【黄金の経験値 特定災害生物「魔王」降臨タイムアタック】  原純/fixro2n カドカワBOOKS

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最強の眷属たち――その経験値を一人に集めたら、史上最速で魔王が爆誕!?

精神力のステータスを育てた主人公レアが手に入れたのは、隠しスキル『使役』。それは、眷属化したキャラの獲得経験値を自分に集約するという、とんでもないスキルだった。

レイドボス級のモンスターさえ多彩な精神魔法で屈服させ、次々眷属を増やしたレアは、増え続ける経験値で自身と配下を強化!

自分だけの最強軍団を構築し、ついにはこの世界における「特定災害生物」に判定されてしまい……?

せっかく魔王になったことだし滅ぼしてみますか、人類を!

ゲームで遊んでいて、自分が海賊になったら、そりゃヨーホー他の船を襲ったりしますよね。侵略国家の皇帝なんかになったら、頑張って領地を増やすためにあっちこっちに進軍していくでしょう。マフィアのボスになったら、警察や政治家に賄賂贈ったり敵対勢力と構想したり裏切り者には死を!とかやったりするでしょう。
まあロールプレイには決まりなんてありませんから、あえて役割のイメージとは裏腹のロールをしてみたり、というのも大いにアリなんじゃないでしょうか。
とはいえ、通常のゲームだとなかなかそこまでの自由度ってないですよね。TRPGなんかだと行動の自由こそ大きいものの、GMの力量なんかも関わってきますし。
まあ何にせよ、この作品の主人公のレアは見ている限り、特に悪い人ではありません。いや、前から美人局のPKして遊んでいるあたり、ゲーム内の倫理についてはあまり拘らない性質の人みたいなので間違ってもイイ人ではないのですけれど。とはいえ、必要以上に相手を傷つけて、違うプレイヤーを貶めてそれに悦びを感じるような、悪意で遊ぶような趣味の悪い人間でもないようです。
彼女はただ、ゲームを出来ることの範疇で思いっきりやれるだけやって遊んでいるだけ。楽しんでいるだけ。それが何の因果か彼女の置かれた状況が他の一般プレイヤーが普通にプレイするのとはまた異なる遊び方を見つけてしまった。ゲームのシステムがそれを提示してくれた。だから、それに従って出来ることを確かめながら、それを一つ一つ積み重ねていって気がついたら、他のプレイヤーたちとは全く違う遊び方を、このゲーム内で行っていたというわけだ。
別に意図して逸脱したわけでも、ルールやシステムの隙間を突いて違反スレスレの行為を行った、というわけでもない。彼女、別になんにもズルとかはしてませんもんね。
しかし気がつけば、レアは幾人幾匹幾頭もの強力な配下を従え、広大なフィールドを支配下に入れ、無数の軍団を思うがままに動かすことの出来る強大な勢力の頭領となっていたのである。
他のプレイヤーたちが一生懸命剣を振るい魔法を駆使してモンスターを倒して個人のレベルを上げて強くなろうとし、パーティーを組んで連携を覚え、なんてのをやっている間に、レアの方はいつの間にか一人で戦略シミュレーションゲームで遊んでいるような状態になっていたわけだ。
これもゲームの自由度の一環なのだろう。ゲーム運営の方はレアの方に制限を加えずに、むしろ大規模イベントの主催側として協力を要請することにもなっているし。
気がつけば魔王ルートへの道が拓かれ、彼女は迷わず……いや、結構吟味はしたけれど、結局プレイヤーの一人として魔王という立場からこのゲームを遊ぶことを選ぶのだ。
いざ、魔王となったからには目指すは世界征服! ガンガン人類攻め滅ぼそう! そこに悪意はなく善意もない。ゲームで遊ぶのは楽しいから、ただそれだけ。実にニュートラル。彼女は余計なことなど考えず抱え込まず、ただただ目の前のゲームを遊び倒す、そういうお話だ。
しかして、この世界に暮らすNPCたちにとっては悪夢である。このNPCたち、殆どもう人間にしか見えないんですよね。システムコールを聞けない、という以外はプレイヤーと何も変わらない、ともゲーム運営も明言しているのだが、果たして彼らは実際の所どういう存在なのだろう? 
とはいえ、レアの方はNPCについては特に深く考えてもいないようだ。意識することもないだろう。配下となったNPCたちについては親愛をもって接しているしちゃんと愛着もあるのだろうけれど、彼らをただのNPCとして捉えているのか、それとも生きた知性ある存在として認識しているのかはよくわからない。まあ本当に、特に何も考えていないのだろう。そういう所もニュートラルに思える。
作品としても、そのあたりあんまり触れるつもりないんじゃないだろうか。そこに触れてくると作品の方向性が変わってくるようにも思えるし。
終盤の展開は、魔王として立ったレアの初の世界征服事業の一環として大いに世界を揺り動かす怒涛の展開で、なかなかに燃えるものがありました。いや、マジで戦略シミュレーション、あるいはファンタジー戦記モノになっていくのかしら、これ?