【ヴァンパイアハンターに優しいギャル】 倉田和算/林けゐ GA文庫

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光のギャルと闇のヴァンパイアハンターが織り成す、デコボコ学園(非)日常コメディ!
「私は元、ヴァンパイアハンターだ」
「……マジ?」
どこにでもいるギャルの女子高生、琉花のクラスにヤベー奴が現れた。
銀髪銀眼、十字架のアクセサリーに黒の革手袋をした美少女・銀華。
その正体は、悪しき吸血鬼を追う狩人だった。
銀華の隠された秘密を琉花は偶然知ってしまうのだがーー
「まさか、あんた……すっぴん!?」
「そうだが……?」
琉花の関心は銀華の美貌の方で!?
コスメにプリにカラオケに、時に眷属とバトったり。
最強JKには日常も非日常も関係ない。
だってーーあたしらダチだから!

光のギャルと闇の狩人が織り成す、デコボコ学園(非)日常コメディ!

光のギャル! あらすじの文句にちょっと笑ってしまったのですけれど、よくよく読んでみると……確かにこの娘、光のギャルだよ!
そもそも、本作ってギャルの描き方がかなり解像度高いんですよね。もしかして書いてる作家さんもギャルなんじゃ、と思ってしまうくらい。後書き読む限りでは非常に良くギャルについて勉強してのことのようでしたけれど。
昨今ではギャルが出てくるライトノベルは珍しくもなくなりましたけれど、本作はその中でもトップクラスに今どきのJKギャルの描き方が細やかで丁寧でリアリティがありました。
だからこそ、主人公の盛黃琉花という娘の印象はまず強烈に明るいギャルという個性に焦点が当たってしまって、外見や内面の明るさも滲み出ていましたね、そのキラキラとした存在感に目を奪われていたんですけれど……よくよくこの娘の行動を追っていると、ほんと自分を着飾り良く見せようという所に留まらない、すごく他人に対して目の行き届く娘だというのがわかってくるんですね。
いや、それどころじゃないんですよ。
この娘のやってること振り返ってみたら……聖女ですよ。紛うことなき光の聖女ですよ、この娘。ギャル聖女だよ。
タイトルは【ヴァンパイアハンターに優しいギャル】ですけどね、琉花って娘はヴァンパイアハンターだけに留まらない、本当の意味で誰に対しても優しいんですよ。それも上辺だけの関心のなさ故の優しさじゃない。親身に、そして嫌味なく上から目線じゃなく、さらっと自然に手を差し伸べられる優しさなのである。そのコミュニケーション能力の高さも、自分と相手の関係を深めるだけに留まらず、クラス内で行き違いや誤解によって生じたトラブルなんかを、間に入ってちゃっちゃと取り持っちゃうんですよね。いやー、ほんとサラッとやってますけれど、なかなかとんでもないですよ。それも派手に炎上する前に、気負いなくススっと現場に混ざり込んで、どこにも角が立たないように仲裁しちゃってますからね。
恩着せがましくもないし、場を仕切るというような圧の強さもない。
まだ復学してきて、俗世の学生のやり取りになれてなかった銀華がやらかしかけた時も、あれだけ存在感のあるギャルにも関わらず、柔らかく場をまとめてささっと退散していっちゃいましたもんね。あれだと、周囲の人達もトラブルがあった、という印象も残りにくかったんじゃないだろうか。
なんだろう、誰かに優しくすることに対して、何の気負いもないんですよね。それが本当に当たり前の事として身についている。困ってる人がいたら、軽い足取りで近づいていって大丈夫ですかー、と手助けするし、何なら自分に危害を加えようとしてきたような相手ですら、事が終われば後腐れなく心配して、何ごともなければ本気で良かったね、と笑って手を振ってあげられる。
ストーカー紛いの無職男や、勘違いしたチンピラナンパ野郎ですら、なんかもう心が浄化されちゃいましたもんね。いや、でもあれはわかるよ。この娘の明るさと優しさって心洗われるんだ。自分のエゴや醜さが恥ずかしくなるし、同時にすごく励まされてしまう。
最終的に、デイヴィッドさんまで浄化されてしまいましたしね。この娘と話していると、どうしても自分の中の善性というものが呼び起こされてしまうのである。
ガチ聖女だよーー。ギャルだけど。もう等身大のギャルなんだけど。でも聖女だ。

