【元農大女子には悪役令嬢はムリです!】 早田 結／桶乃かもく サーガフォレスト
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第1回一二三書房WEB小説大賞《銀賞》受賞作! !
公爵令嬢ユリアには前世、農大で研究をしていた記憶があった。自分が継ぐ予定の貧しい領地で、農作物の品種改良をして暮らしていたが、国王から悪い噂の絶えない第二王子リグラスの婚約者となるよう申し入れをされてしまう。ユリアの実家コルネール公爵家は名家で、王太子争いをしているふたりの王子にとって、後ろ盾として魅力的だった。しかし、小太りだったユリアは見合いの席でリグラスから豚と罵られ、幸いにも婚約話は立ち消えとなった。安堵したのも束の間、今度は第一王子ローレンから婚約を申し込まれ、利害の一致もあったため、ユリアはローレンの婚約者となるのだが……。
ユリアは知らなかった。実はこの世界が前世のとある乙女ゲームの舞台で、自身が第二王子リグラスの婚約者として、悪役令嬢になるはずだったことを。何も知らない転生リケジョの行動によって、致命的にシナリオが崩壊した状態から始まる恋愛ファンタジー!
悪役令嬢になるのは無理、という以前に主人公のユリアはこの世界が乙女ゲームのそれだという事を全く知らないまま最終盤まで言ってしまうので、そもそも悪役令嬢云々は意識の俎上に載ってもいないんですよねえ。
ならば、ゲームヒロインに転生した男爵令嬢レーナの独り相撲かというと……そもそも、この娘って本編の方にろくに出てもこないんですよね。攻略対象のメインである第二王子の恋人には収まってはいますけれど、話に殆ど絡んでこない。ようやく終盤に策謀を張り巡らせようとしますけれど、現状を全く把握しないまま取り敢えずゲームと同じ状態にしないと原作通り進まないと考えて、リグラス王子にユリアと再婚約するようにそそのかすくらいで、ぶっちゃけ殆ど意味をなさない行動なんですよねえ。何のためのキャラなんだろう。
そもそも原作のゲームからして、登場人物の行動原理やキャラクター性がろくでもないものばかりで、これゲームプレイしていて面白い内容だったんだろうか。クソゲーじゃないの？
折角の主人公ユリアの農業知識ですけれど、これも本編のストーリーに大きく活かせていたかというとちょっと首を傾げてしまうもので、いざ第一王子のローレンと婚約に至ると農作物の開発や農業改革などといった要素はそっちのけで、そこからはゆるいラブストーリーが続くばかりでローレンとイチャイチャするか、横槍を入れてくる第二王妃の嫌がらせに対抗する展開ばかりで、肝心の農業話はほぼ放置だったんですよね、勿体ない。メインストーリーが終了してから、改めて農業のお話とか挟んでますけれど、それは本編とほとんど連動しない独立した番外編という感じになっていて、遊兵と化してしまっている感じだったんですよねえ。
ユリアの研究者気質や農業バカといった性格も、普通の令嬢らしくない個性のエッセンスとしてしか扱われておらずに、果たしてそれを武器にして魅力に返還できていたかというと少々疑問に思うところでありました。
それに、あまりこの娘主人公としては主体性がないんですよね。本編の大まかな枠組みって、国政を壟断する第二王妃とそれに言いなりの国王、バカの第二王子といった一派の横暴に対抗するという構図なんですけれど、ユリアって彼女から主導権をもって動くということがあまりなかったわけです。彼女が物語を牽引するわけじゃなく、周囲の賢明な大人たちの言う通りに振る舞っているばかりで、彼女が何か考えついて、積極的に状況を変えるためにプレイヤーとして展開を左右していくという感じじゃないんですよね。それはそれで賢明ではあるし、実際周囲の大人たちは非常に優秀で段取りよく第二王妃たちを追い込んでいってくれて、ユリアは舞台上にあがった演者の主役の一人として脚本通りに振る舞うことで与えられた役割をきっちりと果たしているのですけれど。主人公として考えると、いささか物足りないものがあったのは確かです。
存在感という意味では、悪い意味ですけれどリグルス王子を筆頭とした敵対陣営の方が強烈ではありましたね。あそこまで愚劣で醜悪な人格、蒙昧にして品性下劣というのはなかなか見ないかと。
敵役として、印象的ではありますけれど、決して頭がよく狡猾というわけでもないので、良い悪役というものでもありませんでしたしね。まあ、見ていて気持ちの良いものではありませんでした。
ちょっとおもしろかったのは、既に先代国王が後継者の愚かさを見抜いていて、徹底して国王としての権限を失わしめる法整備を整えてから亡くなっていたことでしょうか。
お陰で国王は絶対権力の持ち主というわけではなく、むしろかなり制限や制約を課せられていて、好き勝手出来ずに封じ込められていましたからね。にも関わらず、やらかしまくるお陰で臣下の苦労が酷いことになっていたのですけれど、それでも先王の先見性がうかがえるというものです。
それがなかったら早晩ガチで滅びるか内乱になってただろうなあ、これ。
