黙らしてしまうど派手な戦闘シーンは今回、直接干戈を交える事が少なくて殆ど無いに等しかったのだけど、その分帝都の闇の一線級の謀略力、パワーゲームプレイヤーとしての暗闘力、政治力の棍棒の威力を、こんな辺境の街のマフィアの縄張り争いに大いに振るってしまう、という……大人げないえげつなさを見せつけてしまった感じである。

前半、故郷に帰郷して懐かしい家族と一冬をともに過ごすシーンがまた良かったんですよ。久々に末の弟として家族の温かい交流に浸り切る日々。父や兄たちと母や義姉から説教食らったり、好物の家庭料理を山ほど食べたり、まだ幼い甥っ子を甘やかして遊んだり、末っ子エルザの近況を伝えたり。
兄貴たちの人生設計も順調で、継嗣である長兄の結婚生活も幸せそうで、うんこのままいつまでもぬくぬくと温まっていたい幸せな時間がそこにあったわけです。
でも、夢のために春とともにそこを飛び出して旅立つというこの逸る気持ち。羽を休めて我が家の居心地の良さに感じ入るからこそ、旅立ちの日が心に来るんですよね。
未練を振り切って、大好きな家族に別れを告げて、相棒と共に夢に向かって改めて旅に出る。うん、思い描いていた冒険者生活に、ついに辿り着いたわけだ。
そして、速攻なんか違うことになってるしー!?
それってエーリヒが思い描いていた冒険者生活と全然違うと思うんですけどー!?
春になってついに荘を旅立つときに、甥っ子たち小さな子供たちから行かないでー、と泣きつかれてしまうくらい懐かれていた金髪の可愛いお兄さんの微笑ましい光景が、一転してこれですよw
まだ自分のクランも何も作ってないのにねー。

表向きはほんと、マルギットと二人で初々しい冒険者事始め、をやってるんですけどねえ、ちゃんと。英雄とも謳われる冒険者が夫婦で営む宿に二人でお世話になりながら、コツコツと日銭を稼いで少ない稼ぎからちょっとした贅沢をしたりして、とちゃんと夢の冒険者生活は堪能してるんですけどねえ。それで収まらないのが、エーリヒのダイス運という事なのでしょうか。

IF編である巻末のヘンダーソンスケール1.0では、ヤクザクランたちからちょっかいかけられたのにブチ切れて、全部暴力でぶちのめしてしまったケースでの顛末をやっていましたけれど、そうなるとガチの街の裏側の顔役ルートになるのかー。マルギットが完全に極道の妻になっててワラタ。
マルギットは、エーリヒが誰か特定のヒロインのルートに入らない限りはエーリヒがどんな顛末を辿ってもほぼ離れずに付き合ってくれるあたり、真実比翼の相棒なんですよねえ。

と、そういえばマルギットの表紙は一巻以来。本格的な再登場も一巻以来だったのか。あまりにエーリヒの傍らが似合っていて久々の違和感なかったですわー。荘に居続ければきっちりとした身分がある身の上でありながら、跡継ぎは妹に譲ってエーリヒの夢につきあってくれるという、幼馴染の極みですよねえ。マルギットの家に挨拶に行くの、ほぼ結婚報告みたいなものでしたし。
見ている限り、エーリヒがこれだけ幼い口調になるのってマルギットの前だけなんだよなあ。