【オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど! 3】  コイル/雪子 電撃の新文芸

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同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活、その幸せな結末。

趣味で同人作家をしている咲月と、会社ではできるサラリーマン、実はドルオタ男子の滝本さん。二人の甘やかな新婚生活は推しのアイドルのテレビ初出演、冬コミ参戦、親友ワラビちゃんの結婚式など、楽しいイベントが目白押し。さらに、ふたりの間に新しい生命が宿り……。
超打算で偽装結婚した咲月と、打算の顔して実は彼女のことが好きだった滝本さんの新婚生活――からの妊娠、出産、子育て。趣味を楽しむオタク夫婦の話、最終第3巻。


表紙絵の家族三人お揃いのこれ、記念写真かなにかなんですかね。七五三かしら。とも思ったのですが幼稚園入園の記念写真なんですね。
つまるところ、それくらい大きくなっている子供が出ていることから、3巻は前巻の終わりから数年後からはじまって、子供がいるオタク夫婦の日常、みたいな感じで描いていくのかとも思ったのですけれど……いや、がっつりと子供を作ろうと夫婦で思い立つところから、実際に子供が出来たらの準備から出産に至るまでの怒涛のような日々。そしてついに子供が生まれてからの、それまでが凪の海だったと思えるほどの激動の子育て、とがっつり全部描いちゃいましたよ、すげえなあ。
なによりすげえのは、パーフェクト夫の隆太さんですよ。いやーマジですげえな。これが女性の理想とする旦那像ってやつなのか。
男、ここまで出産するお嫁さんに、そして子育てに対して寄り添い一緒に背負えるやつがどれほどいるんだろう。
そもそも会社での立場だって、現場が楽しくてずっとそこでやりたいから出世したくないと昇進試験拒んでいたのに、子供を作るとなって心構えも変わって、出世することで家庭を支える耐えの安定を得たい、と思うところまでは旧来の男性像なんだろうけど、そこから出世して誰はばかることなく育休取れる環境を作ってやる、上の立場になって下の連中が仕事しやすい、家庭を大事にしやすい、趣味にかまけることのできる、そういった環境そのものを自分が作ってやる、と奮起するの、めちゃめちゃ格好いいんですよ。
そんでもって、2ヶ月もちゃんと育休とって、奥さんを助けるじゃなくて本当に一緒に共同作業で育児していましたからねえ。育休が開けてからも、咲月さんに蓋が一方的にかからないように、色々と工夫しますし、しんどいけれど疲れ果てているけれどそれ以上に子供育てるの楽しい! って二人でやってたのは、さすがこの二人と感心するやら微笑ましいやら。
この二人らしい、というと出産についても咲月さんってば、なんであんな楽しそうに産めるんだ、ってくらい妊娠から出産を楽しんでやってましたもんね。
陣痛の産みの苦しみをこんなに楽しそうに苦しんでる人、創作でもはじめて見たよw
ある意味クリエイターの鑑なのかもしれないけれど、クリエイターとか関係なくほんとに何事でも心から楽しめちゃう人なんだろうなあ。そんな人を毎度死んだ目にさせてしまう咲月さんの母親は、なんとも凄いというか身内に居たらしんどいよなあ、こういう人。そんな人と卒なくメル友になってて友好を築いている隆太さんが営業の神様かよ、てなもんなんだよなあ。
そんな隆太さんですが、ドルオタとしての活動も色々と極まっていて、推しである地下アイドルグループ・デザロズがついにメジャーへの道を歩みはじめたことで興奮しっぱなし。
いやーー、こういうのって本当に好きで好きでたまらないくらい好き狂ってないと、ここまで喜べないし夢中になれないよなあ。ここまでのめりこめるほど何かを好きになるって、素晴らしいですよね。好きなものの為に喜怒哀楽振り切って泣いて笑ってできるってなかなかないですよ。
そこまで、物事を好きになるって出来ないですよ。間違いなく、人生豊潤になりますよねえ。
その上、奥さんになってくれた人はそういう他人の好きに理解がある、という以上に一緒になって楽しんでくれる人で。それどころか、デザロズが飛躍するきっかけとなる衣装デザインまで手掛けてくれて、色んな意味で仲間になってくれて。
凄いなあ、ここまで幸せな人生ってあるんだろうか、と思ってしまうくらい幸せの絶頂だろうなあ。これが幸せのカタチだろうって外からレッテル貼られるようなそれじゃなくて、本人がもうこんな幸せでいいの!?ってなるくらいの幸せですからね、中身みっしり詰まってますよ、幸せが。
幸せは人それぞれだから、隆太さんのそれをそのまま自分も得たい、羨ましいとは思わないんですけどね。ただ、これだけ幸せになれるものを見つけて、捕まえて、手に入れられた、ということそのものはやっぱり羨ましく思いますよ。それ以上に、これだけ夢中になれる好き、を見つけることが出来たというだけでも本当に羨ましい。
結婚して、子供が出来て、仕事も出世して、大忙しの人生。ドルオタ生活も果たして続けていけるのか、と思うようになったところで、デザートローズの方でも劇的なドラマがあって、そんなライブに久々に直接出向いて、生で感激を味わって、家族はその喜びを一緒に共有してくれる。いいですねえ、素敵ですよねえ。一生涯オタク続けていける確信ですよ、こういうのって。

今回は、咲月さんの無二の親友であり同人仲間であるわらびちゃんの方にもスポットがあたり、こっちはこっちで不思議な縁で不思議なカップルが成立してしまって、こっちはこっちで面白かったなあ。まだ咲月さんと隆太さんみたいな相性ピッタリでお互い好きすぎるくらいのラブラブ夫婦、ってわけにはいかないですけれど、こちらはこちらで好きの形、好きの色がなんとも好ましいんですよね。あのお医者さん、完全に浮世離れしていてちょっと現世に降りてこれていない気がするんですけれど、だからこそびっくりするくらいピュアな愛情をダイレクトに感じられて、これはわらびちゃん料理し放題ですなあw

二人の子供の心海ちゃんは、最後の場面でもまだ三歳。両親のオタク趣味を理解できる年齢ではまだないですからね。この子が育って大きくなっていったとき、果たして両親のそれをどう受け止めていくのか。オタク夫婦の二人の生活は、順当に三人のオタク家族の生活へと発展していくのか。この作品の物語はどうやらここでひとまずの幕となるようですが、この底抜けに楽しく幸せな一家のこれからの未来を思い描いて、もうしばらく幸せな心地に浸りたいと思います。