【ロード・エルメロイII世の冒険 5.錬金術師の遺産(下)】  三田誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「僕、この事件が分かってしまったかもしれません」

 プトレマイオスを名乗る機械の鳥に導かれ、エルメロイII世を伴った時計塔とアトラス院の合同発掘調査団は、海底のアレクサンドリア大図書館へと潜入する。
 一方その頃、エルゴと凛も、合同発掘調査団にアトラス院の反逆者がいるとシオンに話され、別ルートから海底遺跡を目指していた。
 奇怪極まるファラオ殺人事件の真相は?
 考古学科(メルアステア)の君主(ロード)、カルマグリフは何を狙うのか?
 アレクサンドリア大図書館に記録されているというエルゴの正体とは?
 
 悠久の時の底に沈められた真実が、今こそ浮かび上がる――

今回は、というか今回も色々とあったんですけれど先ず以てグレイとライネスの関係が尊すぎるぅぅ!!
なんですか、あのグレイの新装備。てか完全にライネスとの共同作業じゃないですか。
鏡い瞭眥鏤劼砲靴童遽厂鬚淵哀譽い世韻鼻△△竜鎧粒算僂鮓てしまうとライネスの騎士って感じなんですよねえ。もう二人してイチャイチャしちゃってさぁ!! 二人共お互いのこと好きすぎない?
てか、ライネスも魔術師としての成長著しいんだ。てっきり次期当主として政治に陰謀暗躍とそっち方面にばかりかまけているのかと思ってたけど、そうですよねえ、ライネスだって魔術師なんだからひたすら研鑽しますよねえ。それでも短時間とはいえ、月霊髄液をケイナス並みに扱えるようになった、って何れ相当の頂きに立てるんじゃないだろうか。

本シリーズの重要なテーマ、と勝手に思っているんだけれど、どれほど人からハズレてしまったように見える魔術師もまた、どうしようもなく人間なのだというのを事件簿の頃から様々な形で描いてきたと思うんですよね、このエルメロイ鏡い離轡蝓璽困蓮
そして、それは魔術師に留まらず錬金術師だってそうなのだ。いや、錬金術師もまた魔術師じゃないか、と言われるとそうなんですけどね。でも、アトラス院の錬金術師は時計塔の魔術師とは全く異なる毛色をもってその行動原理としている。その結果か過程か、彼らは総じて人間というよりもどこかコンピューターじみたあり方を体現している。感情を排し、自らを計算機、演算機械のように仕立てていく。
はからずもロード・カルマグリフがえぐり出したように、シオンがアトラス院の最高傑作と評されたのも、シオンの持つ人間としてのあるべきものが極めて希薄であったからこそ。すなわち人間からかけ離れた完成度と許容性を持つからこそ、彼女はアトラス院の次期院長の座を約束されたと言えるのでしょう。
しかしそれでも、それでも彼ら錬金術師もまた、どうしようもなく人間なのだ。彼らが世界の滅びを回避するために身命を賭しているのはなぜか。錬金術師の根源とは、どうしたって人間という心もつ存在から汲み出された意思なんですよね。
だから、どれほど機械になりきろうとしてもどこかで人になってしまう。そうであるからこそ、彼らの使命は崇高足り得るのだ。
失われた友のために怒りを隠さなかった男。子どもたちの為に身をなげうって奔走した父親。そして弟のために心掻きむしり涙した姉。そして姉のためにすべてを忘れたふりをして彼女を守り続けた弟。誰もが、汲み出してみればそこにあるのは人間としての情であり意思であり願いであった。
アトラスの最高傑作とされたシオンだって、うん、この子は本来無機とした存在なのかもしれないけれど、いっそそれは無垢でもあるんですよね。だから、案外と簡単に染まってしまう。影響を受けてしまう。どの世界線でもシオンってアトラスを出て出会った人にもろに影響されるんですよね。
このシリーズにおいても、まだ十歳前後の子供であることも大きかったのでしょうけれど、エルゴというこちらもまた無垢と言って良い、そして今その真っ白だったキャンバスに様々な絵を描きまくっている先達たる彼に大きく影響を受けて、この短期間で情緒を育みまくるのである。分割思考とエーテライトの直結による思考同期が大きかったんでしょうね。
こうして見ると、錬金術師って他のナニモノよりも他者と共感しやすい人種なんじゃないだろうか、とすら思えてくる。
……式のところの娘もそうだったけど、エルゴって結構小さい子にモテるよね。