そんな光のギャル聖女の後光を目一杯浴びる羽目になるのが、仇敵たる吸血鬼を殲滅し終えてヴァンパイアハンターとしての仕事を終え、戸惑いながらも表の世界に戻ってきた銀華だったのでした。
ずっと闇の世界で血と泥に塗れる闘争の日々にあけくれていた銀華にとって、平和な日常というのは未知の時間であり空間でありました。果たして、そこで自分は今更生きていけるのか。闇の住人だった自分が、果たして光の差す世界でまともに生きていけるのか。
不安をいだきながら、そして実際に感覚や価値観が追いつかずにトラブルを起こしかけた銀華を助けてくれたのが琉花であり、戸惑う彼女に手取り足取りこの平和な日常、学生生活の過ごし方、楽しみ方、ただのJKとしての日々へと導いてくれたのが琉花だったのです。
そして、とある偶然から銀華の前職を知った琉花は、今までの銀華の生き方を、ヴァンパイアハンターとして成し遂げてきたことを、そりゃもうすごくリスペクトしてくれるんですね。
銀華としても、それが闇の住人の仕事だったとしても、やりがいのある仕事として、表の世界を守るための誇りをもって成し遂げたことであり、その成果こそがこの平和なのだという思いもありました。一方で、戦いに明け暮れた日々に後ろ暗さや陰惨な思いを抱いていたのも確かであり、だからこそ琉花が、頑張ったんだねと労ってくれて、平和な世界の住人として守ってくれてありがとう、と心からの素直な感謝をくれたことはどれほど嬉しかったことか。そんな琉花が手を差し伸べて、日の差す世界へと導いてくれている。それこそが、銀華がもう憂いなく気兼ねなく、琉花たちと一緒にこの平和な世界で生きていこうと、生きていけると思えた一線だったんじゃないでしょうか。
デイヴィットの一件は、そして使命を終えたヴァンパイアハンターの組織が急速に瓦解しはじめてしまった現状は、当初の銀華の抱えていた苦悩が他の闇の住人たちにとっても同様のことであり、それが表面化してしまった結果だったのでしょう。でも、琉花と出会えた銀華には、もうきっぱりと振り切れるものになってたんでしょうね。そして、デイヴィットの企みを防ぐにしても、そのまま闇の世界に戻って帰ってこない、という選択肢ではなく、ちゃんと琉花たちの元へと戻ってくるという選択肢を迷いなく選べたことこそ、銀華の得た光そのものだったのでしょう。
デイヴィットさんも、その光に遅ればせながらも随分とアテられたみたいですけれど。
一方で、その琉花自身は目指すべき夢もなく、成したい目標もなく、未だフワフワと生きていて、だからこそ明確な使命に生きていた銀華の生き様を目の当たりにして、自分も何か目指すもの、夢を見つけたいという思いを抱くようになりはじめていますけれど、琉花に関しては結構すぐに見つかりそうですよね。てか、明らかに適正ばっちりな将来がチラチラと見えてるじゃないですかー。ギャルで聖女で、天使ですなー。
いやー、良いものを見せてもらいましたわ。メイン二人が女の子、という女子濃度の非常に高いお話でしたけれど、本作は百合とかガールズラブとか恋愛方面に向かうソレではなかったですね。あくまで、女の子同士の友情のお話。親友同士の熱い熱い友情の物語でありましたよ。それがまた、この場合は良かった、良かった。