【魔界帰りの劣等能力者 10.魔人と神獣と劣等能力者】  たすろう/かる HJ文庫

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魔人と化した敵を相手に、神獣たちが降臨する!!

祐人の参戦をきっかけに、妖力を解き放ったオサリバンたちとの壮絶な乱戦は始まった。
一人一人がSランク以上という圧倒的強者たちの規格外な戦いが繰り広げられる一方で、四天寺の術者たちと【万の契約者】マリノス一人による物量戦も幕を開ける!!

「……嬌子さん、来てくれる?」

そして、敵の戦力が出揃ったその時、ついに祐人は最強の切り札を戦場に投入する――
最弱劣等の少年が最強の神獣と共に魔人に立ち向かう、第10弾!!


大祭の参加者の中に潜んでいた四天寺を狙う強大な刺客たちの強襲からの乱戦となった四天寺決戦もクライマックス。
敵の陣容が厚い上に一人一人がこれまで出てきた敵キャラを上回るクラスの連中ばかりなだけに、幾ら祐人が尋常でない能力を有していると言っても明らかに一人で対処は不可能だ。
とはいえ、祐人は戦力の要として機能しているけれど、決して一人で戦っているわけじゃないんですね。四天寺の能力者チームはこれ一人ひとりは決して突出した能力を持っているわけじゃないんだけれど、格上相手でも多数の魔獣相手でも隊として機能的に動くことで見事に戦線を維持している。大概この手の無名の人たちって適当に蹴散らされておしまい、なんて扱いが多いのだけれど、この四天寺の人たちはちゃんと精鋭の名を汚さない戦いっぷりで、全体の指揮を取っている孝明さん含めて非常に頼もしいんですよね。
その上で、剣聖アルフレッドとその仲間たちも居て、決して祐人を孤立させていないのです。
隔絶した力を振るう彼だけれど、これは彼だけの戦いじゃないのだ。それを祐人自身もちゃんと理解して、乱戦になっているとはいえ戦場の空気を読みながら立ち回っているの、強いだけの戦士じゃなくて数々の戦場をくぐり抜けてきた歴戦の戦部という感じがしてすこぶる格好良かった。
必要あれば、そして本当にどうしようもなく危険なら身を挺して大切な人たちを逃がすだろう祐人が、瑞穂やマリオンを戦場に連れてきている時点で、彼がどういうつもりなのかは何となくわかるんですよね。でも、なまじ祐人の強さを知っていて、敵の強大さを目の当たりにしてしまったマリオンは自分の立ち位置を見失ってしまう。祐人がどういうつもりで戦っているのかを忘れてしまう。
これまで、祐人が危ないことをしている、死と隣合わせの戦場で戦っているなんて知らなかった幼馴染の茉莉が、誰よりも祐人の在り方を理解していた、というのはなんかこうくるものがありますよね。
死戦の最中で言葉を語ることの出来ない祐人に代わって、彼の想いを彼の生き様を代弁してパニックになっているマリオンの心に届く言葉を投げかける茉莉にはグッときましたよ。丁度、相反することをマリオンに言い聞かせようとしていた水重の言葉をはねのける形だったからなおさらに。
思えば、誰の記憶からも消え失せて孤独の闇に陥りそうだった祐人を、たった一人忘れること無く覚えていて引っ張り上げたのは茉莉だったんですよね。
唯一にして無二たる孤高の道を行こうとしている水重に対して、祐人は魔界で多くのものを失ったかもしれないけれど、茉莉が居たことで独りではなくなった。今こうして彼の周りには記憶の消去を乗り越えて集い続ける友人たちがいる。たった独りの道を征く水重との大きな対比となっているのだろう。
妹ちゃんは、残念ながら水重の重石となりえなかったですからねえ。でも、まだ手遅れではないのかもしれないけれど。
茉莉ちゃん、戦う力こそないのだけれど、なんていうか司令塔? 前線で剣を振るう祐人に代わって全体を見渡せるポディションがなんかしっくりくる感じなんですよね。それ以上に、精神的支柱というか仲間たちの中で誰かが違う方向に行きそうになった時に方向修正してくれる、チームの指針となる人なのかもしれない。祐人に対してすら、彼が迷走したときにバシッと正してくれそうな頼もしさがあるよなあ。

しかし、ここでジュリアンはじめ敵の主力を仕留めきれなかったのはかなり痛い。もう一人二人は墜とせるかと思ったんだけれど。剣聖に四天寺のパパまで参戦して、祐人も本気で連中から情報を吐かせるためにも捕まえるつもりだったのに。
それだけ、連中が想像よりも強力であり惜しげもなく切り札を切っていた決断力もあり、水重という最大のイレギュラーもあり、と仕方ない面もあったのですが。あれほどの強敵がこりゃあかんとなったら死力を振り絞ってボロボロになりながらも必死に逃げに徹したら、そう簡単にはいかないか。
よく敵勢力、あっさりと逃げてしまう展開がありますけれど、あれってもっと本気で追いかけろよ、と思うんですけれど、今回に関しては本当に逃げ切れるかわからないというくらいに追い詰められ、それでもなりふり構わずなんとか撤退に成功した、という激烈な攻防が繰り広げられての結末でしたから、十分に納得でありました。
ジュリアンも、なんか本性現したら微妙に小物っぽいぞ、と思っていたところでどうやらさらに一段奥があるみたいで。少なくともここでチャッチャと仕留めてしまってもいいだろう、くらいの敵ではない事がわかって良かったです。

ただ、今巻最大の見せ場になりそうだった、祐人と契約している神獣たちの大召喚が案外とサクッと終わってしまったのはちと拍子抜けだったかもしれません。相手が有象無象だったからなあ。相手のデュラハンとかとガチバトルになってたら、もっと盛り上がっていたのかもしれませんが、サクッと掃討戦みたいになってたからなあ。そっちは置いておいて、の祐人側のクライマックス戦闘が大いに盛り上がってた事もありますし。

しかし、あれだけガチで感情を高ぶらせてギリギリのところで戦っていた祐人なのに、なんでか全部終わった後の瑞穂とのデモンストレーション決勝戦の方が桁違いに悲愴感がヤバいことになってたんですけどw
いや、合コンでそこまで怒らないでも、と思わないでもなかったけれど、うん大祭という瑞穂の婿取りイベントに勇躍参加しておいて、終わったらそっち放置して合コンに参加するつもりだった。めっちゃ楽しみにしてドキドキ・ワクワク浮かれまくっていた、なんて事が知れてしまったら、そりゃ怒るか。女性陣、まとめて怒るとそりゃ怖い。全員目のハイライトが消えるの、迫力がほんとに凄いんですけどw でもワラたw
まったく、一悟の友達甲斐ってやつよ。合コン、それでも決行するとか、こっちも凄いな!!


番外編では、止水先生の日常編再び。止水さん、着々と名物教師の道を歩んでるんですけど。なんかこのパートだけどんどん進展していってもそれはそれで面白いぞw