そのエルゴもその素性が明らかとなり、鏡い動揺しまくるのだけれど……彼もまた誰よりも道具扱いされて、人間扱いされなかった子なんですよね。いや、それは生前からそうだった、と言えるのかもしれない。その挙げ句に三人の賢者によって大魔術の要として生成されてしまい、三人のうちの一人であった錬金術師の遠大な1000年越しの策謀によって、演算器として消費されてしまいそうになる。
でも、今ここに集っていたのは、彼が人であることを望む人たちだった。その正体も彼を使おうとする目的よりも何よりもまず、エルゴは鏡い猟鏤劼任△襦それが皆にとっての大前提。そして弟子であるならば、師匠も姉も兄弟弟子たちも可愛い弟を守るに否やなし。
その正体を暴かれてなお、彼は望まれて、人となる。
そして、その前世においても、そしてエルゴとして蘇生させられた際にも、また彼を一人の人間として、一人の才ある若者として生前に彼に与えられなかったものを与えたいと願った人もまた、居たんですよねえ。
ある意味イスカンダル大王よりも偉大なる王であり功績をあげた人物だったかもしれないプトレマイオス。そんな現代の人類文明への道筋を作り上げたかもしれない偉大なる王が、三人の賢者と協力して、そして出し抜いてエルゴに与えようとしたものが、そんな願いだった。ともすれば小さい、とても小さい願いと言われるかもしれない事だったのが、むしろ胸をつくんですよねえ。
ああ、偉大なる王もまたこんな人だったのかと。

ってか、まさかこのロード・エルメロイ鏡い離轡蝓璽困妊機璽凜.鵐半ごの儀式を目にすることが出来るとは思わなかった!!
いや、確かにこれ以上なく条件揃いまくってたかもしれないけれど。聖杯抜きで出来るとは。しかも、しかも、敵方とか黒幕が召喚して、じゃないんですからね!

しかし、エルゴの秘密の大半が明らかになったとはいえ、結局記憶飽和は現段階では解消できなかったのか。ある程度解決の筋道が見えてきたとはいえ、ついに凛と出会った時期からの記憶までやばくなってきたとなると、果たして間に合うのか。
それに、エルゴが「創られて」からこの海底図書館から外に出されて凛に拾われるまでの事歴が明らかになってみると、作中でも言及されていましたけれど、じゃああの白若瓏とはどこで出会っていたんだ、って話になるんですよね。
てっきり、エルゴが凛と出会う前に若龍と出会っていて、その記憶を失っていただけと思っていたのですが、これは思いの外、いやエルゴにとっては彼とのことこそが最も重要になってくるのかもしれない。

ロード・カルマグリフはこれまたもうクセモノとしか言いようがない人物で……あの、ロードってほんとこんなのばっかりですか!? 能力以前に性格がみんなこう、腹黒どころじゃないアレな人ばっかりなのですが。ケイネス・エルメロイ・アーチボルトさん、魔術師としては色々と話が進むに連れて凄まじい高みにある人物だったんだなあ、というのは評価上がっていくのですけれど、果たして他のロードたちと政治や謀略でちゃんとやりあえたんだろうか。ゼロでの様子見ていると色々と素直すぎ感情的すぎて、謀略向きには見えなかっただけに。
ロード・カルマグリフ。確かに戦闘向きじゃないのかもしれないけど、戦闘向きじゃなくてこれですか、て感じなんですよね。そりゃ、鏡い犯罎戮燭蕕い韻覆い任垢韻鼻これでまた手加減というか、消耗してて全力ではなかったって話ですからねえ。凛とルヴィア相手にして、あれですもんねえ。
グレイが鏡い講師をやめてグレイのための研究に集中しようか考えていると聞かされてから抱いていたモヤモヤも、その正体をグレイ自身が理解把握して、うんこっちもスッキリしたなあ。
そうなんですよねえ。鏡い稜塾呂砲茲辰督鏤劼燭舛虜庸修開花する、その機会が失われてしまうというのも勿体ないですけれど、それだけじゃなくて……鏡い弟子たちにあれほど慕われるのは、彼が何があろうとも弟子を守る人だから、なんですよねえ。
エルゴも……旅先の一時の弟子なんかじゃなくて、ちゃんとイギリスで他の教室の面々と一緒に授業を受けるような、そんな日々へと辿り着いて欲しいなあ。
鏡い砲箸辰討癲大前提としてエルゴは自分の弟子であるという事実を取り戻しましたけれど、でもエルゴがアレの息子というのもまた一面の事実。アレの友であり臣下である鏡い砲箸辰董⊃Г鵑憤嫐で彼は守り通したいですよね。
そのためには、まずエルゴを作り出した賢者たちと対決しないといけないわけで、さあ大変だぞ。