【魔術師クノンは見えている 3】  南野 海風/Laruha カドカワBOOKS

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水魔術で空を飛び、水中で呼吸する――天才の魔術探究に常識は通じない!

魔術学園での商売を早くも軌道に乗せ、実力で三派閥同時在籍を勝ち取ったクノンは、各派閥の先輩と共同研究を開始!

特に水中での呼吸法の研究は、いつしか難破船の財宝探しへと話が広がり、ついには実地調査で海に飛び出すことに。特級の生徒なら海底だって散歩道!

巨大魚に襲われてもーー「大丈夫。水辺は僕の領域ですから」

使える魔術のレパートリーも倍に増え、ますます実力をつけた盲目の天才による、常識破りの魔術探求・第三弾!


たっのしそうだなあー! これまでは、クノンの突拍子もなさに周りが振り回されてるような傾向でしたけれど、特級の生徒たちも上級生になってくると、こいつらクノンと大差ないんじゃないか、という魔術狂いばかり。
いやうん、エリート魔術師の集団である宮廷魔術師たちが、揃いも揃ってクノンの魔術に目をキラキラ輝かせて大人気なくはしゃぎまわっていた時点で、魔術師の上澄みの連中って大概こういう人たちなんだ、というのは分かってたはずなんですけどね。
魔術が好きで好きでたまらなくて、人生全部魔術にささげてしまっているような人たち。魔術を使って何かをしよう、っていうんじゃなくて、魔術そのものが好きなんだよなあ、この人たちは。
そういう人たちは結局、若年からそういう色に染まっちゃっているわけだ。そういう人たちが学園へと集まり、特級というクラスに、沼に自ら頭から飛び込んでいくわけだ。この狂気の世界についていけない人は、自ずと脱落していくし、脱落しねえやつは総じてヤベえやつってことですね、わかります。
自分で生活費稼がなくちゃいけない、とか必要単位を取得しないといけない、というのは放っておくと魔術研究に没頭して戻ってこなくなってしまうだろうこのマッドたちにある程度でも社会性というものを身に着けさせるための最低限の枷であり教育なんじゃないか、とクノンとご同類としか思えない特級の生徒たちを見ているとそう思えてくる。
一年生は、だからまだ分岐点にいるんでしょうね。特級に居ることで、そこに居ようとハマっていくほどに染まっていってしまう、という事なのでしょう。最初からクノン並にイカレちゃっているのはやっぱり早々は居ないのでしょうけれど。
伝説になっているOBで、クノンの第二の師匠であるゼオンリーは、それこそ最初からクノン並みにぶっ飛んでたかもしれないけれど、彼は孤高で一人で自分の天才性に耽溺していたタイプみたいで、クノンみたいに周り巻き込んで全体に火を付けてまわるタイプじゃなかったみたいですね。たった一人で周囲を阿鼻叫喚の騒ぎにしてしまうのも大概ですけれど、クノンは周り全員テンションおかしくさせて、オカシクなった魔術師の大群が高笑いしながら走っていく真ん中をニコニコ拍手しながら練り歩いていくみたいな奴だからなあ……ヤバいね、イメージがw

しかし、魔術師全体が特級の連中みたいに、或いは宮廷魔術師たちみたいに魔術の沼にハマってしまった人ばかりではない。あくまでそれは上澄みの上澄みだけ。でないと、魔術師という人種自体が社会の中の位置づけでちょっとアレすぎるポディションになってしまう。
2級や3級といったクラスの人たちは、決して魔術ばかりに耽溺しているわけじゃない。クノンみたいな人間からすると、魔術以外のことにリソースをわけている暇なんてないだろう、と思うかもしれないけれど、大概の人は魔術というのはただの技能であって、人生そのものではないんですよね。
2級や3級のクラスの人たちとの交流は、クノンにそういう人たちもいる、というのを教えてくれたわけだけれど、教わったからなんだ、という話でもあるわけで。まあ知らないよりは知っておいた方がいいだろう。これまでクノンが出会った人たち、魔術に関わる人たちというのは濃度の差はあれ、結局クノンと同類側でしたからねえ。
ただ、2級3級クラスの面々だって魔術以外にリソースを割かなければならないけれど、本当ならひたすら魔術ばかりに没頭していたい、というくらいの魔術好きの人たちだっていたんですね。
また、クノンという劇薬に関わってしまったがゆえに、魔術沼にハマってしまった初心者もいる。良くも悪くも刺激物で影響力が大きすぎるクノンという存在を、2級3級に放り込めば、そりゃ化学反応も起こるわなあ、と。
ある程度目論見あって、そして混乱と波乱が起こるのを承知でクノンをこれらのクラスに放り込んでみた教官たちは、やっぱりマッドだよ、そういうところ!

そうして出会った2級クラスに所属する狂炎王子ジオエリオン。立場故に2級クラスに甘んじながら、しかし本心では身分も立場も忘れてただただ魔術を研究したいという叶わぬ願いを胸に宿しながら、2級クラスを中心に起こっている国や身分差によって生じている政治抗争の中心に巻き込まれている彼。
自由なクノンとは裏腹に様々なしがらみに縛られた彼だけれど、これほどクノンと話が合う同性同級生の友達ってクノンにとっては初めてなんじゃないだろうか。アホメイドの薫陶によって間違った紳士像へとひた走り、なんかひたすら女性にばっかり優しく、男にはそっけないクノンが、これほど喜んで交流する男子って初めてですよねえ。
ジオエリオンの方も前々からクノンの評判を聞いていて、含む所あるとかじゃなく純粋に面白い魔術の使い方をするやつ、ということであくまで魔術の同好の士として仲良くなりたい、話をしてみたい、という興味津々だったわけで。別にライバル出現、とかじゃなくて後々対立する可能性が、みたいな風でもなく、本当にイイ友達になれそうなんですよね。
まあ図らずも直接対決、みたいな事は起こるかもしれませんけれど、クノンはあの性格ですしねえ。変に拗れることもなさそうですが、さてどうなることやら。

そして、クノンとは関係ない……いや、めちゃめちゃ関係あるんだけれど、学園とは関係ない所でクノンが活躍したせいでどんどんと窮地に追いやられていく婚約者のミリカ王女。彼に見合うために実績を積まなきゃ、と頑張ろうとした矢先にクノンの方がどんどんと訳の分からないスピードで学園入学した途端に国家レベルで表彰されるような功績立てちゃうんだから、ちょっと待てーっ、と悲鳴をあげたくなるのもわかります。
いやー、マジ頑張れミリカ姫。意地でもクノンの婚約者を降りたくはないんだから、頑張らにゃしゃあないよなあ。とはいえ、ここまで来ると正攻法では全然おっつかない、まあ既に正攻法から外れているのですから不良姫なんて呼ばれるようになっちゃってるわけですが、それでもおっつかないんですからひでえ話ですよね。ある意味これ知らんうちにミリカ姫追放!という形になってるんじゃないですね!?
ミリカ姫の追放されてからの逆転劇、がクノンの預かり知らぬところで始まろうとしているw