【俺にはこの暗がりが心地よかった 3 -絶望から始まる異世界生活、神の気まぐれで強制配信中-】  星崎崑/Niθ GAノベル

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「……自由、か」

リフレイアとともに魔王討伐に成功したヒカル。

だが、神の定めたルールに反してリフレイアの命の危機を救ったことで、『ナナミの蘇生』を叶えることはできなかった。

異世界で唯一の目的を失い、虚無感に浸るヒカル。
故郷に帰るリフレイアを見送り、目的なく街を流離う彼の元に、一人の少女が現れた。

「黒髪の少年……。お前がヒカルだな?」

腰に幅広の剣を差し、
背に巨大な盾を背負った全身鎧姿の少女の名は――ジャンヌ・コレット。
その名前に、ヒカルは心当たりがあった。

「……俺を、殺すのか?」
「だとしたらどうする? 戦ってみるか? この私と」

ただならぬ空気に包まれながら剣を抜くジャンヌ、そしてヒカル。
いっぽう、ひょんなことからナナミは復活を果たすことになり!?

大人気配信系ファンタジー大作、光と闇が交錯し新たな展開が幕を開ける第3弾!!



わひゃぁ!? えっえええええ!?
いやもうこれ……わははははは。なんかもう笑えてきましたよ。えええ〜、なんてこったぁ。
あんまりと言えばあんまりにも予想外の、幼なじみのナナミさんのキャラクターに唖然呆然。いっそもう笑えてきてしまったんですが。
なんだこの……なんだ!? ヤバいなんてもんじゃないんですけど。狂犬じゃないですかー! もうこれ狂犬としか言いようがないでしょ!? マッドドッグだよ!
ちょっと待ってよ。お亡くなりになる前のヒカルとのポヤポヤとしたやり取りは何だったんだよ。武器じゃなくてアルバムを唯一異世界に持っていくアイテムとして選ぶような、どこかのほほんとして夢見がちなフワフワとした天然メガネっ娘じゃなかったのかよぉw
なんですか、あのバレンタインデーにヒカルにチョコ渡そうとした同級生をシメた話。真相、さらにヒドいんですけど!? チョコ渡そうとした子はシメてないけど、それ以外まとめてシメちゃってるじゃないですか! これ、女の子泣いちゃうよ。怖くて泣いちゃうよ。てか男でも怖くて泣いちゃうよ!
双子、よくまあこの人を姉と慕ってるよなあ。慕ってるというか、舎弟なんじゃないのか? いや、そこまで双子立場弱くないけど。でもこれ、妹だから許容されているだけで、ガチでヒカルに対して競合していたら色々と思い知らされてたんじゃないだろうか。セリカもカリンもただの妹というには兄に対して愛が深すぎるくらいだけれど、それでも兄を幸せにしてくれる相手が居るなら自分じゃなくても構わない、という妹としての愛情をしっかりと持っている子たちなんですよね。でも、ナナミはヤベえ。
よくまあ、ヒカルはこの娘の本性にさっぱり気づかなかったもんだ。気づいてないんだよね? 完全無欠にナナミは彼の前では猫かぶってたみたいだけど。
この幼なじみ、今までは運動音痴もあって自ら戦う術、単純暴力についてはまったく有していなかったわけで、だからこそあっさりと殺されてしまったわけですが、この娘に戦う技術を与えてしまったらえらいことになってしまうんじゃないだろうか。

