【見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん 2】 神田暁一郎/たけの このよう。 GA文庫

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「わたしが、一番近くて仲良し?」
エモさ満点の次世代身長差ラブコメ第2弾!


低身長が悩みの下野水希と高身長で人気者の高瀬菜央。身長差20センチの正反対な二人だが、席替えで隣になったり、一緒に登校したりと、確かに距離を縮めていた。
そんな中、初心者ながらサッカー部に加入した水希は、他の部員に追いつくため、一つ年上の先輩女子・魚見とよく一緒に練習するように。
一方、運動音痴な高瀬には球技大会の練習に付き合ってほしいと頼まれる。教室では高瀬、部活では魚見。二人に挟まれる水希だが――
「わたしが、一番近くて仲良し?」
距離を確かめるかのように、高瀬は想いをぶつけてきて!? エモさ満点の次世代身長差ラブコメ第2弾!

ああ、可愛いなあ。女の子も男の子も関係なく、この中学生たちの初々しい可愛らしさの愛おしいこと。
そうなんだよね、中学生って当たり前だけど小学生より大人で、でも高校生よりも幼いのよ。この年代は本当に過渡期って感じで、小学生っぽさと高校生っぽさの両方を兼ね備えてるんですよね。
それがメンタルの不安定さにも繋がるし、それをこそ強調されがちな年代なんだけれど、中学生だからこその柔らかい可愛らしさってのが男女問わずあるんです。それを本作は余すことなく描いているなあ、とね。
登場人物の手触りが質感たっぷりで柔らかいのよー、瑞々しいのよー。前作の大人を描いた作品はその登場人物の描き方の生々しさに感嘆させられたものですけれど、本作も同じく生々しいくらいなのに見事に中学生の溌剌とした輝きの生々しさを描けているのは、もう本当に凄いと思うよ。
高瀬菜央の下野くんへの迫り方なんて、小学生っぽさが全然抜けてないんですよね。あれは迫り方なんてもんじゃなくて、自分の好意を水遊びみたいにバシャーンと引っ掛けてキャッキャとはしゃいでいるようなもんです。女の子の中で自分が一番仲良しか、なんてしつこく聞いてくるのなんて小学生そのものじゃないですか。
でも、その原動力はちゃんと恋なんですよ。独占欲であり嫉妬であり自分を意識させたいという発露であり、でも一番だと答えてくれたらそれだけで嬉しくてたまらなくなって満足しちゃって。
まだまだ恋というものを具体的にどうしたらいいかわからない。好意の向け方が小学生のそれを引きずったまま。拙くてたどたどしくて、でもだからこそ純粋で一生懸命でキラキラしてるんだ。
もう可愛くて仕方ないのよ、高瀬ちゃんも下野くんも。
二人からするとちょっと大人になる魚見先輩なんかも、あれもまだまだ中学生なんですよね。キリッと自分の道を突き進んでいるようで、その実不安を溜め込んでいて、だからこそ年下だけれど考え方がしっかりしていてお子様な同年代の男子よりも大人びて見えた下野くんを意識して。決してフラついているわけじゃないんだけれど、サッカーにストイックな先輩という立場から恋する少女への転身はなかなかに鮮やかでした。そこからしっかりとデートというはっきりとした形に持ち込むあたりは、まだ小学生引きずっている中学生低学年の連中とはひと味違っている、と言ってもいいのでしょうけれど、まだまだ恋の手練手管を弄するほどはこなれていなくて、恋の駆け引きとか環境状況の下ごしらえや情報収集などもせず、駆け足気味に告白までしてしまったあたりは、初恋かどうかは知らないけれど本気で異性に恋をして本気で彼氏彼女になりたいと頑張った最初のアプローチらしい初々しさに満ち溢れてるんですよねえ。性急とは言いません、あれはあれで急戦速攻、良い攻撃でした。清々しい爽やかさがあった。意図したものではなかったでしょうけれど、魚見先輩、自分の魅力みたいなものはちゃんと伝え感じさせることに成功していましたからね。
ただ、すでに高瀬ちゃんを意識していた下野くんにとって、大変グラついたとはいえこの告白はどうしても受けることの出来ないものでした。受けない以上、断らなければなりません。
その点、彼の告白の断り方は……これパーフェクトだったんじゃないですか? 魚見先輩、フラれてしまった以上、仕方ないと思いはしても悲しいし傷つくしやっぱり泣いちゃいそうになってたんですよね。でも、ここからの彼のフォローは良かったなあ。フォローなんてつもりはなく、本気で真剣に誠実に魚見先輩に対して感じていた思いを訴えたからこそ、彼女にも気持ち伝わったんだと思いますよ。
失恋が傷にならず、思い出したくない記憶にならず、悲しいけれど辛いけれど、でも告白して良かった、下野くんの事を好きになって良かった、と思える誇らしさすら抱けるだろう良い想い出として、魚見先輩はこれ振り返ることが出来るようになったんじゃないだろうか。
中学生の初めての告白として、これは大きいですよ。まだ恋に恋するというくらいの塩梅だったから、特に。ここで大きなキズになっていたら、後々新しく恋をするにしても色々と気持ち前に進まなかったり躓いちゃったりする事になったかもしれませんしね。恋は破れどやっぱり素敵なものだった、と思える初めては、彼女の未来への力になるでしょう。
大した男の子ですよ、下野くんは。背丈はちっちゃいけれど、でっかい男だよ、格好いいよ。
でも、そこから自分の本当の気持ちに気がついて、だからといって高瀬ちゃんに速攻で告白できてしまうわけじゃないあたりは、男の子だなあ、と微笑ましくなってしまいます。いやあ、でも魚見先輩と別れたあとにその足で高瀬ちゃんも演奏する吹奏楽部の演奏会にまで急いで出向いて、ソロで弾く高瀬ちゃんに勇気を与える声援を送るとか、青春だなあ、青春だなあ。
告白断って、そこに現れた時点でもうだいたいわかるじゃないですかー。直接高瀬ちゃんになんで断ったのー?と問われて、その答え方がまたねー、可愛いんですよねー。この中学生男子ほんとかわいいなーっ!! これがエモいってやつ!? エモーショナル!?
きみら、いつまでそんなかわいいの? 高校生になったらまた変わってくるの? 大人になったら大人の恋愛はじめるの?
それもまた、ちょっと見てみたい気がする。見続けてみたい気もするなあ。




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