【のくたーんたたんたんたんたたん】 ムラサキ アマリ /おりょう MF文庫J

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1/2275の頂点!ふざけたタイトル、だけどこれが新人賞最優秀賞!

「父さんを殺した《亡霊》に復讐するためなら、僕は悪の道を進む――!」
それから五年、緋野ユズリハは裏社会で《死神》と恐れられる都市伝説(ころしや)になった。全ては復讐のために。《亡霊》の手掛かりを掴むためならば友を殺し、担任教師を殺し、その日も少女を一人殺した……ハズだった。
「私は魔女です。悪魔と契約し、決して死なぬ身体となりました」
少女は何度殺そうと立ち上がり、ユズリハに殺され続けた結果「惚れてしまったようです」などと口走り――? 都市伝説が織りなす愛と殺しと復讐の夜想曲第1番、開演――!

のくたーんたたんたんたんたたん。……たたんたんたんたたん、ってどんな音なんだ?
幾つか著名な夜想曲を聞いてみたけれど、駄目だ、よくわからなかった。
タタンタンタンタタンって、微妙にリズム取りにくいんですけれど。それものくたーんから続けるとなると、フレーズがしっくりこないんですよね。
ノクターンタンタンタタンタンタンタタンタン……うん、自分はこっちの方がしっくり来ますね。ふふふ、収まりよくなった。なんか口の中に小さな石粒が入ったような違和感があったので、すっきりした!

……いや、だからなんだという話なのですが。でも、タイトルですし、なんかどうしても気になっちゃったんですよ。なんとなく口ずさめないテンポの違い、これ気持ち悪いじゃないですか。
ノクターンタンタンタタンタンタタンタン……ってさっきと違うやん! すみません、口ずさむ度になんか違っちゃいます。
やー、でも最初にタタンから入るのとタンタンから入るの、導入が違うんですよ。ノクターンタタンだとなんか躓くんですよ。んん?となっちゃうんですよ。

って、全然作品の話と全然関係ない話に終始してしまっていますが、まあ何しろこの作品、タイトルでまずつかみを持っていくタイプの作品なだけに、ここは避けられないテーマ。
比べて、中身はむしろ非常にオーソドックスな内容なんじゃないだろうか。設定に対する解析度もゆるゆるの緩めですし。
これだけ父親のことを慕っている息子、というパターンは案外珍しいかもしれない。母や姉妹の敵討ちじゃなく、父親の敵討ちのために幼い頃から殺し屋の道に踏み入ってしまうほどに、父一人子一人の家庭であったとはいえ、父親に対して息子は入れ込んでいたのだ。愛していたのだ。人生を踏み外すほどに。往々にして父親とは乗り越えるべき障害にも関わらず、いや憧れ追いかける対象にもなり得るけれど……そういうのとはちょっと違う感じだなあ。あくまで、平凡な父親、平凡というのもちとおかしいが怠惰でだらしなくてでも彼と過ごす家族の日常を、ユズリハは何よりも大切に思っていた。そう思えるほどに、父ギンジロウはちゃんと息子との時間を善き形で作り出していたんですよね。世のお父さんのどれほどが、彼ほどに父親やれているだろうか。
たとえ、目的あったとしても。ユズリハが復讐のために殺し屋になってしまうのは目的の内だったんだろうけれど、それでも思惑以上に懐かれてしまったんだよなあ。そして思惑以上にこの仮初の息子を愛おしんでしまったのだ、このろくでなしの父親は。
本当にろくでなしだ。どちらにも徹しきれない半端さが、あまりにも人間らしい。息子の育て方を間違えた、いや間違えなさすぎたのか。
いずれにしても、人間としての真っ当な日の当たる道を踏み外してしまったユズリハ。にも関わらず、その中身は善良で真っ当過ぎる感性を有したままだ。はっきりいって全然壊れていない。壊れていないにも関わらず、死神なんて呼ばれるほどの凄腕の殺し屋として仕事を全う出来てしまっている。この矛盾こそが、ギンジロウの成果であり誤算なのだろう。
ハナコは、そんなユズリハのどこに惚れたんでしょうね。彼女の好意は唐突すぎて理由や要因がわからない。本人にもよくわかっていないが、そもそも理由なんてないのかもしれない。それこそ真実の一目惚れだろう。裏表なく、純粋に感情の反応。ある意味、それこそが無垢なる愛なのかもしれない。
それが良かったのか。
ユズリハにとって、何の重石も理由もない、ただ恋したから恋という紐づけのない思いだからこそ、彼にとっての命綱として掴めたのかもしれない。ふらふらと流される彼の魂のアンカーになってくれたのかもしれない。そう考えれば、悪くはないんですよね。彼女のあっけらかんとした在り方って。彼女の示す幸福って。これまでの人生のすべてを否定され、しかしユズリハの方からは決して否定しなかった人生の、幸福の証となり得るんじゃないだろうか。ハナコの存在とその思いとは。

ただまあ、とりあえずあの悪魔ですよ。正直、悪魔としては非常にランクが低かった。人間への理解度解析度が低すぎる雑すぎる役に立たない実態とかけ離れた道徳の教科書でも参考にしたのか、というくらいのテンプレ的理解度。全然人間を知らない、わかっていない、非常に浅い理解しかしていない。そういう意味で高位悪魔らしからぬ低俗さである。もっと勉強しろよ、長生きしてるんだろ?

あと面白かったのが、ハナコの不死人としての自由度である。不死の存在に対する戦い方、封じ方、殺し方というのは多々あると思うのだけれど、これ大概無効化されちゃうんじゃないだろうか。
無効化というか、無意味化というか。少なくともコンクリ詰め、火山火口に投棄。宇宙空間に打ち上げ、とかの系統は意味なさそう。いやこれマジで質悪いな。増殖、とかしないだけまだマシなのかもしれないけど。