【手札が多めのビクトリア 2】 守雨/藤実 なんな MFブックス

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凄腕元工作員、家族と楽しい宝探しに出かけます♪

凄腕元工作員のビクトリアが、可憐な少女ノンナを保護し、本当の人生を取り戻してから5年後。
シェン国での研究を終えたビクトリア一家は、アシュベリー王国に帰国して懐かしい人々と再会する。そして平穏な日々を送るビクトリアだったが、彼女はある日希少な冒険小説『失われた王冠』に隠された謎の暗号を持ち前の才能で難なく解読してしまう。
その暗号は宝のありかを示しており、小説の舞台とされる地域へ行きたい気持ちに駆られるビクトリアだが、自分の立場を考えて葛藤する。
「君は強くて賢くて優しくて、なによりも自由な人だ。行こうよ、君が行きたい場所へ」
「私がお母さんを守るから」
理解のある夫ジェフリーと心強く育ったノンナの支えで、自分らしく生きることにしたビクトリアは、アシュベリー王国の秘密に迫る大冒険へ出発するが――?
最強の家族とともに、更なる幸せをつかむ人生修復物語第二弾、開幕!

1巻から5年後。5年というとそれなりの年月だけれど、大人になってしまうとまあそこまで大きな経過時間とも言えるような言えないような微妙な間隔なんですよね。
既に成熟した女性だったヴィクトリアは、結婚して夫になってくれたジェフともどもそれほど変わっていない。やはり大きく変わったのは子どもたちだろう。幼子だったノンナは小さな少女に。少年だったクラークは立派な青年に。
とはいえ、ノンナは表紙絵だときれいな少女になっているけれど、まだ年齢は十を幾つか超えた程度で現代で言うとまだ小学生か中学生になりたてくらいなんですよね。
なので、まだまだ子供子供。育ちもシェン国の方で伸び伸びと育ったせいか淑女というよりも活発な少年みたいに育っちゃっている気がするぞ。幼い頃からヴィクトリアが自分の工作員としての知識や技術を仕込んでいたので、自然と英才教育を受けたエリート工作員、みたいな裏の顔を持ちつつ表向きは貴族令嬢としてばっちり仮面を被っているミニ・ヴィクトリアみたいになるかと思っていたのですが。いや、一応貴族令嬢としての表面は被れるみたいなのですけれど、ヴィクトリアみたいなエージェントらしさは微塵もないあたり、ジェフリーもヴィクトリアもほんとこの娘の事を自由に育てたんだなあ、というのが伝わってきます。なぜかシェン国の武術にハマってしまい、エージェントというよりも拳法小町みたいになっちゃってますが。
というわけで、内面は好奇心と元気ではちきれんばかりの少年心満載の女の子になってしまったので、どちらかというとおマセな少女心には縁がない感じになってしまってるんですよね。乙女回路は未だに起動せずに休眠中。女の子は心の成長が男の子よりも早いというけれど、ノンナに関してはまだ男女の機微とかには関心興味も育っていないみたいなんですよねえ。
クラークくん、頑張れw
ってか、キミってばもう五年も前にノンナに結婚申し込んでたのか……まだ年一桁の幼女だぞ、相手。まああの頃はまだクラークも子供だったけどさあ。
さすがに子供の頃の約束を盾にして気持ちを確かめたり、なんて無粋なことはしないものの、昔からの友達として再び仲良くはなったものの男としてさっぱり意識して貰えないノンナに対して、番犬よろしく近づく男に威嚇してまわっているのは、それジェフリーパパの役目じゃないのかしらw
アシュベリー王国に帰ってきて、貴族位を得ているジェフリーの妻として、そして貴族令嬢として社交の場に出なくてはならないノンナに気を揉むことになるヴィクトリア。あらゆる事に精通しているヴィクトリアにとっても、母親というのは初めてのお仕事。
シェン国に居る間は家族としてノンナを見守っていればよかったのだけれど、アシュベリー王国に戻ってくるとノンナと周囲の関係に頭を悩まさざるを得なくなり、さすがのヴィクトリアにとっても何をどうしたらいいのかわからない母親としての悩みには混乱気味、というあたりがヴィクトリアもいつも完璧ではいられないんだなあ、と微笑ましく思ったり。そんな妻をちゃんと支えてくれるジェフリーの夫としての頼もしいことですよ。
母親を支配して家族を踏みにじっていた父親への反感から、自分は家族を大事にするのだと思い定めているジェフだけれど、放っておくとどこまでも飛んでいってしまいそうな妻と娘の手綱を握りしめずに自由にさせる、というのは勇気がいるだろうなあ。時代背景的にはむしろ彼の父親の在り方のほうが自然でしょうし。
しかし、彼女たちは鳥かごの中に閉じ込めていいような人たちではない。伸び伸びと空を飛び回ってこその彼女らなのだ。それをちゃんとわかっているジェフリーは、彼女たちを閉じ込めたりしない。
それどころか、彼女たちと一緒にヴィクトリアたちが見つけたワクワクする大冒険の旅を許すだけじゃなくてしっかり自分もついていくことにするあたり、彼女らの家族に相応しい自分の在り方というのを常に意識しているような気がします。
家族を手に入れ、家庭に入り、平和で平穏な日常を手に入れたヴィクトリア。でも、平穏な毎日というのは平坦な代わり映えしない毎日、というわけじゃないんですよね。愛する人のもとに居続けても、ただそれだけではいつか気詰まりしてしまうときがくる。ちょっと自分だけで場末のバーに飲みに行くなどの、自分だけの時間を確保する、なんてのはこの時代のそれも貴族の夫人という立場では非常に難しいものだったのかもしれませんけれど、見知らぬ男の経営している怪しげなバーに妻が行くことにモヤモヤしたものをいだきながらも、彼女を束縛したくないという思いからそれを許しながらもやっぱりモヤモヤしちゃっているジェフリーが、何ともお可愛いことでw
これ、許したら許したで何も気にせずにどんどん行ってきなさいよ、みたいな態度だと今度はヴィクトリアの方がモヤモヤしちゃうんでしょうね、難しいことだけど。

さて、とある本に隠されていたある冒険家の残した暗号の真実を見つけるために、記録係としてクラークを連れて、冒険旅行に出たヴィクトリアたち。そこで見つけたものは歴史的な発見であると同時に、ある男のプライベートな愛する人との記録だった。
とある夫婦の秘密と最期に至る旅路。そこに悲哀を見て取るヴィクトリアだったけれど、同じ物語を聞いた老人たちの解釈はまた違っていたんですね。このあと、ノンナから聞かされた5年前のクラークとの約束を聞いて母親として慌てふためくことになったヴィクトリアに象徴されるように、エージェントとしてはパーフェクトなヴィクトリアだけれど、まだまだ年齢としては若く、経験していないことは山ほどある。家族としての、愛する人との幸せとはなんなのか。それを知り、味わっていくのはまだまだこれからなのでしょう。そばに寄り添う愛する夫ジェフのぬくもりと、愛する娘ノンナの元気な声を聞きながら、彼女は内側から湧き出してくる幸せの実感にゆったりと身を委ねるヴィクトリアなのでした