と、ナナミショックに意識持っていかれていましたが、この3巻の見どころはついに異世界転移者の人気ナンバーワンのジャンヌ・コレットがヒカルに会いに来るという展開でした。
そうなんですよね。実際に登場するまではこのジャンヌという子、現代人にも関わらずいきなりガンギマリで異世界で戦い始めるバトルジャンキーという感じで、ヤバい子なんじゃ……という印象だったのですが。
いやいやいや、すごく話通じますよ!? 根本のところでお人好しで生真面目で素直で、ってめちゃくちゃイイ子だよ!? 正義に凝り固まっているという感じでもないし、ちょっとストーカー気質で恋愛脳で頭お花畑なところのあったリフレイアよりもよっぽど常識人だし。
どこか世捨て人的な雰囲気になってて暗さと弱さを横顔に感じさせながら、健気で親切なヒカルって母性を掻き立てられるところがあると思うのですけれど、ジャンヌってばこれどストライクだったのかー。
目標を失って弱っていたヒカルに対して、決してベタベタするわけじゃないんだけれど、誠実に接してくれて支えてくれるんですよね。表向きガツガツはいかないんだけれど、本音ではキュンキュン来てしまっていて、端々に積極的に行こうとして足踏みしてしまってる痕跡が垣間見えて……正直、めちゃめちゃかわいいんですけど!?
自分達のパーティーに「ラブラブツインバード」と名付けてギルドに登録していたリフレイアちゃんと比べると、とてもこう……節度? 良識があると思います。
後半に爆誕するシン・ナナミの衝撃波に後々ふっとばされてしまうだけに、なんか圧倒的にジャンヌが一番真っ当に思えてきてしまうのですが。
ゲーマーらしく、やり込みグセがあったり、新しいダンジョンやフィールドに挑む時はレベルをしっかりあげてから、というゲーマーとしての堅実さも垣間見えて、こういう所ヒカルとはすこぶる相性がいいんじゃないだろうか。
実際、ジャンヌとパーティーを組むようになってからヒカル、覿面に明るくなっていくんですよね。
リフレイアと組んでいるときみたいに配信の視聴者に見られている、というのを同じ配信者のジャンヌなら気兼ねすることもないですし、シンプルにジャンヌと一緒に冒険するの、死んでも成し遂げなければならないという切羽詰まった事情に追われることもなく、異世界に来て初めて気軽に楽しめている、それをジャンヌに促してもらった、というのもあるんでしょう。ナナミの死という懸案から解き放たれたというのも大きいですし。
ジャンヌの方も、どうも無鉄砲さというか、自分の決めたルールに必要以上に殉じてしまうようなところがあって、ファンの視聴者たちに危なっかしいと見られていたのが、ヒカルと組むことで彼が安全弁となってくれているみたいで、ジャンヌも一人だから無茶しがちな所もあったんでしょうね。
両人とも、一人じゃなくなった、その相手がジャンヌだった、ヒカルだったという事が想像以上に良い方向に作用したみたいで。メンタル的にも補い合えるパートナー同士になれてたんですよね。

しかし、そうは問屋が卸さない。

ジャンヌの厚意によって、蘇生権を譲ってもらってナナミが復活したこと。
そして、神の好意によって、新たな転移者が送り込まれることになったこと。
それらが、ヒカルに新たな試練を呼ぶことになるのである。……これなくても、リフレイア再び!思ったよりだいぶ早く! という修羅場イベントも発生してしまったわけですが。
リフレイアの反応が掲示板スレの予想と寸分違わなかったの、ベタだけれど最高に面白かったですw
人としての相性はピッタリでも、ジャンヌとヒカルとでは戦闘でのパーティーの連携ではお互いの精霊との特性から非常に相性が悪い、というのは何気に無視できない要素になってくるんだろうか。リフレイアが帰ってきたとなると。

しかし、神様これ絶対ヒカルに対しては意図して色々とちょっかいかけてますよね。
突然の地球の親族と連絡が取れる、なんてわざわざ毒親の極みである母親に繋げてヒカルに追い打ちかけてるわけですし。同じく家族にトラブル抱えているらしいアレックスが、どうやら一番心配してくれていたらしい祖母と通信が繋がったのと比べると、ヒカルの養母の酷さが際立つ。
あれ世界中に中継されてて、あの母親大丈夫なんだろうか。結局、ヒカルが世界中から自分が嫌われ憎まれているという誤解は解けなかったわけですし。
挙げ句に、新たな転移者として選抜されたメンツの中に、無視できない人物が入ってしまっている件も絶対に意図したものだろうしなあ。
転移者同士、地図上で居場所がわかるようになった、という改変もなんかもうねえ。ヒカルの近くに配置された転移者が、アレックスやジャンヌという際立って良い奴だった、というのは神の配慮と考えるべきなんだろうか。普通、ヒカルは死んでる方が当たり前の状況だったわけですしねえ。

ともあれ、とんでもない修羅場で幕引きと相成ってしまった上に、形の違う修羅場第二弾・第三弾が控えているこの状況。穏やかにひっそりと異世界で余生を過ごしていきたいというヒカルの願い、かけらも叶いそうにありませんね、ご愁傷さまですw
ただ、これまでの絶望的でありつづけた状況に比べると、どこか明るい雰囲気があるのも確か。どうかヒカルにはこのまま、ヒドい目に遭うとしても朗らかな意味でのヒドい目であって欲しいものである。って朗らかな意味の酷い目ってなんだよw