【剣と魔法の税金対策 6】  SOW/三弥 カズトモ ガガガ文庫

Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス

ここは異世界。「税天使」の厳しい取り立てに、必死におカネを作ろうと頑張る魔王&勇者の夫婦。そんな夫婦を助ける「ゼイリシ」少女。前代未聞の異世界税制コメディ、驚天動地の大団円!

魔王城に住む魔王♂&勇者♀夫婦のもとに現れたのは「税天使」。「税天使」の厳しい取り立てに、必死におカネを作ろうと頑張る夫婦。そんな夫婦を助ける「ゼイリシ」少女。令和に贈る前代未聞の異世界税制コメディ、いよいよ驚天動地の大団円!


感動の最終巻! って、電子書籍限定ですかっ! 前巻のラストでクゥが税悪魔に殺された上で大魔王に乗っ取られる、という凄まじい展開で終わっておきながら、そこでバッサリ終了という可能性が色濃くあったというのが恐ろしいんですけど。あれで終わってたらどんなバッドエンドなんですか。
とはいえ、こうして電子書籍限定とはいえ完結まで出版してもらえたのはありがたい限りです。

前述した通り、ゼイリシのクゥが邪神に乗っ取られて大魔王と化し世界を破滅へと導こう、という大変な状況にも関わらず、むしろ内容としては本シリーズの原点へと立ち戻って「税金」とは何か、というテーマが物語の要として機能していくの、決してシリアスな世界崩壊の危機を蔑ろにせず、かと言ってただの解説話にもならず、ちゃんとストーリーの根幹部分に税金対策の話が最大限重要な意味を持って盛り込まれていくの、本当に上手いなあと感嘆するばかりで。
そもそも税金とは財源としてだけ用いられるものではない。国債とはただの借金とは別物という言説はよく聞こえてくる話ではあったのですけれど、こうしてある種のストーリー仕立てで解説してもらうと、非常にわかりやすくその言葉の意味が理解できました。
にしても、世界そのものの運行を税金だけでゼオライザー様、賄っているのかと思ってたので結構危なっかしいなあ、とも思うこともあったのですけれど、そうかー、ちゃんと世界債みたいな形で賄っていたのか。それでも、世界中から世界運行の為に税金徴収するってなかなか世知辛い世界観なのですが、現実世界よりもずっと自然災害とか少ない世界なんだろうか。
でもそうか、この世界における国家というのはいわば徴税人みたいなものなのだろうか。天界の代わりに税金を徴収して国民の代わりに天界に税金を納めることを仕事にしているわけですし。
天使が税務調査しまくってるみたいだけど、このシステムだとそりゃ大魔王と化したクゥ・ジョが怒り狂うほど徴税システム各所で恣意的に運用されてたのも宜なるかな。

そのクゥ・ジョですけれど、なるほどこの展開は想像していなかった。大魔王になったことで邪神の真実が理解できたにしても、即座に対応策を実行に移せるあたり本当にこの娘頭の回転早かったんだろうなあ。全部承知の上で件のことを決行したのだろうし。
でも、大魔王ムーヴが様になり過ぎ得て、メイやブルーですら疑問を抱かなかったのだから、クゥの大魔王ムーヴそれだけ迫真だったということですよね。
世界の勇者や軍隊が結集した連合軍に対して、勝てると思ってるんですねあの人達、とクスクス笑うクゥさん、マジ超越存在になりきってて、わりとノリノリだったんじゃないのか、これ?
そして、大魔王として人族領域を制圧した後に初めてしまった税務作業、ちょっと大魔王の影響が及んでたにしても、明らかに作業業務がブラックですw ノーゼとか完全に過労死しかかってたじゃないですかー。元々、魔王城でもみんなを馬車馬のごとく扱き使って、自分もめちゃくちゃ働きまくってましたしねえ。これ、素でやってるであろう事から、間違いなくこの娘ブラックの素質あるよーw

あと、明言はされていなかったですけれど、メイってやっぱりゼオスの子孫なんでしょうねえ、これ。ブルーやザイの反応からしても。そして、ゼオスの子孫ということはゼオスと子供作った相手がいるというわけで……。まあそういう事なんだろうなあ。ザイがこれまで邪神の中でずっと意思を保っていた理由からして、まさにラブストーリーでしたもんねえ。ゼオスさん、最後まで対応辛辣でしたけれど。そういうところ、メイの方が素直だと思うぞ。
ラストの再会のシーンはやっぱりこういうのイイですよねえ、案の定感動してしまいました。ってか、メイって若い娘よりも婆ちゃんの方がキャラ的にバッチリ似合いすぎてるのが明らかになってしまったw
税金とは何なのか。ともすれば、自分達から資産を収奪していくこのシステムを人は嫌悪してしまうものですが、そうじゃない。むしろ税金とは弱きものが健全に在るようにするためのシステムなのだ、というのを伝えてくれるお話でもありました。だからこそ、税金を徴収する側はその意義をちゃんと考えないといけないはずなんだが、まー省益とか部署の権限とか組織の力学が絡むとその辺どうしたって歪んじゃうんだろうなあ。
何にせよ、ほんとうまいこと税や社会に関するおカネの話を物語にうまく盛り込み練り込んだ面白い作品でありました。
いやちょっと待て。ラストに竜のイタクくん出て来ないのちょっとどうかと思いますよ。折角クゥちゃん復活なのに。竜族でもラストの時期だとなかなかいい感じの年齢なってたんじゃないでしょうか。あとノーゼもどうなったのかちゃんと描いて欲しかったかな。悪い魔法使いさんに拾われたにしても、彼女が税悪魔になった世界への憎悪、理不尽への怒りがどう昇華されたのか。彼女なりに世界と自分を認められる結論が出せていればいいんですけどねえ。

何にせよ、ほんとうまいこと税や社会に関するおカネの話を物語にうまく盛り込み練り込んだ面白い作品でありました(2回目)
完結まで彼らの話を読むことができてホント良かったです。