しかし、最終的に悪いのは全部第二王妃、という具合に押し付けられて、国王陛下やリグラス王子は愚か者だったけれど本来はそこまで性質の悪い人たちじゃなかったのよ、環境が悪かったのよ、とばかりに後々で彼らが権力を失うことで憑き物が落ちたようになりの幸せをちゃっかりと掴んでしまっているのは、これなんだかなあ、と。
まあ一番悪い第二王妃がきっちりと報いを受けていますし、国王やリグラスがそれぞれ幸せを掴むことに若干呆れはしましたけれど、別に嫌な思いにはならなかったので、これはこれで良かったのかもしれませんけれど。
ところで、この話もう完膚なきまでに一巻でキレイに完結したと思うのですけど、まだ続くのか？
ならば、ゲームヒロインに転生した男爵令嬢レーナの独り相撲かというと……そもそも、この娘って本編の方にろくに出てもこないんですよね。攻略対象のメインである第二王子の恋人には収まってはいますけれど、話に殆ど絡んでこない。ようやく終盤に策謀を張り巡らせようとしますけれど、現状を全く把握しないまま取り敢えずゲームと同じ状態にしないと原作通り進まないと考えて、リグラス王子にユリアと再婚約するようにそそのかすくらいで、ぶっちゃけ殆ど意味をなさない行動なんですよねえ。何のためのキャラなんだろう。
そもそも原作のゲームからして、登場人物の行動原理やキャラクター性がろくでもないものばかりで、これゲームプレイしていて面白い内容だったんだろうか。クソゲーじゃないの？
折角の主人公ユリアの農業知識ですけれど、これも本編のストーリーに大きく活かせていたかというとちょっと首を傾げてしまうもので、いざ第一王子のローレンと婚約に至ると農作物の開発や農業改革などといった要素はそっちのけで、そこからはゆるいラブストーリーが続くばかりでローレンとイチャイチャするか、横槍を入れてくる第二王妃の嫌がらせに対抗する展開ばかりで、肝心の農業話はほぼ放置だったんですよね、勿体ない。メインストーリーが終了してから、改めて農業のお話とか挟んでますけれど、それは本編とほとんど連動しない独立した番外編という感じになっていて、遊兵と化してしまっている感じだったんですよねえ。
ユリアの研究者気質や農業バカといった性格も、普通の令嬢らしくない個性のエッセンスとしてしか扱われておらずに、果たしてそれを武器にして魅力に返還できていたかというと少々疑問に思うところでありました。
それに、あまりこの娘主人公としては主体性がないんですよね。本編の大まかな枠組みって、国政を壟断する第二王妃とそれに言いなりの国王、バカの第二王子といった一派の横暴に対抗するという構図なんですけれど、ユリアって彼女から主導権をもって動くということがあまりなかったわけです。彼女が物語を牽引するわけじゃなく、周囲の賢明な大人たちの言う通りに振る舞っているばかりで、彼女が何か考えついて、積極的に状況を変えるためにプレイヤーとして展開を左右していくという感じじゃないんですよね。それはそれで賢明ではあるし、実際周囲の大人たちは非常に優秀で段取りよく第二王妃たちを追い込んでいってくれて、ユリアは舞台上にあがった演者の主役の一人として脚本通りに振る舞うことで与えられた役割をきっちりと果たしているのですけれど。主人公として考えると、いささか物足りないものがあったのは確かです。
存在感という意味では、悪い意味ですけれどリグルス王子を筆頭とした敵対陣営の方が強烈ではありましたね。あそこまで愚劣で醜悪な人格、蒙昧にして品性下劣というのはなかなか見ないかと。
敵役として、印象的ではありますけれど、決して頭がよく狡猾というわけでもないので、良い悪役というものでもありませんでしたしね。まあ、見ていて気持ちの良いものではありませんでした。
ちょっとおもしろかったのは、既に先代国王が後継者の愚かさを見抜いていて、徹底して国王としての権限を失わしめる法整備を整えてから亡くなっていたことでしょうか。
お陰で国王は絶対権力の持ち主というわけではなく、むしろかなり制限や制約を課せられていて、好き勝手出来ずに封じ込められていましたからね。にも関わらず、やらかしまくるお陰で臣下の苦労が酷いことになっていたのですけれど、それでも先王の先見性がうかがえるというものです。
それがなかったら早晩ガチで滅びるか内乱になってただろうなあ、これ。
しかし、最終的に悪いのは全部第二王妃、という具合に押し付けられて、国王陛下やリグラス王子は愚か者だったけれど本来はそこまで性質の悪い人たちじゃなかったのよ、環境が悪かったのよ、とばかりに後々で彼らが権力を失うことで憑き物が落ちたようになりの幸せをちゃっかりと掴んでしまっているのは、これなんだかなあ、と。
まあ一番悪い第二王妃がきっちりと報いを受けていますし、国王やリグラスがそれぞれ幸せを掴むことに若干呆れはしましたけれど、別に嫌な思いにはならなかったので、これはこれで良かったのかもしれませんけれど。
ところで、この話もう完膚なきまでに一巻でキレイに完結したと思うのですけど、まだ続くのか？
