【クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった】 たかた/長部 トム・日向あずり 角川スニーカー文庫

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顔見知りすらまともにいなかった俺・前原真樹に、初めてできた友だち・朝凪海。
男子から『クラスで2番目に可愛い』と噂され、天真爛漫なNo.1美少女・天海さんを面倒見良くフォローする朝凪さんは――
金曜日の放課後だけ、こっそり俺の家に遊びに来る。
映画にゲーム、漫画の趣味も合う彼女との楽しいひととき。
無邪気で甘えたがりな素顔は、普段のしっかり者の姿からは想像できないな。
「早く隣に座りなよー、一緒に漫画読むんだから」
「ここ俺のベッド……」
「今だけは私のベッドなの。ほら、おいで?」
距離近くないか、朝凪さん?

日陰男子と2番目ヒロイン、等身大の“友だち”ラブコメ!



主人公の真樹くんって、タイミングが悪かっただけで特にコミュニケーションが下手くそだったり内気で人見知りするたちだったりするわけじゃなく、普通に人付き合い出来る子だよね、これ。
いきなり、クラスでも中心人物の一人である綺麗な女の子に話しかけられて、趣味が同じだったとしても普通に打ち解けて話も盛り上がってましたし。
これは朝凪もホッとしただろうなあ。誰にも明かしていない自分の趣味を曝け出してまで話しかけたんだし、幾ら普段なら人と話すのを苦にしない娘とはいえだいぶ緊張はしていただろうし。わざわざ自己紹介カードを自作したりなんかしてたあたりを見ても。幾ら趣味が同じだったとしても、それを共有して楽しめるかどうかは相手次第なわけですし。
あとに明らかになる彼女の内心を思うとそこそこメンタル追い詰められつつあったみたいですし、ここで真樹とここまで意気投合できた、出来てしまったというのは朝凪自身にとっても予想外だったんじゃないでしょうか。
クラスで一番可愛い女の子、であるところの天海夕という娘は作中の言動を見ていても善性の裏表のない良い子なんですけれど、良くも悪くも自分の影響力というものに対して無頓着なんですよね。周囲の雰囲気や空気をうまく読めない娘でもあるように見える。
朝凪と出会った幼い頃、友達が出来ずに周囲から孤立気味だったのも、人並みから突出して浮いているくらいの容姿の淡麗さのみならず、うまく周りに溶け込めない不器用さが目立っていたのかもしれない。
そんな彼女を人気者へと押し上げたのは、間違いなく朝凪の調整能力によるものなのだろう。幼少時からリーダーシップを発揮してクラスの中心人物であった朝凪が、ともすればヘイトを稼ぎかねない夕のハズレた言動をうまく緩衝してフィルターのようにせき止め、夕の魅力的な人柄や存在感のみを周りに見せるような形になっていたんじゃないだろうか。かなり丁寧に調整役として立ち回っていたんじゃないだろうか。高校生になってからのこの一巻の作中でも度々、夕の言動を朝凪がフォローしている様子がうかがえる。
夕もそのへん、わかっていない訳では無いみたいですし、いつも朝凪がうまいことフォローしてくれている事もちゃんと理解しているみたいなんですが、分かっているし出来れば直そう、というよりも朝凪に変に迷惑かけないようにしたいとは思っているみたいなんだけど、このあたりは自覚していたからと言って簡単に修正できるものでもないみたいで。やっぱり、本来天海夕という娘は相当対人能力が不器用な娘なんじゃないだろうか。
朝凪のフォローがなかったらこれ、下手をすると存在感の強烈さが裏返ってしまって人気者とは真逆の立ち位置に追いやられていたかもしれない、と思えてくる。
ただ、ともすれば朝凪がやっていたようなこういう役割は認知されがたい。周囲からすると天海夕という大きな傘の下で美味しい思いをしているように見えるのかもしれない。あるいは、天海夕の一番近しいポディションを妬まれるというべきか。
夕が悪いんじゃないけれど、天海夕という特筆スべき個の強烈な存在感はどうしたって朝凪を二番手にしてしまう。誰もが夕を最優先にし、無自覚に無意識にあるいは自覚的に朝凪を蔑ろにしていく。
朝凪と夕の二人の関係そのものは、まさに親友以外のものではない友情によって結ばれているにも関わらず、段々と朝凪がしんどく思ってきてしまったのも無理からぬものがあったかもしれない。
夕に与え捧げるものではない、自分だけのもの。サメ映画などのB級映画やゲームなんかの趣味は、親友だけれど共有できない、共有したくない朝凪の城だったんじゃないだろうか。
そして、真樹との関係も。
夕はねえ、朝凪のこと搾取してるわけでも踏み台にしているわけでもなく、それどころか小さい頃に孤独だった自分を人の輪の中に連れて行ってくれた恩人として、何より親友として本当に大好きで、何よりも誰よりも一番大事に思ってるんですよね。おそらく、他の友達全員無くしても迷いもせずに朝凪を優先するくらいに。
朝凪も、夕その人には何も悪い思いを抱いていない。ほんとに良い子で、自分をどう思ってるのかもストレートに伝わってくる素直な娘だから。むしろ複雑な思いを抱いてしまっている自分に自己嫌悪を抱いているくらい。
でも、それなのにこうして拗れかけてしまうのですから、人間関係って難しいものです。
前原真樹というボッチの少年の存在は、彼と朝凪が友達になったということは、潜在的な亀裂を浮き彫りにする起爆スイッチのようなものだったのかもしれません。
でも、それ以前に色々と溜め込み続けていた朝凪の鬱屈を晴らすガス抜きとなってくれた存在でもあったんですよね。彼と友達にならなかったら、朝凪はもっと後悔する形で夕との関係にヒビを入れてしまっていたかもしれない。
でも、真樹との時間が、彼との関係が朝凪にとって特別になればなるほど、夕の影響下から遠ざけたり、彼との関係を夕に知られて真樹まで獲られたくないという想いが、独占欲が朝凪が抱えていた鬱屈を夕に知られてしまうきっかけになってしまった訳ですから、難しいなあ。
これ、夕がもっとメンタル脆い娘なら、朝凪が鬱屈を暴露してしまった際にもっと取り返しがつかないことになってたんじゃないでしょうか。その意味では、夕が根本でタフな娘で良かったですよ。
朝凪のぶっちゃけは、あれどうしたって夕も傷ついたでしょうし、自分が朝凪にどれだけ負担をしいて彼女につらい思いをさせていたか、自分自身が傷つけていたことに対して、ショックも大きかったでしょうし。被害者面しても加害者面しても、朝凪との関係はそれまで通りにはいかないものになっていたかもしれません。
あそこではっきりと、言うべき事を言えるからこそ、天海夕という娘はクラスで一番の人気者足るんだろうなあ。
そして、常に誰よりも朝凪を最優先して、自分にとっての一番として扱い続けた真樹の存在がどれだけ朝凪にとって救いになったか。
結局、他の連中がどうだろうと、自分を最優先してくれる。一番に思ってくれる相手、夕という親友と真樹という人が居てくれるという実感と確信が、朝凪海の拭い去れなかった鬱屈を払い去ったのだろう。
でもまあ、夕という親友に匹敵するくらい大事な異性って、そりゃもう好きな人としか言いようがないよねえ。お互いもうこれ好きだよね、と分かり合ってる状態でおらおら白状せいとばかりに突き合う二人のイチャつきっぷりたるや……あまぁぁぁい!
いやそれでも、罰ゲーム扱いとはいえ恋人つなぎで登校とか、よーやるなーー!! 最近の若い子は凄いですねえ!!